ただし、それよりも気になったのは前者の「規模」に関する指摘で、簡単にいえば「自動車の年間販売台数は世界全体でもざっと8000万台、それに対しiOS端末は1桁上の2億数千万台」「ソフトウェア部分まで視野に入れて、それだけの『搭載先』を前提にプロセッサを自社開発できるところは他にない」といったもの(*5)。
また「プロセッサ開発にはべらぼうなコストがかかるし、リスクも高すぎる」という指摘もある(「それだけのリスクを負えるところがどれくらいあるのか」といった問い掛けにも感じられる)。
世の中にいわゆる「車両用半導体」なるものが存在していることくらいは、当方のような門外漢でも知っているので、「なんとも乱暴な話…」などと思いながらこの話を読んでいたが、例えば最近発表になったという「自動運転時代のSoC」をうたったルネサス製SoCに関する記事(*6)などをみると、「CPU」「GPU」「ビデオコーデック」などなどと、メーカー側が訴求している部分にはさして違いはないようにも思える。
また「PC/サーバ用ではうまく解決できない課題」というのが現時点では存在するとして、そういうものが将来的にも「どうしても超えられないもの」なのかどうか……。
その昔「グラフィックカードのメーカー」だと思っていたNVIDIAがいまではロボットカーの心臓部にあたるパーツ(「Drive PX」という名前らしい)を作っているといった話(*7)を目にすると、そんな疑問も湧いてくるが、あいにく、その辺りの疑問を解消する手がかりはウェブを検索したくらいでは見つからない……(どなたかご親切な「専門家」の方がいらっしゃいましたら、編集部経由でどうかご連絡ください)。
なお、筆者であるCheneyの身の回り(”inner circle”=チップ業界内)では、AppleがすでにQualcomm製品と競合するような無線(radio interface、RF)チップの開発にも乗りだしているというのが「よく知られた事柄」という一節もある(*8)。
スマートフォンだけでなく、スマートカー=コネクテッドカー(connected car)でもこの無線チップが基幹部品となるというのがこの筆者の見方。この点については同時期にVentureBeatが報じていたIntelのLTEモデムに関する動きの話とも合致する。
具体的には、Intelに2011年に買収された旧Infineonのエンジニアが何人もAppleに移籍しているというもの。またあくまで可能性としながら、Appleの設計したSoC製造の仕事の一部がいずれインテルに流れることも考えられるといった一節(*10)もある。