クラウドとオンプレミス、最適化で進むシステムの二極化
ソフトウェア事業部 システム管理ソフトウェア本部
JP1マーケティング部 部長
更田 洋吾 氏
冨田:まずはじめに、震災を含むこの1年間で、IT環境にどのような変化があったのかを伺いたいと思います。日々お客様と接していて、どのような変化を感じていますか。
更田:この1年間でクラウドや仮想化の浸透が急速に進んだと感じています。クラウドに関しては、インフラレイヤーからもう少し上の、業務やサービスまで企業の意識がいっているように思います。
冨田:今回のアンケート結果では、約18%がプライベートクラウドを導入していて、数値としてはそれなりに高い。しかしPaaSの導入は4.2%で最も低いという結果でした。一方、米国ではPaaSの利用が加熱してきています。PaaSやIaaSは今後、国内でどのような形で成長すると思いますか。
更田:まだ過渡期ですが、社内データセンターへの集約という取り組みから始まっているのだと考えられます。IaaSのようにプラットフォームだけというのは北米では普及しやすいかもしれませんが、日本ではその上に基盤となるミドルウェアがあり、業務システムを持ってくるところまで含めたサービスが必要だと思います。
冨田:その違いは、情報システム部門の"自前主義"に関連しそうですね。
更田:そうですね。ミッションクリティカルな基幹系業務はこれまで通り24時間365日、きちんとした品質で運用できるオンプレミスが主流でしょうし、逆に多少サービスレベルが落ちても問題がないシステムはクラウドに移すという二極化が進んでいます。情報システム部門では、そうした区分けをしながら徹底的にコストを詰めていき、どこを守るべきかを検討していると思います。
冨田:アンケート結果でも「クラウドで得られた運用面の効果」として、ハードウェアコストの削減が19%、運用コスト削減が14%という結果が出ました。やはり、適材適所かと思います。
クラウドの活用では攻めの姿勢が利益につながる
冨田 秀継
更田:オンプレミスとクラウドの二極化の内容をもう少し詳しく見てみると、仮想化でサーバ統合したものを徐々にプライベートクラウドに移していくという使われ方が多いようです。もう一歩進んだ企業では、リソースをプール化して、必要なときに必要な量だけ使う体制に進んでいます。グローバル企業であれば国境や海をまたいで利用しやすいパブリッククラウドを利用して、コスト最適化に向かっています。反対に、絶対にダウンさせてはいけないシステムは従来型のオンプレミスのままというケースが多いです。
冨田:なるほど。その一方、アンケートでは「クラウド導入後に得られなかった効果」として運用コストの削減や業務効率の向上が上位を占めています。ということは、クラウド化によって「ハードウェアは減ったが、管理の手順や運用方法が複雑化してコストは増えた」とも読み取れます。こうした結果を招かずに、上手にクラウド化のメリットを引き出すにはどうしたらいいのでしょうか。
更田:ここでの問題は、オンプレミス向けとクラウド向けの両方で、複数のツールを使い分ける手間が発生することですね。ということは、企業内のシステムとクラウド上のシステムを一元的に管理するツールが適しているわけです。JP1の最新バージョンであるV9.5では、この課題を解消するために、各システムを一元管理できるように改善しました。
冨田:システムの設置場所に関係なくシームレスに運用管理できれば、「期待したが得られなかった効果」は改善されるわけですね。ところで、クラウドサービスを(SaaSなどとして)単純に利用するだけでも、それなりの投資になることがありますよね。思ったようにコスト削減できなかったというユーザー企業の声をよく聞くのです。稼働後の効果を考え、ポジティブな攻めの姿勢でいくほうが、利益を出すことができるのでしょうか。
更田:はい、そう思います。クラウドが浸透し始めた当初は、コストや効率の効果を求めるお客様が多かったのですが、最近はクラウド活用を業務改革の手段として使うケースが増えてきており、長い目で見るとその方が有効だと思います。また、今回のアンケートではモバイル化推進の数値こそやや低いようですが、もう1つ見逃せない市場トレンドとして、スマートフォンやメディアタブレットなどの新たな端末の企業での利用が加速すると予想しており、これらをいかに適切に管理運用するかが課題になると考えられます。これらの2つの大きなトレンドに対応すべく、JP1 V9.5は機能や製品を大幅に強化しました。
冨田:コンシューマライゼーションへの対応ですね。