クラウドやモバイル、ソーシャル、ビッグデータに続き、新たなITキーワードとして「スマートマシン」が注目されている。本特集では、スマートマシンがもたらす未来、人間とマシンの競争と共創について、解説していく。
スマートマシンとは
スマートマシンとは、「自律的に行動し、知能と自己学習機能を備え、状況に応じて自らが判断し適応し、これまで人間しかできないと思われていた作業を実行する新しい電子機械」のことを指す。社会における利便性向上や新しい産業の創出など、さまざまなメリットをもたらす一方で、人の仕事を奪い、大量失業の不安も生み出す可能性が指摘されている。
調査会社のGartnerでは、新しいハードウェアやアルゴリズム、ネットワーク、コンテンツ(ビッグデータなど)の4つの力が合流し、スマートマシンが現実のものになったと指摘している。
Gartnerが2013年10月15日に発表した「2014年の戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10」の1つに「スマートマシン」をあげており、スマートマシンについて、
コンテキスト・アウェアなシステム、インテリジェントなパーソナル・アシス タント、スマート・アドバイザー (IBM Watsonなど)、先進のグローバル産業シス テム、また初期の自律走行車などの普及により、スマートマシンの時代は2020年にか けて発展するでしょう。
スマートマシンの時代は、ITの歴史において最も破壊的なものになるでしょ う。ITによる実現が期待されながらも、これまでは「人でなければできず、マシンに は不可能」と思われていたさまざまなビジョンの中からも、とうとう現実化されるも のが出てきました。
と整理している。
Boston Dynamicsのロボット「LS3」。起伏のある地形にも対応する。提供:Boston Dynamics
Gartnerでは、スマートマシンについて、代表的なものとして、自動運転車に代表される「Movers(移動する)」、IBMのWatsonに代表される「Sages(賢者)」、人の行動を支援するロボットなどの「Doers(行動する)」の3つに分類している。
スマートマシン普及には、上記の通り、ハードウェアやアルゴリズム、ネットワーク、コンテンツなどが合流した背景がある。高性能のCPUやメモリ容量を持つ機械であるスマートマシンがインターネットを通じて相互につながり、コンピューティングリソースをプールするクラウド上にある膨大なデータを収集、蓄積し、その(蓄積された)ビッグデータを解析する。
多階層のディープラーニング(機械学習を用いた人工知能技術の総称)のモデルに代表される、人工知能(Artificial Intelligence:AI)のアルゴリズムの進化により、ビッグデータを解析すると、有益な知見や判断、蓋然性の高い最適解を導きだすことができるようになってきている。
スマートマシンの進化は、コモディティ化した機械がインテリジェンス機能を持ち、付加価値を高めることで、新しいビジネスが創造と新たな収益が生まれ、経済へのインパクトも大きなものになると想定される。利用者にとっては、スマートマシンを活用することで、日々のルーチンワークから開放され、よりインテリジェントな活動やビジネスに活動を振り向けられるといったメリットも生まれてくるだろう。