IoTをビジネスの原動力に - IBMが提案するリアルタイム分析の利活用

 鈴木氏に続いて登壇した日本IBM アナリティクス事業部 ワールドワイド・ビッグデータ・タイガー・チーム テクニカル・リード 土屋敦氏は、IoTの普及によって今後さらに重要視されるとみられるストリームコンピューティングについての紹介を行っている。

 「これから新しく出てくるデバイスは、すべてネットワークにつながることになる。世界中のモノとモノがつながるようになったとき、そこで発生するデータから価値を得るには、すみやかに不要なノイズを除去し、誰よりも早く予測分析を行い、アクションを取ることが重要になる」と土屋氏。そのためには、従来のやり方 - データを取得したらディスクに保存し、RDB/DWHに切り出してから分析を行うというしくみではなく、データが入ってきた時点で分析を開始するストリームコンピューティングがより重要になってくると説明する。実際にアクションを起こすまでの時間をいかに短くするか、ストリームコンピューティングの価値はこの一点に集約されるとも言えるだろう。

 従来のバッチ処理に代表される"過去からの発見"と異なり、ストリームコンピューティングではより速く確実に"現実を把握する"ことが求められる。したがって、分析のベースとなるデータの扱い方も当然異なってくる。「いったんディスクに入れてから結果を返すのではなく、ディスクに保存する前、つまりインメモリでリアルタイムに処理を返すやり方が主流になる。以前はスパコンでしかできなかったような処理がIAサーバでも十分にできる時代になった」(土屋氏)

 ここで土屋氏はIBMのストリームコンピューティングソリューションとして「IBM InfoSphere Streams」を紹介している。IoT時代の多種多様なデータをリアルタイムに処理するテクノロジとして、すでに医療、公共、金融などさまざまな業界で導入が進められている。InfoSphere Streamsの特徴は「多様な分析ロジックを実装できること」だと土屋氏。データマイニング、テキスト分析、時系列分析、ルールエンジン連携、統計解析(SPSS/R連携)、地理空間計算などを含み、IoT時代に求められる多様なストリーミング分析環境を構築できる。とくに時系列分析に見られる"予期された値から逸脱したケースのリアルタイム検知"に向いており、センサーデータの処理や株価データの把握、CPUやメモリ使用率の予測分析に有効であることが、100を超える事例によりすでに証明されている。

 なお、InfoSphere Streamsは非商用環境において無償/無制限で利用できる「クイックスタート版」が用意されている。興味をもたれたなら、まずはここから試すといいだろう。

 最後に、セミナーで紹介されたIBMのIoT事例のうち、2つのケースを紹介しよう。

 ひとつはいわゆる"コネクティッドカー(Connected Car)"の典型的な事例と言える仏プジョーのケースだ。自動車業界はIoTの最先端を行っており、各社がそれぞれに創意工夫をこらしているが、プジョーの場合、競合他社に先駆けてデータのリアルタイム処理に着目したシステムを構築している。

 プジョーが導入しているIBM製品は以下のとおり。

  • IBM MessageSight
  • InfoSphere Streams
  • InfoSphere BigInsights(IBM Hadoop)
  • API Management

 プジョーでは現在、販売する車体のほとんどにGPSセンサーが取り付けられており、すでに80万件ほどのデータを収集済みだという。また、ユーザのモバイルデバイスなどからのデータもあわせて収集しており、これらはすべてクラウド上にMQTT経由で集約されている。これらのデータをリアルタイムにストリーミング処理し、自社だけでなくパートナー企業やユーザにも配信するエコシステムを、はじめからAPIを公開した状態で構築している。「プジョーのコネクティッドカーサービスは"APIオリエンティド"という点が非常に新しい。自社で囲い込むのではなく、はじめからAPIありきで新しいイノベーションを呼び込んでいる。にもかかわらず特別なシステムは必要としない。IAサーバでも十分に実装可能」(鈴木氏)

 このコネクティッドカーサービスにより、ポータルサイト経由でのドライバーへのリアルタイムな情報提供や、ドライバーのIDを使った過去のメンテナンス履歴などの検索、保険会社との連携によるドライバーごとの保険料決定などが実現している。プジョーのようにすでにあるシステムをうまく組み合わせてAPI指向で提供するIoTは「品質重視で丁寧にものづくりを行う日本企業も参考にできる部分が多い」と鈴木氏は指摘している。

 もうひとつは新生児の死亡率を下げる研究にストリーミング処理を積極的に適用しているオンタリオ工科大学のケースだ。命に危険が迫っている新生児の場合、その対応は1分1秒を争う。急変してから対応していては手遅れになるケースも少なくない。オンタリオ工科大学ではストリーミング分析処理にInfoSphere Streamsを導入し、平均20名以上の異なるソースから心拍数など毎秒1000以上の測定値を監視している。現在では監視対象は最大120名、120万測定値/秒、1日あたり10億レコードを蓄積する。この膨大なデータに対して分析を行いパターン分析モデルを抽出、このパターンを再びストリーミングデータに還流することでリアルタイム分析の精度と速度を高め、長期的なPDCAサイクルを実現している。

 「このケースは医療だけでなく、製造業などにも適用可能だ。たとえば壊れかかった機械を分別する際に、複数のデータから入ってくる相関関係を分析することで、すみやかに判別できる」(鈴木氏)

 IoTはもはや一部の大企業や先進的なベンチャーだけのものではなく、その導入のハードルはずっと低くなってきている。あらゆるモノがつながる時代になった現在、そのルールとしくみを把握し、ビジネスへの積極的な活用を図っていくことは、競合他社に大きな差をつけ、イノベーションをリードする可能性をもたらす。いずれ近い将来、兆を超えるデバイスどうしがつながる時代がやってくる。そのときになって「ウチにはIoTは関係ない」といえる企業は少ないはずだ。簡単にトライアルを試す環境も揃っている。IoTのポテンシャルを実感するのは、今を置いてほかはない。

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