Googleが迫る情報共有の発想転換

怒賀新也 (編集部) 2012年04月19日 12時00分

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 「震災時、100拠点に上る情報が1枚のスプレッドシートにリアルタイムに集まる様子はある意味で壮観だった」

 Googleのエンタープライズ部門でシニアプロダクトマネージャーを務める藤井彰人氏はユーザー企業の話を振り返る。

 東日本大震災の際、Google Appsを利用していた保育施設運営のポピンズコーポレーションは、Googleドキュメントを利用し、全国100カ所にまたがる保育施設の状況が1枚のスプレッドシートに集まるようにした。

Googleの藤井氏は「組織のピラミッド前提のこれまでの働き方が変わりつつある」と話す
Googleの藤井氏は「組織のピラミッド前提のこれまでの働き方が変わりつつある」と話す

 縦軸に拠点名、横軸に被害状況を書き込む形式で、利用者やスタッフの安否情報、必要となっている物資、最終のお迎え時間といった項目を設定。1枚のファイルを複数のユーザーが同時に更新できるGoogleドキュメントの特徴を、最大限に利用する格好でそのスプレッドシートにどんどん情報が埋まっていったという。お迎えに来られない保護者をすぐに把握でき、人的被害がないこともすばやく確認できた。

 「100拠点にそれぞれ電話するような確認方法だったら大変な手間が掛かっていただろう」(藤井氏)。その後、ミネラルウォーターの備蓄情報を調べる際も、スプレッドシートに項目を一列追加するだけで済んだという。

ポピンズが使用した実際のスプレッドシート ポピンズが使用した実際のスプレッドシート
※クリックすると拡大画像が見られます

クラウド導入の不安は根強くセキュリティ

 Googleがアプリケーションを利用するユーザーに投げかけているもの、それは、震災時のポピンズの例にも含まれている通り、情報共有の発想転換である。

 藤井氏は「最近はお客さんとメールよりもチャットで会話する機会が増えてきた」と話す。さらに自分が校正を担当する広告原稿などを受け取る際に、必ずGoogle ドキュメントにアップしてもらうという。原稿の編集担当者とチャットで話しながら文章に赤を入れていくため、短時間で校正作業が終わるからだ。「赤を入れてメールで相手に戻して、またメールで再提出を待つといった方法では何時間もかかってしまう」と考えている。

 スピードが求められる業務環境の中で、少なくともGoogleの社員は、情報共有のやり方を以前のものから転換している。

 だが、肝心のユーザー側の意識はそれほど大胆に変化しているわけではない。「Googleが立ち向かうべきなのはユーザー企業が持つセキュリティへの漠然とした不安」(藤井氏)と指摘するように、クラウドへの移行に二の足を踏む理由として、セキュリティ・情報漏洩への不安を挙げる声は6割にも上る(2011年1月、ITR調査)。

 一般に、クラウドをめぐる主なセキュリティ問題として、データを自社以外の企業に預けることによる情報漏えいへの不安、外国にデータを置くことによる物理的・法的なリスク、障害発生時に自社対応がしにくいといったものがある。

 藤井氏は「漠然とした不安の多くは、ブレークダウンして具体的な方法を見つければ解決できる」と強調する。

 例えば、Google Appsでのサーバへのアクセス管理では「設定でセキュリティ強度を自由に変更できる」(同氏)という。特定のIPアドレスからのみサーバにアクセスできるようにする、 ワンタイムパスワード、Active Directoryを組み合わせることなどにより、従来型のソフトウェアよりも運用環境のセキュリティ強度を極端に上げることもできる。ユーザーの意向により、柔にも剛にも決められる柔軟性の高さはGoogle Appsが持つ長所だ。

 藤井氏はセキュリティを不安視するユーザーに対して「セキュリティ専門チームの設置、アプリ開発時の二段階認証、データを複数サーバにレプリケーションしていることなどを説明した上で、データ保持の安全性を証明する規格“ISAE 3402 Type II”を取得済みであることを伝え、理解を促す」とする。

 また、米国のサーバにデータを置くことにより、パトリオット法(いわゆる米愛国者法)が適用され、米国の要請があれば保管データの提供を拒めなくなるのではないかなど、法的なリスクを懸念する企業もある。

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