三国大洋のスクラップブック

EVとロボットカー--自動車をめぐるグーグル、アップルの動きなど

三国大洋

2015-10-17 07:00

 Volkswagenがディーゼル車に不正なソフトウェアをこっそり組込み、米EPAなどのテスト結果を誤魔化していたというニュースが少し前に報じられ、それ以来自動車関連のニュースはもっぱらこの話題で持ちきりといった印象が強い。

 ただ、その直前まではロボットカーに関連するシリコンバレーの動きなどを伝える話題もよく目にした(1つにはフランクフルトでモーターショーがあったせいかもしれない)。「Googleがロボットカー事業の責任者として、現代自動車の米国(支社)最高経営責任者(CEO)を務めた経験もある元エンジニアを雇い入れた」とか、「AppleのEV(電気自動車)関連プロジェクトに同社がコミットした」といった話である。

 これらの話題については後で簡単に触れるとして、まずは、前々回その前とで紹介してきたBenedict Evans(Andreessen Horowitzのアナリスト)のコラムの話をもう少し続ける。

 このコラムのなかで、Evansはロボットカーをめぐる技術面の動きについて、次の3点を挙げている。

  1. 個別の車輌の安全性向上(事故回避など)
  2. トラフィック効率の最適化
  3. オンデマンドで運行されるロボットカーの稼働率最適化

 そして、(2)と(3)はAppleやTeslaよりも、GoogleやUberが得意としていそうな事柄に思えるとEvansは記している。(2)や(3)で鍵を握るのはアルゴリズムや(それを動かす)大規模なコンピューターシステム、そして地図情報であり、車体やソフトウェアの設計や、ユーザー=ドライバーの経験(”experience”)、使い勝手の良さ(”ease of use")などはあまり問題にならないというのがEvansの考えだ。

 つまり、現在のタクシーのような役割を担う車輌に対して、乗客はそれほど大きな期待は抱かないだろうし、またそうした車輌の多くは企業(法人)が購入・保有するだろうから、やはりPCのように価格(対性能)本位になろうといった見方と思える。

 Googleがすでにロボットカーのプロトタイプを開発、デモしているのは既報の通りだが、こうした製品の潜在購入者の中心が「個人ではなく、オンデマンドサービス(を行う事業者)」になると想定していると前責任者が示唆していたという話が9月中旬に出たWSJ記事のなかにも出ていた(*1)。

 交通システム全体の最適化が主眼のプレーヤーからすれば、その手段の1つである車輌は実用本位でかまわない、ということだろうか(事業者同士が、運用する車種の違いで差別化を図る、といったことはありそうにも思えるが…)。

 事業の側面についてみると、人やモノを運ぶ仲介をして手数料を得るというUberのビジネスモデルは、ロボットカーが実現した時にもそのまま有効なはずで、かなり見当がつきやすい。またハードウェアの売上から利益を得るTeslaやAppleのモデルもわかりやすい(そうなると仮定して)。

 それに比べるとGoogleの場合はわかりにくく、それだけ興味深い話のネタといえるかもしれない(あいにくと考える材料になりそうなものを目にしていないので、ここでは深入りしないが)。

 既存の自動車メーカーにとっては、TeslaやAppleとの競争なら「何台売れるか」という従来の物差しが使えそうだが、「全体最適化組」との共存・競合というのは、勝手が違う分だけ厄介な話になるかもしれないとの感じもする。

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