ZDNet JapanとTechRepublic Japanが開催した「デジタル変革、IoT、セキュリティ 激動の事業環境を勝ち抜くネットワークインフラの新常識」と題するセミナーでは、対症療法的なアプローチではなく、この先10年を見据えたネットワークインフラを構築するためのヒントを示す講演が行われた。
この中で日本アイ・ビー・エム GTS事業本部のディスティングイッシュト・エンジニア(技術理事)の山下克司氏は、「INDUSTRIAL IoTとオープンなネットワークアーキテクチャー」と題して講演を行った。セミナー終了後にあらためて、従来型ITの世界から変化していく、IoTやインダストリー4.0といったトレンドを包含したこれからのネットワークのあり方と、その実現のポイントを山下氏に伺った。
一部が止まっても全体として動き続けるサービスを実現する新たなアーキテクチャ
日本アイ・ビー・エム
GTS事業本部ディスティングイッシュト・エンジニア(技術理事)
山下克司氏
山下氏がまず指摘したのは、ITの世界において、大きなアーキテクチャの変化が起こっていることだ。
エンタープライズのITシステムというと、これまでの教科書ではいわゆる「三層モデル」が示されることが多かった。クライアントPCが負荷分散装置やファイアウォールを介してWEBサーバにつながり、そのバックエンドにはアプリケーションサーバとデータベースがある、というおなじみの構成だ。
「だがこれらは2000年ごろに作られた古いアーキテクチャで作られたシステムだ。WEBという技術を用いたオープンな仕組みではあるが、データの入出力を処理する目的のためのトランザクションベースで動くものであり、もはや『オープンレガシー』と表現できる」(山下氏)
このオープンレガシーシステムの最大の課題は、サービスの継続性だ。「設計にしろ運用にしろ、考えなければならない要素が非常に多く、そのすべてが完璧に動いていないとサービスを提供できない。全体を一体化して作ってしまうと、一部が止まった結果、全体が止まってしまう」(山下氏)
しかし、最近のネットアプリはそんなサービスレベルの低下を許してくれない。サービスの停止がビジネスに直結するからだ。