三国大洋のスクラップブック

テスラのソフトウェアアップデートとどんどん賢くなるロボットカーの集合知 - (page 4)

三国大洋

2015-11-08 08:00

 前回、「ひとりのドライバーが100万マイル以上も走るのは到底不可能」云々と書いたが、トヨタのような自動車メーカーの人間あるいはAI研究者の目には、100万マイル以上も走ったロボットカーの集合知でさえゼロに等しいものと映っているというのは面白い。

 この走行距離の違いが、ロボットカーの頭脳にあたるAI部分を鍛えるためのデータ量の違いに直結してきそうなことは比較的容易に推測がつく。

 「Machine Learning」「Deep Learning」といった言葉に遭遇して「ブラックボックス」という言葉が真っ先に浮かんでくるような私にもそれくらいは想像がつく。また、具体的な実装方法という重要な点は別にして、トヨタのようなクラスの自動車メーカーなら自動車運行に関わるデータ収集のノード(”node”)を年間数百万台以上といった単位ですぐにでも作り出せるといった可能性にも思い至る。

 コラムには「Cloud Robotics」というフレーズも出てくる。「Cloud Robotics」というのは、この場合ネットワークでつながったクラウド側に頭脳の部分があるロボットということだろうか。Prattは「ひとつひとつのロボットがすべてのロボットの経験から学ぶ」とか「ロボットの数が増えれば増えるほど、その性能向上も加速する」などと記している。

 また、このコラムには「Deep Learning」について、「その目覚ましい向上ぶりは驚くべきもの(専門家でさえ驚いてしまうようなもの)」といった記述や、「大量の訓練用データやそれを処理するための計算リソースがクラウド上で手に入るようになったことで、そうした向上が可能になった」という記述もある。

 余談になるが、Prattはインタビューのなかで、自動車以外のロボットの話題にも随分触れている。そのなかには高齢化や介護の問題も含まれている――例えば「自分たちがやりたいのは年老いた親たちから自動車のキーをとり上げることではない(今はそうせざるを得ないが)」とか「赤の他人の手を借りずに(代わりにロボットの力を借りて)老年期を自分の家で過ごせたらいいというのは万国共通の人間の思いだろう」などと発言している。また「好きなロボットをいくつか教えて」という質問に対しては、「鉄人28号」(Gigantor)と答えていたりもする。

 それはさておき。

 AI関連では、過去にGoogle(YouTube)やFacebookの話を見聞きしたことがあった。両社である程度まで研究が進んだのもそれぞれ膨大なデータ――YouTubeの場合は動画、Facebookの場合は写真=画像があったからこそ、といった類の話だ。

 ロボットカーの場合にどんなデータが必要になるのかといった点については、正直よくわからないところも多い。ただ、集められるデータの量がものをいうとなれば、Teslaやトヨタのようなところが自ずと有利になりそうなことは比較的簡単に想像できる。「自ずと…」というのは、これから生産・販売してい車両をデータ収集=入力のノードとしてすぐにも使えそうだと思えるからだ。

 そんなデータ収集の仕組みをTeslaは実際に動かし始めた(*5)。ほかの自動車メーカーがどういうタイミングで同様の仕組みを動かし始めるのか、あるいは投入後にどれくらいのペースでデータ収集が可能になるのか。はたまた、いまのところそうした仕掛けを持っていそうにないAppleやUberといったあたりが、いつ、どういう形でこの課題に手を打ってくるのか…。

 関係するいろんな変数があるなかで、データ量ひとつだけを取り出してみてもあまり意味のないことだろうが、それでもこの「ある種の集合知」がもつ戦略上の意味合いなどについて考えをめぐらさずにはいられない。

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