グローバルのクラウドサービス市場で先行する競合ベンダーを追撃すべく注力するOracle。データベースを中心に多くの企業の基幹システムを支えてきたオンプレミスの実績をクラウド環境でも引き続き維持し拡大していくことが、最大のテーマとなっている。だが、それとは別に新規顧客の開拓につながりそうな特徴も明らかになってきた。キーワードは「コスパ」だ。「Oracle Cloud」は基幹向けだけでなくコスパも、もっとアピールすべきではないか。
基幹向けとは別に「OCI」の新規顧客をどう広げていくか
写真1:「Oracle CloudWorld Tour Tokyo」の基調講演でスピーチを行う日本オラクルの三澤氏
「われわれは今、基幹システムのクラウド移行において圧倒的な実績を上げつつある。これによって、お客さまの基幹システムのレジリエンスの向上に貢献できていることを大変嬉しく思っている」
日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏は、同社が4月18日に都内ホテルで開催したプライベートイベント「Oracle CloudWorld Tour Tokyo」の基調講演でこう切り出した。Oracleの最大の特徴は、データベースを中心に多くの企業の基幹システムを支えていることだ。ここ数年は、オンプレミスの基幹システムをクラウドへ移行することが、同社にとって最大のテーマとなっている(写真1)。
筆者はそうした観点で、これまで三澤氏が記者会見やイベントの講演で話す内容に注目してきたが、「圧倒的な実績」と表現したのは今回が初めてだ。それだけ手応えを感じているということだろう。「基幹システムのクラウド移行」については、今回のイベントに合わせて最新の導入事例やパートナーシップなどの発表も相次いだ(関連記事)。
ただ、特にIaaS/PaaSの「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)について、筆者はかねて疑問を抱いてきた。その疑問とは、新規顧客をどう広げていくかだ。Oracleにとって基幹システムのクラウド移行が最大のテーマではあるが、対象の中心はオンプレミスの既存顧客だ。従って、もともと同社の屋台骨なので、取りこぼしをすることなくやらなければならない「マスト」の取り組みだ。
そこから「基幹クラウド」として新規顧客を開拓する動きには当然打って出るだろうが、それだけではグローバルのクラウドサービス市場で先行する「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」といった競合サービスを追撃することは難しいのではないか。何か新しい“弾”がほしいところだ。しかも「基幹」とは異なる顧客層へも広くアピールできる分かりやすいメッセージを発信できれば、なお良いだろう。
そんなことを考えながら日本オラクルが同イベントに合わせて開いていた記者説明会の一つに出たところ、OCIの新規顧客開拓に向けて大いにインパクトがありそうな話を聞くことができたので、以下にその内容を紹介しよう。