金融にこそテクノロジイノベーションを

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2012-02-14 08:00

 2月8日、ISID主催にて金融イノベーションに特化した「金融イノベーションビジネスカンファレンス(FIBC2012)」を開催した。当初100名程度の規模を予定していたが、Ustreamからの参加者も含めれば200名を大きく上回る規模となった。

 これまでも「イノベーション」がタイトルに付く金融カンファレンスは多くあったが、アーリーステージにあるイノベーションに特化した金融カンファレンスは初めてだろう。それだけこのイベントに対する期待感も大きかったのかもしれない。

 今回は、ベンチャー企業はもちろん、金融機関、ベンチャーキャピタル、大学関係者など多様な参加者に恵まれ、磯崎哲也氏の基調講演から、デモセッション、パネルディスカッション、そしてネットワーキングと充実した議論を行うことが出来た。参加した方からも興奮に近い反響を頂いている。

イノベーションのエコシステムの必要性

 さて、何でこのカンファレンスを開催したかであるが、その裏にISIDのサービスなりプロダクトを宣伝しようという意図は全くない。その狙いは、金融にイノベーションを起こそうとするベンチャー、大手企業、金融機関、ベンチャーキャピタル等が集まってアイデアが交換されることを通じ、資金が投下され、サービスがお互いに取り込まれ、金融サービスが面白くなっていく、そういうサイクル、イノベーションのエコシステムを作り出すことにある。

 これが結果的に金融サービスの活性化に繋がり、金融ビジネスが拡大して行けば、金融に関わるプレーヤー全体がメリットを享受できる。金融というのは、その設備投資の半分近くがテクノロジ関連で占められる業界である。それだけにテクノロジを起点としたイノベーションが金融サービスを活性化させる可能性は大いにあるのである。

国策の金融から生活者の金融へ

 金融業界というのは、もともとは日本の経済を発展させるために国策として運営されてきた。自由化が進んだ現在においても、その社会に与える影響度から、厳しい規制の下に置かれている。

 しかしながら、市場を信用できない生活者は預金残高を積み上げ、それは事業投資ではなく国債購入に回される。そしてその国債はいずれ日本の経常収支が赤字に転落すると大いに価値を下げるのではないかと懸念されている。つまり、国策としての金融の枠組みに希望を見出すのが難しい状況だ。

 一方で、今回デモに登壇した企業の中でも、AQUSHミュージックセキュリティーズは個人から個人へと新しいお金の流れを作り出すことに成功している。また、SBIホールディングスのmyscoreや閑歳孝子氏のzaimは、生活者にお金のコントロールの主導権を取り戻させるサービスだ。

 今回デモセッションの参加者投票で大賞を受賞したホットリンクは、ソーシャルメディアからの情報を活用した投資手法を提唱しているが、まさに生活者のナレッジの集合体がいかに的確な判断を行えるかを実証するものであった。また、ライフネット生命は、保険という最も複雑な金融商品分野において、いかにネットを活用したマーケティングが効力を発揮するかを実証したものと言えるだろう。

 ソニーのFLO:Q、そして今回投票で第2位を獲得したロイヤルゲートの決済サービスは、生活者にとっての金融サービスの利便性を大いに高めるものであった。

 こうして見ると、金融サービスのイノベーションは、生活者の視点でお金の流れを作り出したり、金融サービスの利便性を高めていこうとしたりするものが多い。これは、銀行を経由したメインストリームの金融機能が限界にぶつかる中で、それを補完するようにインターネットやソーシャルネットワークを通じた微細な流れの集合体が生まれつつあるということだろう。

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