イベントリポート:HCL CTO Straight Talk 本格化するIoT、成功のコツはどこにあるのか?

インドの本社を中心に世界31カ国でITサービスを提供するHCLグループ。世界中からの開発案件が集中する同社は、グローバルなITトレンドに対する知見をいち早く蓄積できるというポジションにある。その知見をもとに、今後のエンタープライズITのあり方を企業のITリーダーたちに問うイベントが「HCL CTO Straight Talk」だ。2015年11月に開催された二回目となる本イベントでは、「ビジネスは新たな領域へ -見えてきたIoT時代の事業戦略」をテーマに、現在ITの大きなうねりを生み出しつつあるIoTについて、講演やパネルディスカッションが行われた。

企業を21世紀型へと進化させるIoT


HCLテクノロジーズ
President, Engineering and R&D Services
GH Rao氏

 まず、基調講演で登壇したのは、HCLテクノロジーズでエンジニアリングR&Dサービスのトップを務めるGH Rao氏だ。『Internet of Experience - IoTが「ものづくり」にもたらす新たな可能性』と題された講演でRao氏は、IoTを企業に変革をもたらす原動力となる主要技術と位置づけた。

 「インプットベースでアウトカムを求めていた従来型の企業に対し、あくまでも結果にフォーカスするのが21世紀型の企業だ。そうなるためには、より迅速で無駄のない、合理化されたオペレーションが必要になる。IoTは既存技術の延長線上にあるもので、まったくの新技術というわけではないが、21世紀型企業へと変身を促す力を持っている」(Rao氏)

 では、IoTが企業に変身を促す持つ力とは具体的に何なのだろうか。

 「まず、IoTによってもたらされるものとしては、リアルタイムにデータを収集・分析することで得られる『事業の見える化』がある。IoTによって自動化された収集・分析プロセスは、Embedded Intelligence(組み込まれた頭脳)となって、企業の変身を促す。次に、IoTはデバイスを繋げるだけのものではない。ビジネスに係るすべての関係者、人、モノ、組織を結びつけることを可能にする。その関係を自動的にドライブすることによってIoTは企業を21世紀型に進化させるのだ」(Rao氏)

 Rao氏によると、IoTには、製品単体の状態、次に製品間が繋がった状態、そして最後にエコシステムの中で製品が繋がった状態の3つのステージがあると言う。

 「ステージが上がるにつれて、自動化のレベルが上がり、システムはより自律的になっていく。それと同時に、事業者と利用者の双方が受ける恩恵も大きくなる。例えば、迅速な補修を目的としていたものが、ステージが上がることで予防的なメンテンナンスが可能になるといった具合だ」(Rao氏)

 また、IoT戦略を進める上ではパートナー選びが重要だとRao氏は言う。

 「IoTは既存技術をインテグレートして作られるものであり、一から構築する必要はない。問題に見合ったソリューションを提供可能なパートナーを見つければ、より短時間でIoTを導入することができ、企業は本業に集中することができる。ただし、IoTのシステムはデバイスからアプリケーションまで数多くのレイヤーを持つことになるので、それらを一つのプラットフォームにまとめ上げる能力を持ったパートナーが必要だ。HCLはグローバルで300社以上にIoTのサービスを提供しており、IoTのパートナーとして検討に値するものと自負している」(Rao氏)

IoTの加速に向けて整備が進む通信環境


ソフトバンク株式会社
法人事業統括 法人事業開発本部
事業開発統括部 ビジネス開発部 IoT事業グループ
鴻池 大介氏

 続いて特別講演に登壇したのは、ソフトバンクの鴻池 大介氏。「IoTで実現するカスタマーコネクティビティ」と題された氏の講演では、キャリアの立場からIoTの実際について生々しい話を聞くことができた。

 「人、モノ、場所、サービスを繋げてビジネスを加速させるのがソフトバンクのミッション」と語る鴻池氏は、IoTの現状を次のように説明する。

 「M2Mは自販機などの特殊な機械を繋げるものだったが、IoTはあらゆるデバイスが対象になりえる。これまで繋がらなかったものが繋がるようになることで、新たなビジネスモデルがどんどん登場してきているというのが現在の状況」(鴻池氏)

 鴻池氏によると、モバイル通信の標準化団体3GPPでは、IoT分野での活用を目的とした次世代通信規格「LTE MTC(Machine Type Communication)」の策定が進められていると言う。

 「IoTであらゆるデバイスがインターネットに繋がる時代に、すべての端末にフルスペックのLTEを搭載していては、コスト高になってしまう。データ量が小さい端末向けに、より安価なチップセットで実現でき、消費電力が小さい規格が必要だ。また、IoTのデバイスが電波の届きにくい店舗の奥まったところに設置されることもある。そうしたカバレッジの問題をどう解決していくかという議論も標準仕様策定の場で行われている。このLTE MTCは、2015年内に策定が完了する見込みだ」(鴻池氏)

 IoTの導入障壁としては通信料金の問題もあるが、こちらも解決の目処がついてきたという。

 「キャリアは国に通信量に応じた電波使用料を支払っているが、国とキャリアとの話し合いにより、この電波使用料に上限額が設けられることが決定した。これでIoTで接続デバイスが爆発的に増えても、通信料金の負担を抑えることが可能になる」(鴻池氏)

 技術的、コスト的な障壁は解消されつつあるが、それでも障壁は残っていると鴻池氏は指摘する。

 「IoTによってさまざまなビジネスモデルの変革が始まっているが、タクシーのUberが日本の法規制によってなかなか上陸できなかったように、法規制の問題がビジネス展開の障壁になる可能性はあるだろう」(鴻池氏)

 続けて鴻池氏は、IoT活用における重要ポイントとして、「IoTで解決するビジネス課題の明確化」と「運用面の課題解決」の2点を挙げて次のように説明する。

 「IoTの波に乗り遅れまいとするためか、IoTの導入が目的化しているケースが見られる。新しいビジネスモデルの創出なのか、販売促進なのか、結果として解決策がIoTでなくなることもありうるが、私たちがお話をいただいたときは、目的をはっきりさせるところから始めさせていただいている。また、IoTはデバイス、通信回線、マネジメント・プラットフォーム、PaaS、アプリケーションの5つのレイヤーで構成されるが、キャリアであるソフトバンクは通信回線やSIMマネジメントを含めた包括的なサポートをワンストップで提供することができる」(鴻池氏)

 なお、SIMマネジメントとは、どの端末がどのSIMを搭載していてどのお客様が使っているのかをひも付けて管理し、回線を制御すること。ソフトバンクでは、同社が開発したプラットフォームと、Jasperとソフトバンクで共同開発したプラットフォームの2つを提供しているそうだ。

IoTにおけるデータの収集と活用のあり方とは

提供:株式会社エイチシーエル・ジャパン
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