人口減少社会とスマートマシンの役割
日本は、世界的にも例をみないほど急速な超高齢化と人口減少社会を迎え、日本全体の縮小、地方の衰退や限界化自治体(自治体消滅)、社会保障のあり方、巨大災害の切迫やインフラの老朽化、食料や水、エネルギーの制約など、さまざまな課題に直面しており、持続的な豊かさや安全に暮らせる日本のあり方が問われている。
国土交通省が3月28日に公表した「2050年を視野に入れた国土づくりに向けて ~新たな『国土のグランドデザイン(案)』」には、急激な人口減少や少子化、グローバリゼーションの進展、巨大災害の切迫など、国土を巡る大きな状況の変化や危機感を共有しつつ、2050年を視野に入れた中長期の国土づくりの理念や考え方を示している。

IBMのWatson。1秒間に最大6000万ページのテキストを処理でき、研究者たちはWatsonに、データを理解し、最終的には病気の診断を行う方法を教えようとしているという。
このグランドデザインには、日本の人口は、急激な人口減少や少子化、高齢化により、2013年の1億2370万人から、2050年の人口は約9700万人になり、約6割の地域で人口が半減以下に、そのうち3分の1の地域は人が住まなくなり、約4割の高齢化が進むと予想している。
2020年に開催される東京五輪を機に首都圏へのさらなる人口流入による過密と集中が予想される。一方で、地方では地元での雇用の場が見つからない若年女性が東京などの首都圏に集中し、子どもを産み育てられず、結果的に出生率のさらなる低下に拍車がかかり、日本全体が縮小していくという悪循環になってくことも懸念されている。
日本の経済への大きなマイナス要因となるのは人口減少による労働人口の減少だ。日本の労働人口は、2013年の6577万人に対し、2060年には4390万人まで減少すると予想している。仮に、出生率が回復して2030年に合計特殊出生率が2.07まで上昇し、かつ、女性がスウェーデン並みに働いて、高齢者が現在よりも5年長く働いたとしても、 2060年には5400万人程度まで減少すると予測している。
日本経済研究センターの予測では、改革のテンポがここ20年程度の緩やかなものにとどまる基準シナリオでは、2030年頃にゼロ成長からマイナス成長になると予測。一方、破綻シナリオでは、ここ数年でゼロ成長に落ち込む可能性も指摘されている。
ロボットに代表されるスマートマシンは雇用を脅かす可能性がある一方で、少子高齢化による労働力減少への対応に期待が高まっている。日本は少子高齢化による人口減少社会を迎え、確実に労働者が減少していく。
雇用を脅かすというよりも、人間の労働を代替することで、人間自体は人間しかできないコアのビジネスに注力することで、経済成長へとつなげていくことが期待されている。
次章以降は、スマートマシンをテーマに、学習するマシン、ロボット、雇用へのインパクト、自動運転車、人間のマシン化、ハードウェア革命、2045年の世界など、さまざまな角度から掘り下げて行く予定だ。
- 林 雅之
- 国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。NTTコミュニケーションズで、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開 発などの業務を担当。政府のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。