Fintechの正体

「Fintechイヤー」だった2015年(後編) - (page 2)

瀧 俊雄

2015-12-28 07:30

 金融危機以降、当局がさまざまな形で消費者にとっての金融サービスの選択肢を増やす取り組みを進める中、「チャレンジャーバンク」という業態が生まれている英国を象徴する事例といえる。

 また、英国では一産業としてFintechをより拡大する動きも見られている。7月にはFintech産業団体Innovate Financeが2020年に向けて、雇用増といった視点も含めたマニフェストを公表している他、キャメロン首相も東南アジアに向けたFintech外交を展開している。英金融当局の一つであるFCA(金融行為監督機構)も、Project InnovateにおいてFintech起業を促すべく制度関連のコンサルティングなどを展開するなど、振興支援を担ってきた。

 12月には英国大使館の対英投資部及びFCAが率いるFintech企業団が日本を訪問するなど、国策としてのFintechを取り上げる動きが明確となった。

2015年を振り返って

 このように、さまざまな動きが見られた2015年であったが、日本のいちFintechプレーヤーとして見ても、これほどの速い進展が起きたことは、大きな驚きであったといえる。ベンチャー企業に求められるスピード感は、前回でも触れたところであるが、このようなプレーヤーのスピード感に向けて、既存プレーヤー側が歩調を合わせて動くことは、海外であっても難しいものといえる。

 今後とも、消費者の利便性に資する革新的な技術に照らして、さまざまな制度対応は求められていく所ではあるが、2014年時点では考えられなかったスピード感での進展があったことは特筆したい。

 一方で、海外での動向を見る中では、期待値によって動いていた段階から、プレーヤーのIPOや買収といった、より本格的・実体的な展開がみられていることは、2016年により意識されていくであろうテーマといえる。現状の日本は、さまざまな期待値の高まりの中で、既存・新規のプレーヤーが立ち上がったフェーズであり、この後、どのような着地や技術の組み合わせが見られていくのかが、ある種本質であり全てでもあるといえる。

 次回は、今後のこの動向を予測していくこととしたい。

瀧 俊雄
取締役 兼 Fintech研究所長
1981年東京都生まれ。 慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村證券入社。野村資本市場研究所にて、家計行動、年金制度、金融機関ビジネスモデル等の研究業務に従事。スタンフォード大学経営大学院、野村ホールディングスの企画部門を経て、2012年よりマネーフォワードの設立に参画。自動家計簿サービスアプリ「マネーフォワード」と、会計や給与計算、請求書発行などのバックオフィス業務向けアプリ「MFクラウド」シリーズを展開している。

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