内山悟志「デジタルジャーニーの歩き方」

DX研修を行動変容につなげる--変革人材を育む環境整備とは

内山悟志 (ITRエグゼクティブ・アナリスト)

2025-04-16 07:00

 多くの企業が全従業員を対象としたデジタルリテラシー研修を実施しています。しかし、研修・実習を実施するだけで従業員の行動がすぐに変わるわけではありません。企業は、研修・実習を提供して終わるのではなく、各人が自発的に学び、それを業務やビジネスに活かすような行動変容を促すことが重要です。

研修・実習だけでは人の行動は変わらない

 DX人材の育成は、DXの推進において重要な取り組みですが、研修や実習の実施が目的やゴールではありません。DX研修・実習の企画運営担当者から多く聞かれる課題は、「研修・実習は満足度高く実施されているのだが、従業員の行動が変わらない」ということです。本連載の前回「全従業員向けDX人材育成の実態―デジタルリテラシー研修への期待と成果」では、DXの「D」の部分だけでなく、DXの「X」の部分を推し進める変革人材がむしろ重要だと述べました。

 DX人材は「変革人材」でもあるべきであり、DXの推進では、従業員一人ひとりが自ら課題を見つけ、仮説を立てて試し、さらに創意工夫し続けるという行動を起こすことが重要です。つまり、行動様式の変革が全ての人材に求められるのです。研修・実習は、気づきを与える、知識を得る、といった点で一定の意義ある取り組みといえます。しかし、デジタル時代を生き抜く人材は、口元までエサを運んでもらうのを待つひな鳥のような人ではないはずです。DX人材育成では、企業は研修・実習を提供して終わるのではなく、各人が自ら学び、それを業務やビジネスに活かすような行動変容を促すことが重要です(図1)。

図1.「研修・実習」と「学び」の違い(出典:ITR) 図1.「研修・実習」と「学び」の違い(出典:ITR)
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どのような行動変容が求められるのか

 DXは、単なるデジタル化ではなく業務プロセスやビジネスモデルの変革を含む、まさに企業変革といえます。会社全体が変革を成し遂げるためには、組織を構成する全ての人材に行動変容が求められます。

 その第一歩は、変革への賛同であり、そこから積極的な発言、協力、コミュニケーションが生まれ、組織全体に内発的動機付けや挑戦意欲が広がっていく、そうした一人ひとりの視座の高まりや行動変容が組織能力を向上させ、やがて文化や風土が良い方向へ変わっていくというものです(図2)。

 DXの前進に向けてどのような行動変容が求められるのかを解き明かすために、ITRが2024年10月に実施した「DX人材育成実態調査」では、「従業員向けのDX研修・実習によって起こる会社として変化」に関する8つの項目についてどの程度起こっているかを問うています。

 8項目の全てにおいて「変化が幅広く起こっている」と回答した企業は20%から25%にとどまりましたが、「ある程度起こっている」を含めると60%から71%となり、行動変容が全社に広がっていく途上にあることが示されました(図3)。

 企業は従業員に対して、この8項目で示した「DXの推進に対して積極的に行動する」「業務のデジタル化に意見を言う」「部署や組織の壁を越えたコミュニティーを活発に行う」「新しいことにチャレンジする」といった行動を起こすように促すことが求められます。

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