Azureのクラウドはサポートも含めて1つの製品として提供
「クラウドではサポートサービスも含め、1つの製品だと考えています」と加藤氏。これはたとえばIaaSというコンピュータリソースをクラウドで提供しそれで終わりではなく、顧客が安心してAzureを使いこなすためにサポートサービスを利用してもらうところまで含め1つのサービスと言うこと。こう考えた際に、クラウドサービスの機能や信頼性などと同様に、サポートサービスの対応時間などが重要な要素となる。
AzureのサポートにはBASIC、DEVELOPER、STANDARD、PROFESSIONAL DIRECT、PREMIERの5つが用意されている。それぞれで重要度に応じ、応答時間などがサービスレベルとして定められている。たとえばSTANDARDでは事業に軽微な影響が及ぶ場合(重大度C)は、8営業時間以内の応答時間となっている。さらに事業に部分的な影響が発生する場合(重大度B)なら4時間以内、事業に大きな影響が発生する場合(重大度A)では1時間以内に応答する。こういったサービスレベルを守るのはもちろんだが、問い合わせからの最初のレスポンスにできるかぎり一次回答を含めることを内部目標にもしている。こういった独自の努力が、顧客からの満足度を高めているのだろう。
日本マイクロソフト
サポートエンジニア
米田 有佑氏
また決められたサービスレベルを守るのに貢献している1つに、テレワークなどのマイクロソフトの柔軟な働き方がある。「問い合わせは急ぎの対応を求められるものもたくさんあります。天候などに影響されることなく、安定してサポート サービスをご提供できるように、出社が難しい時の問い合わせ電話などは、適宜転送され自宅で対応することもあります」と宇田氏。どこにいてもサポートの業務ができるよう、社内の人事制度も、システム環境もマイクロソフトではきちんと整備されているのだ。「基本的にPCとネットワークさえあれば、オフィスで対応するのと同じ対応ができます」と言うのは、IaaSやストレージなどのインフラ関連を担当しているサポートエンジニアの米田 有佑氏だ。
Azureのカスタマーサービスへの問い合わせは、Azureのビジネス拡大とともに増加傾向にある。とはいえ、問い合わせの増加に比例しサポートエンジニアを増やす訳にもいかない。そのため、問い合わせ対応を効率化する問題解析ツールなどがかなり充実してきている。顧客がWebなどから問い合わせを行う際には、あらかじめどのリソースでどんな問題があるかを問い合わせフォームで選択する。それらの情報を使い、解析に必要となるログなどは自動収集される。そのためサポートエンジニアが問い合わせ対応を開始する際には、収集されたログから予測される問題点とその解決策があらかじめ提示されるのだ。こういったツールを使うことで、問い合わせ対応が迅速かつ正確に行えるようになる。
「昔なら、問い合わせがあればまずはユーザーの環境をヒアリングするところから始まりました。そこから必要なログをとっているかを確認し、もしなければそれを収集してもらうといった作業もお願いしなければなりませんでした。今ではそういった手間は大幅に減りました。」(米田氏)
このようにマイクロソフトでは、自社内の業務のさまざまな面で自動化が進められている。カスタマーサービスにおいてもそれは例外ではない。とはいえどの問い合わせに対し誰が担当するかは、エンジニアの担当範囲やスキルなどから自動で割り振るのではなく、テクニカルアドバイザーが担当者を決めている。問い合わせをしてきたユーザーのこれまでの履歴、さらにはその時の問い合わせ傾向なども加味し担当者を決めるのだ。ここは自動化もできるが、問い合わせしてきたユーザーの気持ちを推し量り最適な対応するには、今はまだテクニカルアドバイザーが担当者アサインを決めたほうが良いと乾氏は言う。
日本マイクロソフト
サポートエンジニア
村山敬祐氏
さらにAzureのカスタマーサービスでは、顧客とのコンタクト方法も工夫している。昨今は問題の解決方法をメールで回答することも多い。しかし「メールだけだと齟齬が出る場合もあるので、そういう場合には電話などでなるべく直接話して確認をとるようにします」と言うのは。PaaSや開発系のサポートエンジニアの村山敬祐氏だ。
顧客によってメールで、あるいは電話で連絡が欲しいといった希望があり、基本的にはそれに合わせ連絡する。しかしながら問題が複雑できちんと口頭で説明したほうがいいと判断した場合には、その理由を説明してメールを希望しているユーザーにもあえて電話でコンタクトをとる。例えば、構築作業が進まず至急のサポートを必要とされている顧客には、スピードを優先してまずは電話で解決策を案内し、その後にメールで回答を連絡している。つまりルールなどに縛られるのではなく、その時にもっとも適したユーザーとのコミュニケーション方法は何かを常に考えているのだ。そういった工夫が、顧客の満足度向上にもつながる。
「どのタイミングでどの方法でユーザーとコンタクトすれば良いのか。そのあたりは、日頃からかなり分析しています。」(加藤氏)
また電話などでユーザーと直接会話をすると、その時の問い合わせ以外にユーザーが抱えている本質的な課題に気付くこともある。そこからよりAzureを使いこなすための提案につながることもあり、ユーザーと直接コミュニケーションをとることのメリットは大きいとのことだ。