知識労働者の自動化による雇用の置き換え
人工知能による知的労働者の自動化が進むことになれば、これまで知的労働に関わってきた労働は、コンピュータに置き換えが進むとみられている。1700年代後半から起きた産業革命による農民の失業、1960年以降のオートメーション化による工場労働者の失業に続く、知的労働者が失業する「第三の失業の波」が押し寄せる可能性がある。
Gartnerが2013年11月に発表した「Gartner Predicts 2014」では、
2020年までに、ナレッジワーカーの大半のキャリアパスは、スマートマシンによって良くも悪くも破壊されると予測しているように、知的労働者の雇用に大きな影響をもたらす可能性がある
と予測しているように、知的労働者の雇用に大きな影響をもたらす可能性がある。
英Oxford大学が2013年9月に発表した「The Future of Employment」では、手先の器用さや芸術性、交渉力、説得力など9つの特性から分析し、702の職業別コンピュータ化が今後10年間で職を代替される確率を示している。
たとえば、ローン貸付担当は98%、受付係は96%、小売販売員92%、タクシー運転手89%、警備員84%、個人向け投資アドバイザー58%となっている。
出所:総務省 インテリジェント化が加速するICTの未来像に関する調査研究会第1回研究会 2015.2
「業務管理・事務関連」や「サービス業」などの職種が代替される可能性の高い高リスク群(47%)となっている一方で、「経営、ビジネス、金融関連」や「コンピュータ、工学、化学」などの職種が低リスク群に分類されている。
雇用破壊とビジネス創造
「Machine Intelligence Landscape」に掲載されている企業は50社であるが、Shivon Zilis氏によると、掲載している企業は、ごく一部であり、多くの企業が新たなビジネスの獲得を目指して動きが始めているという。
すでにシリコンバレーを中心に、人工知能をベースとしたビジネスモデルの創出、つまり、“AIファースト”でスタートアップ企業はビジネスの立ち上げを進めており、GoogleやFacebookなどの大手事業者は買収などを積極的に仕掛け、自社のサービスに取り込もうとしている。
スマートマシンの台頭などによる人工知能による知的労働の自動化が進むと、Gartnerが予測するように、知的労働者のキャリアパスが良くも悪くも破壊される可能性がある。
これらの破壊プロセスを、自身のキャリアパスや自社のビジネスにおける脅威ととらえるか、新たなビジネス創造の機会ととらえてアクションに移すかは、大きな分かれ道となるだろう。
- 林 雅之
- 国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。NTTコミュニケーションズで、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開 発などの業務を担当。政府のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。