ユーザーも管理者も移行に満足
移行後の運用はスムーズに進んでいる。「導入以前からすでにGmailを個人で利用している人が300人くらいいたため、周りに誰かしらGmailを知っている人がいるという状態だったようだ」と大関氏は分析する。「以前は会社のメールを転送している人が多かった。今では、外出先や自宅から直接会社のメールを利用することができる。メールのデータはクラウド上にあるので、外出先で仕分けしたメールを社内に戻って再度仕分けする必要もない」(大関氏)
日本の組織に最適化された組織単位の表示をするためには、日本技芸のGoogle Apps拡張製品「rakumo」を採用している。カレンダー機能のみの採用だが、スケジュールの表示や登録が早い、見た目がきれい、ユーザー自身で使いやすく変更できるといったことで社内での評判は良い。
システム管理者としても負担が軽くなったと段野氏は語る。「今まで利用していたポータルシステムは、ソフトの問題かハードの問題か原因は特定できなかったが、時々サーバダウンしまうことがあった。その予防策として1カ月に一度、休日に再起動を行っていた」と段野氏は振り返る。今ではその作業が必要なくなったため、「運用の手間が軽減され、ユーザーに迷惑をかけることもなくなった」(段野氏)という。
大関氏は、Google Appsへの移行により、「メールとポータルのイニシャルコストと運用コストを合わせると、5年間でこれまでの半額になる見込み」と笑顔を見せる。しかもこれは表面的なコストのみで、「実際にはさらなるコスト削減になっている」と大関氏。例えば、PC更新時にメールデータの移行作業がなくなったことや、ローカルハードディスクの故障によるメールデータの消失がなくなったことなど、金額には表しにくいが確実に減っているコストがあるからだ。
テレビ東京HD 情報システム局 システム部の段野祐一郎氏
クラウド化は加速する
今回スムーズにポータルシステムのクラウド化を実現したテレビ東京HD。移行を終え、順調に運用が進む中、大関氏は「パッケージを利用するようなシステムは、すべてクラウド化していくことになると考えている。パッケージとサーバを自社で購入して運用するよりも、それをサービスとして提供してもらった方がメリットが大きい」と話す。放送機器の運行に繋がるシステムなど、基幹系システムは社内で管理したい気持ちはあると大関氏は認めつつも「放送に関連するシステムでもクラウドに任せて問題ないものがある」と断言する。
「放送局ではもともと社外で仕事をする社員が多く、情報共有のためにクラウドを利用するというスタイルが非常に合っていた。今後は、そういう業種に限らず、多くの企業がクラウドを利用する流れになると思う。震災によって“災害に強い”というクラウドの長所に注目が集まり、利用実績が増えている。実績が増えると、安心感も出てくる。そうすると、ハードの更新がない、どこからでも使える、インフラの信頼性が高いなど、多くのメリットがあるクラウド化の流れが加速すると考えられる」(大関氏)
大関氏が今後に期待しているサービスは、膨大な過去のオンエア素材のクラウド管理だ。現在テープで保管しているデータをブルーレイに移行しているものの「やはり永久保存にはハードディスクが向いている。しかしペタバイト級のハードディスクを自社で管理するのは無理」と大関氏。
「クラウドを使って膨大なデータを保管できるサービスを低コストで提供すれば、放送局はどこも飛びつくだろう」と大関氏は話し、今後クラウドサービスが発展する方向性についてユーザーとしての要望を語った。
Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページ、Twitter、RSS、Newsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。