政府は2024年を「中堅企業元年」と位置付け、中堅企業を重点的に支援することを打ち出している。この機に、中堅企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を積極的に進めるべきだ。
「意識」「資金」「商習慣」「人材」がハードルに
経済産業省は、大企業と中小企業の間に「中堅企業」という分類を新たに設け、税制優遇などの支援に乗り出す構えだ。従業員が数百人規模の中小企業を除く2000人以下の企業を「中堅」と位置付け、地域経済をけん引する存在として後押しする。
同省では、「大企業は大都市圏に集中し、国内よりも海外の事業を拡大させてきた。そのため、成長余地の大きい中堅企業を支援し、賃上げや国内投資の後押しを行うことで、国内経済の持続的な成長につなげる」ことを見込んでいる。
東京商工リサーチが自社の企業データベースを基にこのほどまとめた「2024年『中堅企業』動向調査」によると、2024年3月時点で中堅企業は9229社、全体の0.7%の構成比となった。ちなみに、従業員数が2000人超の大企業は909社で構成比0.07%、中小企業は121万4670社で同99.1%を占めた。構成比の合計が100%にならないのは集計上の誤差とみられる。中小企業については、資本金3億円以下または従業員数300人以下(製造業)など、中小企業基本法において定義されている(図1)。
図1:企業規模別の定義(出典:東京商工リサーチの発表資料)
もう1つ、この調査で興味深かった結果を取り上げておこう。企業規模ごとの産業別構成比だ。中堅企業ではサービス業他が28.81%で最大となり、次いで情報通信業が18.05%、製造業が16.31%と続いた。大企業は製造業が33.44%、サービス業他が20.02%、中小企業は建設業が28.83%、サービス業他が18.93%と、構成比が大きかった(表1)。
表1:企業規模ごとの産業別構成比(出典:東京商工リサーチの発表資料)
中堅企業とほかとの構成比の違いで筆者が注目したのは、小売業と情報通信業。例えば、小売業では地域に根差したスーパーマーケットなどのチェーン店、情報通信業でも地域をフィールドとしたシステムインテグレーター(SIer)などが思い浮かぶ。
いずれにしても構成比では全体の0.7%にとどまる中堅企業を、政府が明確にカテゴライズして重点的に支援する動きは、DXを推進する絶好の機会と捉えるべきだ。
なぜ、中堅企業のDXを強力に推し進めるべきなのか。
筆者のこれまでの取材経験から申し上げると、中堅企業のDXが最も難しいのではないかと考えるからだ。もちろん、中堅企業でもDXに積極的に取り組み、先行しているところはあるが、筆者の印象では足踏み状態の割合が大企業と比べてもかなり高いように思う。
なぜ、足踏み状態なのか。「意識」「資金」「商習慣」「人材」の4つのハードルがあるのではないか。以下、それぞれについて筆者の見解を述べる。