--現在IBMとしてはどのような取り組みをしているのでしょうか。
McLean氏:ビジネス・ネットワークに対して、どうブロックチェーンを適用させていくのかが今の焦点です。ブロックチェーンをビジネスに利用するためには、4つの要件があります。1つ目は先ほどお話したパーミッション型の「共有台帳」です。2つ目が「スマートコントラクト」(契約の自動化)と呼ばれる、契約に紐付いた条件をブロックチェーンに組み込み、トランザクション同時にその条件を実行する仕組み。3つ目が台帳が共有されていてもトランザクションを内密にするための「プライバシー」。そして4つ目が取り引きを検証するための「コンセンサス」で、使う目的に合わせて変えられることが重要です。
私達が携わっている具体的な活動としては、Linux Foundation の「Hyperledgerプロジェクト」があります。このプロジェクトは17社のファウンダー企業と100社のメンバーによる、ブロックチェーンの技術を促進するための共同活動です。オープンでスタンダードな分散台帳の重要な機能を産業界全体で見出し、取り組んでいくことが目的です。われわれはブロックチェーンのあるべき姿を、一つの会社が所有するのではなく多くの参画者が携わることだと考えているので、幅広い産業の人達が興味を持っている現在は良い状況です。
また、ブロックチェーンを導入できる環境についてですが、IaaSのSoftLayer上、メインフレームであるZ system上、そしてオンプレミスで使えるようにしており、実際に活用するための技術もサービスとして提供しています。ブロックチェーンなど先進的なアプリの短期開発やビジネスを支援する「Blockchain Garage」も、ニューヨーク、ロンドン、シンガポール、東京に設置しました。
Global Blockchain Labs Engagementの技術責任者であるAnthony O’Dowd氏
O’Dowd氏:今までお話したことは実際デモンストレーション可能です。車のリースを題材にした例をお見せします。製造業者、ディーラーシップ、統制当局など、共通台帳を持っている参加者がいて、そこにスマートコントラクトを適用させるとどうなるのかを、オンラインデモで見られるようにしています。
まずは、車の製造業者の「Martin」としてログインしてみましょう。Martinは製造業者なので、画面の左側には彼の会社で製造している車の一覧があり、右側にはMartinとやりとりをしている業者が書かれています。どの車を誰に対して譲渡するのかを選んで、「transfer asset」というボタンを押します。すると、Martinの画面には車が譲渡されたという記録が現れます。
続いて、ディーラーシップに務めるDeborahさんとしてログインしてみましょう。そうすると、Deborahさんの台帳上には先ほどMartinから渡された車が一番上の行に追加されていることがわかります。そして今度は、ディーラーシップが持っている他の車を選んで、それを他の会社に渡すこともできます。すると、この車がリース会社に渡されたという記録が残ります。
共有の台帳ではありますが、それぞれの参加者から見られるのは、自分が関わっている部分だけです。しかし、統制当局側では、リアルタイムに近い形で、全ての参加者の取り引き一覧を見ることができます。また、例えば車を製造できるのは製造業者だけ、解体ができるのは解体業者だけというように、特定のアクションができるのは特定の参加者だけということもスマートコントラクトによって決められています。
「プライマリーマーケットで新しいアセットを作り、それをセカンダリーマーケットに渡す」という考え方が適用できれば、この技術は自動車だけではなく、債権や食べ物など、さまざまなことに対して適用することが可能です。
デモの概要1
デモの概要2