内山悟志「デジタルジャーニーの歩き方」

企業変革に対する抵抗への処方箋--事例に学ぶチェンジマネジメントのTIPS

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2024-01-17 07:00

 DXの推進を含む企業変革には抵抗がつきものです。多くのDX推進担当者から、社内の抵抗や無関心によって変革の行く手を阻まれる状況が報告されています。今回は、DXプロジェクトに関するこれまでのケーススタディーから浮かび上がる「変化に対する人の抵抗」に対処するための勘所を示唆します。

変化への抵抗に向き合うチェンジマネジメント

 DXに限らず組織における変革には抵抗が付きまとうものであり、避けて通ることはできません。「変化に対する人の抵抗」を打破することができなければ、いかに経営者が旗を振り、DX推進者が奮闘しても、会社全体を突き動かすことはできません。本連載においても、DXの推進における「変化に対する人の抵抗」を対処するために、チェンジマネジメントの重要性を再三唱えてきました(「DXで再注目されるチェンジマネジメントの重要性」など)。

 チェンジマネジメントでは、企業レベルの変革に着目したJohn P. Kotter氏の「変革の8段階プロセス」や、個人レベルの変革に焦点を当てた米Prosciの「ADKARモデル」など幾つかのフレームワークが存在します。しかし、変革の推進アプローチに定番の方法論があるわけではなく、変革の目的は各社各様であることに加えて、企業内部の状況もそれぞれに異なるため、フレームワーク通りに進めれば変革が成功するというものではありません。

 従って、変革に成功したリーダーの行動様式や、問題に対処した際の経験から具体的なヒントを得ることが非常に有効です。本稿では、筆者がこれまで支援したDX推進プロジェクトの経験や顧客企業へのヒアリングによるケーススタディーから、企業変革に対する抵抗に対処するためのチェンジマネジメントのTIPSを紹介します(図1)。

図1.チェンジマネジメントのTIPS(出典:ITR) 図1.チェンジマネジメントのTIPS(出典:ITR)
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関係者の役割・期待を明確にする

 DXの推進や施策の遂行には多くのステークホルダー(関係者)が関与します。関係者は、変革の主導者であり、最も重要な後ろ盾となるプライマリースポンサー、同スポンサーに準じて施策に賛同し、後援者となるスポンサー、支援者となるサポーター、変革の対象者となる現場マネージャーや現場スタッフなど多岐にわたることでしょう。

 また、それぞれの立場ごとに施策に対する賛成派・中道派・反対派が存在するのが一般的です。まずは、こうした関係者の属性を分類し、「ステークホルダーマップ」を作ることが推奨されます(図2)。変革を前進させるには、反対派を中道派に変え、中道派を賛成派に変えるよう働きかけることが求められます。ステークホルダーマップによって整理した関係性を確認しながら攻略法を検討できるようになるでしょう。

 またステークホルダーマップは、最初のひと転がりを起こす際に実験台となってもらう組織を選別することにも役立つはずです。そして賛成派の結束を固めるために、スポンサー間の情報交換を促進し、認識共有と意思統一を図ることも重要です。その際、意思統一はスポンサーや上位役職者からの押し付けではなく、自ら考えて変革の必要性に気付き、その結果として賛同しているように演出することが重要です。

 あくまでも各自の内発的動機づけを尊重し、刺激と気付きを与えることが推進者の役割となります。

図2.ステークホルダーマップの例(出典:ITR) 図2.ステークホルダーマップの例(出典:ITR)
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