ビッグデータ/IoTへの取り組みが、業界を問わず広がりを見せている。一部のインターネット企業がマーケティングのために行うもの、という認識から始まったビッグデータに対し、IoTという新たな切り口が加わったことで、B2Bの製造業などの企業もビッグデータ/IoTを製品およびサービスを向上させる必須技術として関心を強めているからだ。サーバー・ベンダーからソリューション・ベンダーへと急速に変貌を遂げているデルは、このビッグデータ/IoTに取り組む企業に対し、エンドツーエンドのソリューションを提供しているという。
本稿では、11月10日に開催された「Cloudera World Tokyo 2015」に出展したデルのセッションと展示内容から、同社が提示するソリューションを紹介しよう。
データの収集から分析までをワンストップで提供

デル
ビッグデータビジネス開発マネージャー
堀田鋭二郎氏
まずは、『デルだからこそ実現できるビッグデータ/IoTビジネスの加速化』と題されたセッションからご紹介しよう。セッションに登壇したデル ビッグデータビジネス開発マネージャーの堀田鋭二郎氏は、「2015年はビッグデータ/IoTの実践の年」だと言う。
「Apache Sparkのようなインメモリ技術が実用段階に入り、これまで技術的な課題とされてきた部分が解決され、製品も充実してきています。一方、ビッグデータ/IoTに対するアプローチが多様化したことでどこから手をつければいいのかと迷っている企業も多い。そうした企業に対し、顧客をロックインしないオープンな技術でエンドツーエンドのソリューションを提供しようというのがデルのアプローチです」(堀田氏)
では、デルが提供するソリューションとはどのようなものなのだろうか。
「ビッグデータ/IoTにおけるエンドツーエンドとは、データの収集から統合、蓄積、処理、分析までの各フェーズを指します。デルは、この各フェーズに対するソリューションをワンストップで提供することができます」(堀田氏)
収集フェーズでは、デバイスからデータを収集するためのゲートウェイ製品やSNS/インターネットからデータを収集、統合するための「Dell Toad Data Point」、Oracle DBからHadoopにデータをインポートするための「Dell SharePlex」などといったソフトウェアを提供している。また、蓄積、処理フェーズでは、SAPと共同でSAP HANAのエンジニアド・ソリューションを手掛けるほか、Cloudera Hadoopのサブスクリプション販売およびリファレンスアーキテクチャーの提供を行っている。また、SANストレージと組合わせて複数のサーバのPCIe SSDをプール化する製品「Dell Fluid Cache for SAN」は、SANストレージのボトルネックを解消して高速なデータ分析を可能にするという。最後の分析フェーズには、「Dell Statistica」という独自の分析・可視化ソフトウェアがある。

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製品ラインアップの広さとともに重要なのが、デルが掲げるグローバル戦略「Dell Blueprint」の下で提供される「エンジニアド・ソリューション」と「リファレンス・アーキテクチャー」だ。
「どちらも検証済みのシステム構成を提供するものですが、エンジニアド・ソリューションはアプライアンス製品として納品するキッティング済みのシステム・アプライアンス、リファレンス・アーキテクチャーはシステム構築のためのガイドラインです。Cloudera Hadoop向けには、エントリーからSpark連携を組み込んだものまで複数のアプライアンスが用意されているほか、最新のCloudera 5.4に対応したリファレンス・アーキテクチャーも提供しています。このDell Blueprint戦略により、お客様は迅速な導入・運用が可能になり、結果として導入コストも削減できます」(堀田氏)
デルのCloudera Apache Hadoopリファレンスアーキテクチャーは、ビッグデータ用途に最適なインテル® Xeon® プロセッサーを搭載した2ソケットサーバPowerEdge R730/R730xdをベースに構成されている。インテル® Xeon® プロセッサーは、ビッグデータ分析、ストレージ、エンタープライズ・アプリケーションなど、さまざまな用途に、性能、電力効率、セキュリティーの面で大きなメリットを提供している。

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デルのソリューションが活用されている事例としては、インテルの半導体工場が紹介された。この事例ではデルのIoTゲートウェイやHadoop、分析ツールのStatisticaが使われているという。
「この事例では、半導体の検査に機械学習による画像分析を取り入れたことで、検査スピードを10倍にすることができています」(堀田氏)
このほか、デルのセキュリティ部門であるSecureWorksでも、新たな脅威の検知と対策に同社のソリューションが使われているそうだ。
なお、前述のリファレンス・アーキテクチャーの開発には、デルが中心となって結成されたOSCA(Open Standard Cloud Association)という団体が深く関わっているという。
「OSCAは、もともとOpenStackやCloudStackといったオープンクラウド基盤の共同検証のために立ち上げた団体ですが、現在は対象をビッグデータ、ネットワーキングのオープンソース全般に広げ、22社が参加しています。最新技術を現場で使える段階にまできちんとサポートしていくために、共同検証した結果をホワイトペーパーにまとめて公開するなどの活動を行っています。OSCAの目的は、技術と技術の歯車を噛みあわせてビジネスに役立てること。何か検証してほしい課題があれば、ぜひお声がけいただきたい」(堀田氏)
以上のように、堀田氏のセッションではデルのソリューションと活動が紹介された。冒頭で触れられたとおり、ビッグデータ/IoTへの取り組みは広範囲に広がっているが、導入する企業の側では、人材不足が深刻化しているのではないだろうか。その点についてセッション終了後の堀田氏にたずねてみた。

「確かに、ビッグデータ/IoTにおけるデータ分析の技術者は不足しています。もともと数が少ないうえに、進化が速いのでキャッチアップしていくだけでも大変でしょう。デルとしては、こうした問題に対してもOSCAを通じてサポートしていきたいと考えています。具体的には、システム構成の検証だけでなく、どんなデータをどうやって分析すればどういう効果が得られるかという使い方の部分まで、ベストプラクティスとしてノウハウを蓄積して公開していく。そうすることで、ビッグデータ/IoTの敷居を下げ、技術者の底上げに役立てるのではないでしょうか」(堀田氏)