内山悟志「デジタルジャーニーの歩き方」

新規ビジネスを創出するアイデア発想法--不連続型イノベーションの進め方と着眼点

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2024-03-13 07:00

 新規ビジネスの創出やビジネスモデルの変革を行う「不連続型イノベーション」を創出する際には、漸進型イノベーションにも増して常識を打破するような大胆な発想が必要となります。そのためには、現状の課題や自社の強みではなく、将来視点の外部環境の変化を起点とした発想が求められます。

不連続型のイノベーションの進め方

 具体的なDXの実践には、業務の高度化や顧客への新規価値の創出を行う「漸進型イノベーション」と、新規ビジネスの創出やビジネスモデルの変革を行う「不連続型イノベーション」の2つのタイプがあります。前者については、本連載の前回「身近な所から始める業務変革--漸進型イノベーションの進め方と着眼点」でその進め方とアイデア創出のポイントを述べました。一方、後者ではより一層大きな発想の転換が必要となります。本稿では、ITRが多くの企業で実践している不連続型イノベーションのアイデア創出の手法を紹介します。

 これまで、ビジネスや業務でテクノロジーを活用する際は、ビジネス上の課題やニーズに対して、その解決策および実現策としてテクノロジーを当てはめるという「問題解決型」のアプローチが主流でした。具体的には、現状(As-Is)分析(業務分析など)に基づいて、理想像(To-Be)とのギャップを特定し、テクノロジーによってこのギャップを埋める解決策を考えるという方法です。しかし、綿密なAs-Is分析を行ってもそこからTo-Be像が見えてくるわけではありません。結果として、現状の延長線上の解決策(改善策)しか浮かび上がらないということになります。

 従来の業務改善に対しては問題解決型のアプローチが有効でしたが、不連続型イノベーションの発想には不向きと言わざるを得ません。不連続型イノベーションでは、これまでの業務改善や漸進型イノベーション以上に発想の転換が必要であり、未来志向の「問題発見型」のアプローチが有効です。問題発見型のアプローチでは、未来における外部環境を起点とすることがポイントとなります(図1)。

図1.未来から発想する問題発見型アプローチ(出典:ITR) 図1.未来から発想する問題発見型アプローチ(出典:ITR)
※クリックすると拡大画像が見られます

 そこでITRでは、不連続型イノベーションに適した将来視点の外部環境の変化を起点としたアイデア創出プロセスを考案しました。

 このアプローチでは、まず社会・産業・業界など、将来視点の外部環境の変化を洗い出します。次に、浮かび上がった外部環境の変化から生じる、社会・産業・業界・消費者の課題や新たな需要を洗い出します。外部環境の変化とそこから生じる課題・ニーズをひも付けてこれらの関係性を明らかにします。

 次に、課題・ニーズを踏まえて、実現したい未来の姿を簡潔で魅力ある言葉で表現します。この言葉は後述する「ビジョナリーワード」と呼ばれるものです。そして、課題・ニーズと技術ニーズを掛け合わせて、ビジョナリーワードで表現された未来の姿を実現するための施策を立案します。最後に、立案した施策によって目指すべき未来像を具体的に図・表などで表現し、ビジネスモデルを実現性や市場性などの観点から評価します。

 このアプローチは、実習形式の企業研修で活用されているだけでなく、実際の新規ビジネス創出を検討するワークショップなどで活用され、多くの企業において長年実践されています(図2)。

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