ここに挙げられた“セルフサービス”というのは、顧客会員向けのヘルプサイトといった形で、顧客が知りたい時に知りたい情報を素早く見つけられるということが言える。オラクルが提供している「Oracle RightNow CX Cloud Service」にはそうした機能があり、GMOインターネットや一休.com、楽天、ソネットなどが導入している。
調査では、CXを提供するための障壁が何になるのかを調べている。障壁となるのは投資(27%)、人や組織、プロセス(27%)、技術となっている。
技術を具体的に見ると、柔軟性のない技術とアプリケーションインフラによる制約(29%)、業績指標や顧客の意見を常に追跡するのが困難(24%)、すべての顧客接点を横断して統合された正確な360度の顧客ビューがない(23%)、システムのサイロ化で顧客情報を横断して情報を簡単に共有して継続的なプロセスをサポートできない(18%)となっている。
道下氏はCX提供の障壁として、人や組織、プロセスが挙がっていることについて「よく聞く課題であり、本質的な問題」と説明している。組織間に壁があることで、全社的な取り組みが展開できないからだ。CXを提供するために全社規模で取り組もうとしても、いつの間にか部門の利益を優先することになり、顧客のためという意識そのものがなくなってしまうことにもつながる。すなわち「組織がサイロ化しているためにシステムもサイロ化にならざるを得ない」(道下氏)という状況だ。
こうした課題も抱えつつも、企業は顧客分析の最適化とクロスチャネル体験の改善を目的に、CX関連技術への投資を予定していることが判明。今後2年間で、平均で18%増やす見込みだ。具体的には以下のような投資が予定されている。
- BIと顧客分析=31%
- チャネル間で統合された顧客ビュー=29%
- ナレッジ共有=25%
- オンラインセルフサービス=24%
- モバイルアプリ=25%
- オンラインでのクリックトゥチャット=21%
- 電子商取引=25%
- ウェブエクスペリエンス管理25%
だが、CXを改善するためにいろいろ施策を打つ以上、どれだけの成果が出たかが問われる。IT投資という形になると、なおさらだ。そのため、経営幹部はCXが成功しているかどうかの「評価指標に悩んでいる」(道下氏)という。
多くの企業が顧客満足度調査としてCXを評価しているという。一方で「Customer Experience Index」「Customer Effort Score」「Net Promoter Score」といった新しい指標に加えて、例えばブランド認知度や市場シェア、顧客解約率など既存の指標からも示唆を獲得できると説明している。
このNet Promoter Scoreとは、顧客が製品やサービスを友人に勧めるかどうかを数値で判断するというもの。Customer Experience Indexは、「バリューがあるか」「手に入れやすいか」「楽しいか」を数値化する指標という。
調査から得られた教訓として道下氏は「CXを成功させるには、根本的な変化が求められている。本質的な取り組みが必要」と提言している。先に挙げたような技術的に解決できるものがある一方で、人や組織、プロセスを変えなければならないといったことがあるからだ。調査を見ると、自社のCXへの取り組みが“先進的”であるとする企業で最も成功しているプロジェクトとして以下の3つを挙げている。
- 従業員向けの研修プログラムとインセンティブ制度を構築(35%)
- 企業のコアバリューを再定義し、最も適切なCXを全顧客に提供するという必要性を追加(32%)
- 顧客サービスの改善につながる特定の技術の導入(29%)
米Oracleでは、CX改善を求めるユーザー企業に向けて「CX Strategy & Design Workshop」を提供している。これは、ペルソナやストーリーラインを定義し、顧客がどのように製品やサービスを購入しているのかなどを議論するものだ。道下氏は、このワークショップを日本企業向けに提供することを明らかにしており、現在ユーザー企業といつ始めるかを検討しているところだという。