松岡功の一言もの申す

マイクロソフトとシスコの「IoT」新解釈

松岡功

2014-06-25 07:30

 “モノのインターネット(Internet of Things:IoT)”がここにきて一段と注目を集めている。だが、その解釈は定まっていない。そこにはさまざまな思惑もあるようだ。

Microsoftが掲げた「IoYT」戦略


会見に臨む日本マイクロソフトの加治佐俊一 業務執行役員CTO

 「MicrosoftはIoTをIoYT(Internet of Your Things)、すなわち、まずは個々の企業が持つ既存のIT資産をつなげることから始まる、と捉えている」

 日本マイクロソフトの業務執行役員 最高技術責任者(CTO)を務める加治佐俊一氏は、同社が先ごろ開いたIoT分野の取り組みについての記者説明会でこう強調した。

 なぜ、IoTでなくIoYTなのか。加治佐氏は、その理由をこう説明した。

 「IoTは定義自体が定まっておらず、扱うデバイスやデータも膨大にあり、どこから手をつけていいのか分かりづらいといった状況にある。ただ、こうした状況は、新しい技術がこれから普及していく中で起こりがちなことだ」

 「そこでMicrosoftは、最初から何百億というデバイスを対象にするのではなく、まずは企業内のシステムやデバイスといった既存のIT資産をクラウドにつなげることから小さく始めて、徐々に適用範囲を広げていけばいいのではないかと考えた」

 その後、加治佐氏が説明した同社の具体的な取り組みについては関連記事を参照いただくとして、ここではIoTの解釈に注目すると、同氏が語ったIoYTというMicrosoftの捉え方は、ユーザー視点で一応の説得力がある。

 ただ、見方を変えれば、既存のIT資産では同社のWindows環境が定着していることから、まずは同社の“土俵”でIoTに取り組む方向に誘導しているようにも受け取れる。それができるのは同社だけなので、戦略としては大いに効果がある。まさに同社のしたたかさを感じさせられるところだ。

Ciscoが掲げた「IoE」戦略

 Microsoftより一足先に、IoTを異なる言葉で表現しているのが、米Ciscoだ。同社は昨年来、IoTの解釈を広げた言葉として、「インターネットですべてをつなぐ」ことを意味する「Internet of Everything(IoE)」を提唱している。

 シスコシステムズ代表執行役員社長の平井康文氏によると、「IoEはこれまで結びつきのなかったヒト、プロセス、データ、モノのすべてをインターネットでつなぎ、新しい価値を創造するという考え方だ。この新たな世界では、さまざまな新しいデバイスを通じて、私たちに価値をもたらすアプリケーションの重要性が高まり、ネットワークにはユーザー、アプリケーション、データセンターを統合し最適化するインフラとしての役割が求められる」という。

 こう聞くと、IoEはIoTよりも広がりがあって、受け入れられそうな気がする。実際に最近では、有力事業者の会見などでもIoEを使用するケースが幾度か見受けられた。ただ、この言葉もネットワークを“土俵”とするシスコならではの表現で、したたかな誘導戦略と受け取れなくもない。

 IoTの定義については、GartnerやIDCなどが見解を示しているが、これを具体的なビジネスや利用シーンに結びつけようと、業種業態の異なるベンダーや企業ユーザーが、それぞれに解釈しているところがある。ただ、IoYTやIoEといった新語まで打ち出したのは、筆者の知る限りMicrosoftとCiscoだけだ。果たしてこの2つの新語がどこまで受け入れられるか、興味深く見ておきたい。

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