データベースへの意気込み
AWSは今回、その基幹系データベースとして、新サービス「Amazon Aurora」の投入を発表した。初日の基調講演で最初に発表した新サービスだ。
AWSのシニアバイスプレジデントのAndy Jassy氏
初日の基調講演を務めたAWSのシニアバイスプレジデントのAndy Jassy氏は「MySQLやPostgreSQLなどのオープンソースベースのリレーショナルデータベースで、Oracleをはじめとした商用DBと同じパフォーマンスを実現するのが難しかった」と指摘した。そこが1つの壁になっていたことは事実だ。
MySQL 5.6と互換性を持ち、パフォーマンスはMySQLの5倍、コストは商用データベースの10分の1、稼働率は99.99%以上と可用性や堅牢性を高めた。玉川氏は「製品としての狙いは、ミッションクリティカルなエンタープライズ分野での利用」と明言している。
Jassy氏は従来型のデータベースを、コストが高く、ベンダーロックインを促し、プロプラエタリであると表現。現状はAmazon Relational Database Serviceで、Oracle Database、SQL ServerがAWS上で稼働するようにしている。だが、そうではなく、大手ITベンダーが企業の屋台骨を握っているデータベース分野に、「数年かけて開発した」というAuroraを満を持して乗り込む考えを明確に示した。
Auroraの実際の性能は今後見えてくる。現段階で言えることは、企業の宝であるデータベース分野にAWSが本気で参入することは、競合他社にとっては脅威になるという点だ。AWS周りでビジネスを展開するパートナー企業にとっては、新たな機会が広がるとも言える。
AWSが存在する世界の中で、あなたはリレーショナルデータベースをどのようにデザインし直すのかと問いかけた
ただ、イベント全体を見渡した時に、エンタープライズ分野での導入を前提とすると、まだテクノロジに焦点が寄り過ぎている印象はあった。
現InforのCEOで、米Oracleの元プレジデント兼理事会役員を務めていたCharles Phillips氏は、今後のERPの方向性として「SaaS型ERPを業種特化型で」と表現した。製造業、小売り、電力など業種や業務への理解が企業のIT構築に不可欠という見方だ。
ビジネス革新のためのITというニュアンスが強くなればなるほど、関係者は経営層に近い人になっていく。その意味では、技術的な革新と同時に、より業種、業務的な視点が今後のAWSには求められてくるかもしれない。