企業のネットワーク・ニーズに応えるNFVサービス
ベライゾンジャパン
テクニカルソリューション本部本部長
生田隆由氏
そして、Dell EMCのサーバーをプラットフォームとして採用し、構築されているのがベライゾンが全世界で展開を進めているNFVサービスだ。ベライゾンジャパンの生田氏は、サービス提供の背景を次にように説明する。
「現在、企業が扱うトラフィックは毎年28%の割合で増加しており、大規模化し続けるネットワークをコントロールするためにNFVに関心が集まっています。そうした企業の関心に応えるかたちで2016年5月に提供を開始したのが『VNS(Virtual Network Services)』というNFVサービスです」(生田氏)
ベライゾンでは、VNSサービスのロードマップを4段階のフェーズに分けて計画しており、サービス提供を開始した現在は第2フェーズに当たるという(第1フェーズはサービス提供基盤の構築)。
「第2フェーズで提供するサービスは、『Virtual Security Service』(仮想ルーター+仮想ファイアウォール)と『WAN Optimization Service』(アクセラレーター)の2つです。5月の時点ではサービス提供エリアは北米、南米、欧州が中心でしたが、現在は日本を含むアジア・オセアニアへと広げている段階です。そして、次の第3フェーズではオプション機能、例えばセキュリティであればIPSやプロキシ、標的型攻撃対策などを拡充するとともに、ポータル機能を強化して必要な機能、必要な帯域をユーザー自身で追加・管理できるようにします。さらに第4フェーズではサードパーティのオプション機能が利用できるようにするなど、VNSエコシステムの強化と統合を図ります」(生田氏)
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VNSサービスは提供が始まってまだ間もないが、保険販売会社や金融向けデータセンター事業者にファイアウォールサービスやWAN最適化を初めとするマネージドWANサービスをすでに提供していると、ユーザー事例を紹介された。
「Virtual Security Serviceは、拠点数が多く従来の方法ではセキュリティの確保が難しい、あるいはコスト高になってしまうというケースでの利用が増えています。一方、WAN Optimization Serviceは、パブリッククラウドと自社データセンターを安定かつ高速に接続したいというユーザーによく使われています」(生田氏)
現状では、拠点に配置するホワイトボックスとクラウドセンターでは、他社製サーバーも併用しているが、Dell EMC製品への移行に向けて導入を進めているという。
「Dell EMCのサーバーを採用した背景には、価格や性能、機能、将来に向けたロードマップを総合的に判断した結果ですが、サポートサービスが充実していること、Dell EMC製品は今回のVNS以前からも当社での採用実績が多く安心感があったことなども採用の決め手になっています」(生田氏)
これまでSDN/NFV技術は、データセンター事業者やネットワーク事業者が内部で利用するものという認識が強かったと思うが、このベライゾンのサービスが示すように、その利用はエンタープライズ市場へ急速に広がりつつある。
講演後に杉本氏に伺ったところ、杉本氏はオープンネットワーキングが与えるインパクトについて、次のように語ってくれた。
「オープンネットワーキングは、ネットワークの構成機器を変えるだけでなく、ネットワークの構築方法も変えます。従来のネットワークは、技術者が要件に合わせ案件ごとに設計・構築していたため、構築にとても時間がかかりました。オープンネットワーキングではネットワーク機能がコンポーネント化されるため、必要な機能をコンポーネント単位で組み合わせるだけで、ネットワークが構築できます。時間短縮になるだけでなく、必要な機能を必要になったときに追加できる構成の柔軟性も提供します。その柔軟性を損なわないようにするには、特定のベンダー依存から脱却できる、オープンスタンダードなプラットフォームを採用することが重要だと考えています」(杉本氏)