――将来的にクラウドの比率はどのぐらいになるだろうか?
当初、Microsoft、AWSなどは、すべてがすぐにクラウドに移行するだろうと言っていたが、現実は違ったという印象だ。新しいワークロードはクラウドを利用するが、既存のワークロードはオンプレミスで動いている。重要なことは、(クラウドかオンプレミスかではなく)エンドユーザーにとって便利か、使いやすいか、性能はどうか、そしてコストだ。
顧客の中には、クラウドを利用したのちにオンプレミスに戻った顧客もいる。アジャイルなどの利点はあっても、実際はコスト高になったという声も聞かれる。テストや迅速に展開したいというときにはクラウドが適しているが、その後にオンプレミスに戻るという行き来があるようだ。CitrixのXenApp、XenDesktopなら、すべてクラウドか、すべてオンプレミスかではなく、混在が可能だ。
私は、当面は年に約5%ずつがオンプレミスからクラウドに移動するのではないかと予想している。
――デスクトップ仮想化のトレンドは?実際にはどのぐらいの顧客が利用しているのか?
数年前にデスクトップ仮想化の大きな波がくるといわれたが、実際はそれほどではなかった。現在、Citrixの顧客はVDI(仮想デスクトップインフラ)を利用しているが、われわれの当初の予想を下回っている。理由は、デスクトップ仮想化を動かすためのコストと複雑性だ。それまで物理的なPC上でデスクトップを動かしていたが、VDIではサーバ、ストレージ、ネットワークが必要で、専門知識のあるスタッフがいる。これはPCのコストよりも高い。
この問題に対応するために、CitrixはVDIの価格パフォーマンスの改善に取り組んできた。NetApp、Nutanixなどの提携企業と協業しており、サーバベンダーとCPUの効率性改善などに取り組んでいる。また「Citrix Lifecycle Management」として、容易に導入、設定できるアプライアンスタイプのワークロードとアプリケーションのライフサイクル管理製品も導入した。買収したScaleXtremeの技術を土台としたもので「ブループリント」を作成して実装モデルを構築し、管理の自動化とワークスペースの作成、デリバリを高速に実施できる。
コストの点では、転換点に達しつつある。VDIのコストと物理デスクトップインフラのコストの差は10%程度に縮まっており、VDIへの移行を考えている顧客にとって意味がある投資といえる段階になってきた。
VDI市場の追い風となるのが「Windows 10」のローンチだ。夏のローンチに続いて秋にエンタープライズ向けの提供が開始した。新しいWindowsのローンチは、企業が自社のWindowsデスクトップを今後どうしていくのかを考えるきっかけを提供する――物理的にすべてのPCに実装するか、仮想化するか――。
つまり、VDIを選ぶ後押しとなる。これは過去のWindowsでも同じで、15~20%の物理デスクトップが仮想に移行してきた。今回のWindows 10では、コスト的に見ても(仮想化が)妥当で、Windows 10そのものの評判も上々であることから、これまで以上の活性化を期待している。XenAppとXenDesktopではWindows 10対応を済ませている。