IBM World of Watson

IBMのロメッティ会長--AIの恩恵は脅威をしのぐ

怒賀新也 (編集部) 2016年10月27日 12時00分

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 IBMは米国時間の10月24日から27日まで、ラスベガスでユーザーイベント「IBM World of Watson 2016」を開催している。26日の基調講演には、IBMの会長、社長兼最高経営責任者(CEO)を務めるVirginia Rometty氏が登壇し、人工知能(AI)がもたらす可能性を多彩なゲストを招きながら説明した。

 World of Watsonと銘打ったイベントでRometty氏が話すという意味で、IBMが考えるAIの位置付けは気になるところ。クラウド事業を統括するDon Boulia氏は「AIと言う言葉は使う人によって意味が微妙に違う。IBMがCognitiveと言うときはWatson技術を指す。機械学習、データセットを理解すること、意思決定を支援することが含まれる」と話す。IBMがCognitiveにこだわった理由はここにあると考えられる。

会長、社長兼CEOを務めるVirginia Rometty氏
会長、社長兼CEOを務めるVirginia Rometty氏

 だが、今回、イベント全体を通じて、またRometty氏自身がAIという言葉を繰り返し用いており、少なくともIBM社内で「AI解禁」になったであろうことを思わせた。

 Rometty氏は先日、Amazon、Facebook、Google、IBM、Microsoft、Google傘下のDeepMindがAIに関する普及とベストプラクティスを共有する非営利団体「Partnership on AI」を立ち上げたことにも触れた。

 その背景について「AIへの恐れが加速している現実はある。倫理、透明性、プライバシー、雇用などさまざまな分野での懸念が取りざたされ、インパクトも大きい。だがそれ以上に恩恵が大きい」と指摘。先日の発表の背景にAI脅威論があったことを示す一方で、AIへの理解を促すことがIBMの役割と認識していることが分かった。

 恩恵の具体的な例を示したのは、東京大学医科学研究所教授、ヒトゲノム解析センター長の宮野悟氏だった。

壇上に上がった宮野氏
壇上に上がった宮野氏

 ガンへのゲノム治療をWatsonを使って実施している例を紹介。東大病院の患者だった66歳女性が、急性骨髄性白血病を患い、標準的な抗ガン剤治療を受けたが、病状は悪化していった。改善を目指して試行錯誤する中で、Watsonを使った治療法を模索していったという。一般に、ガンのゲノム治療はスパコンを使って変異を抽出し、そこで上がった変異を論文や報告書と照らし合わせて調べるが、ここにWatsonによる解析方法を導入した。

 「ゲノム治療に活用できる論文の数は、ガンを対象にしたものだけで2400万件もあり、積み上げると富士山の高さを越える。人間がすぐに読むのは不可能」と宮野氏。

富士山より高いという話に会場が爆笑。日本人としてはよく理解できなかった
富士山より高いという話に会場が爆笑。日本人としてはよく理解できなかった

 「塩基配列が分かっていたため、Watsonに解析をさせたところ、10分程度で分析できた」とのこと。結果は驚くことに、別の種類の白血病だった。そこで、Watsonがはじき出した抗ガン剤治療を実施したところ、病気がすっかり治癒したという。

 NHKの特別番組でも紹介された「ヤマシタアヤコ」さんというこの女性は「先生、私は今まで人工知能というのはSFの世界のものだと思っておりました。もう私のところにまで来てるんですね」と言ったという。ここで、会場からは大きな拍手が起こった。

 Rometty氏は「東京大学のこの例は、医療の在り方をWatsonが変える可能性を示した」と指摘。宮野氏は「Cognitiveの技術がデータを読み解くことにより患者の希望の光になる。これを日本だけでなく、世界に広げていきたい」と話した。

 基調講演ではイスラエルのジェネリック医薬品の製薬企業、TEVAと提携することも発表。患者と医師がWatsonを介して常にコミュニケーションし、体につけたセンサ情報を基に、適切な薬を3Dプリンタによって患者の自宅で製作し、服用するといったかなり未来的なイメージの話になっていた。また、米自動車大手、General MortorsのCEO、Mary Barra氏も登場。Barra氏は自動車の安全にかかわる機能のベースにWatsonを組み込んでいることを伝えた。詳細は別記事にて紹介する。

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