AI時代を生き残るために日本企業が進めるべき本当の「改革」とは

そうした立場から多くの企業の現状をご覧になっていて、今、多くの日本企業が抱えている課題は何だと感じておられますか。

 端的に言えば、世界のビジネスにおけるルールが大きく変わり、以前とは「勝ちパターン」が変わってしまっているにもかかわらず、その変化に対応できていないことです。そのため多くの日本企業は、競争力を失ってしまった。

 戦後から現在に至るまで、二回のビジネスのゲームルールチェンジが起きています(図「ゲームのルールチェンジに追いついていない?」参照)。

図「ゲームのルールチェンジに追いついていない?」 図「ゲームのルールチェンジに追いついていない?」
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 顧客への提供価値の重心が「ハードウェア」に置かれていた1980年代まで、ゲームのルールは比較的単純でした。「製品のハードウェアをいかに磨き上げるか」が、顧客の満足度と直結していたからです。日本の産業界が隆盛を誇っていたのはこの頃でした。ところが1990年代に入って、製品のデジタル化が進みました。それによって価値の重心が、ハードウェアから「ソフトウェア」に移行していきます。ハードウェアがそこそこの品質でも、ソフトウェアによる制御でうまくカバーすることができたんですね。これが一回目のゲームルールチェンジです。この変化にいち早く適応し、成功を収めたアメリカのメーカーは、台湾のEMSと水平分業型ビジネスモデルを確立しました。こうして日本の多くのコンシューマーエレクトロニクス企業はシェアを奪われたのです。

 過去の成功体験から脱することができず、価値の重心移動に対応できなかったことが、日本企業の敗戦の原因でした。

なぜ、日本企業は諸外国と比べて、新たなルールへの対応が遅れてしまっているのでしょう。

 1980年代の成功体験が大きすぎたからでしょう。当時、電子、機械、素材の分野では、売上高、営業利益で、多くの日本企業が世界のトップ50に名を連ねていたのです。日本企業のケイパビリティも、働く人のマインドセットも、経営課題解決能力も、過去の成功をそのまま続けるために最適化されてきました。それが、日本企業の足かせになっているのです。ところが現在、日本企業を主導するエグゼクティブには、1980年代に入社して、過去の成功を目の当たりにした人たちが多い。その体験に縛られて、なかなか変革できないのだと考えられます。

二回目のゲームルールチェンジはどのようなものでしょうか。

2010年前後から「データを使ったサービス」に、顧客への提供価値の重心が移っています。それによって「モノ・サービスによる価値提供」から「データによる価値提供」にゲームの主戦場が変わりました。これが二回目のゲームルールチェンジです。

 それに伴ってビジネスの「勝ちパターン」も変化しました。「新しい勝ちパターン」では、データから価値が生み出されます。そしてユニークな価値を生み出せた企業が、現在のビジネスルールにおいては勝者となります。そのための手段として、企業はデータから価値を生み出し、それをユーザーに届けるためのサービス開発をしなくてはなりません。このビジネスモデルにおいてはモノとサービスはデータを取るための手段と位置づけられます。したがって場合によってはユーザーに無料でモノとサービスを提供することもあり得ます。そこから得られたデータでマネタイズすればよいという考え方です。価値を持つのはあくまでデータなのです。

園田氏

 米国で成功を収めているIT企業がやっているビジネスは、まさにこの勝ちパターンに従っています。ITジャイアンツと呼ばれる企業はまさにそうですね。しかしサイバー空間から取得できるデータから生み出される価値は飽和しつつある。そこで今、注目を集めているのが、物理空間から取得できるデータから生み出される価値です。いわゆるIoT(Internet of Things)の領域ですね。その領域では、いわゆるIT系でない、伝統的な製造業であっても、新しいルールに対応できているところはあります。良い例は、古い歴史を持つ米国のコングロマリットにおけるジェットエンジンの事例です。この企業は、かつてジェットエンジンを作り、航空機メーカーに売るという「モノによる価値提供」を行っていました。しかし現在では、ジェットエンジンにセンサーをつけて、データを取得し、そのデータを使って、エアラインにコスト削減サービスを提供するという「(モノから取得した)データによる価値提供」にビジネスモデルを変換しました。そのため、彼らは自分たちの製造したジェットエンジンを売らず、リースしています。リースであれば自由に「データ」を手に入れることができます。それにより「新たなルール」に対応し「新しい勝ちパターン」を実践したのです。

 ここに対応できないと、日本企業はさらなる敗戦を重ねてしまう可能性があります。

「新たなルール」、「新しい勝ちパターン」に対応できている日本企業は少ないのでしょうか

提供:EY Japan
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2018年12月31日
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