Azureに閉じることなく顧客の環境に踏み込んだサービスを提供する

日本からの日本語での問い合わせ件数は、グローバル全体の問い合わせの1割程度を占めている。これは他の地域と比べても、かなり多いほうだ。ITシステムについては日本のユーザーの細かい要求が、米国などではなかなか理解されないことも多い。しかしながらAzureのカスタマーサービスに関しては、日本からの問い合わせの質はかなり高いことがグローバルでも認識されている。「日本のお客様の要求レベルは高いので、データセンターのオペレーションチームや開発チームからも日本からの声をもっと聞かせて欲しいと要望されます」と乾氏。実際、日本からの要望が反映され、それがグローバル標準の対応となった例もある。

さらに、開発部門にフィードバックするのは「カスタマーサービスの役割の1つです」と米田氏も言う。クラウドのサービスは、ベンダー主体と言うよりもユーザーと一緒に作るところがある。実際、Azureではフィードバックサイトが用意されており、サポートエンジニアはもちろんユーザーも任意でここでサービスに対するフィードバックが可能だ。投稿されたユーザーからの要望などは、投票により支持の多かったものや大きな影響を生むものなどが優先され機能として実装されることになる。
また開発チームがGitHubでさまざまな情報を公開しており、サポートエンジニアが開発チームとコミュニケーションをとるのにそれを利用することもある。GitHubの情報は公開情報となっており、ユーザーもこれを使って開発メンバーとコミュニケーションをとることが可能だ。こういったさまざまなツールを活用することで、課題の早期解決につながることもある。

「クラウド上のアプリケーション開発ではオープンソースソフトウェアを活用することも多く、その際に開発メンバーと直接コンタクトがとれるGitHubは重宝しています」と村山氏。状況に応じ、GitHubの公開情報をユーザーに提示し解決のアドバイスをすることもあると言う。

さらに対応の範囲をAzureだけに閉じないようにもしていると宇田氏は言う。ネットワーク関連のサポートでは、Azureと接続する先に他社のネットワーク製品もあれば別のクラウドサービスがあるのが普通だ。Azureの範囲はここまでですと決めてしまうのではなく「Azure側からは対向側のパラメーターと不一致が発生しているように見えていて、公開されているサンプルコンフィグと比較すると、対向のルーターの設定が少し異なっているようですいったことまで、なるべく踏み込んで回答するようにしています」とのこと。
認証関連も、他のクラウドサービスなどと連携させることが多い。そのため「ここから先は他社のクラウドサービスなのでうちでは対応できませんとするのではなく、なるべく他のクラウドにも踏み込んだ回答をするようにしています。必要であれば他のクラウドサービスのアカウントを取得し、設定を試してその結果から考えられる解決策を提示することもあります」と加藤氏も言う。
Azureに閉じないために、人材の採用の際にもオープンソースソフトウェアに強い人、Javaなどの開発経験がある人などマイクロソフトの技術だけではなく幅広いスキルを持っている人を採用するようにしている。
サポートの仕事を通じマイクロソフトのファンをさらに増やしたい
米田氏は「今後は問い合わせ対応で終わるのではなく、お客様のパートナーになりたい」と言う。そしてカスタマーサービスが、顧客に頼りにされる存在になれればとも。村山氏は、トラブルが発生する前にプロアクティブな対応ができるようにしたいと言う。そのためのノウハウは既に蓄積されているので、今後はそれをどうやってユーザーに伝えるかを工夫していきたいとのことだ。
乾氏も、今後は、サポートチームに蓄積されている豊富なノウハウをより広く、積極的に発信したい。ノウハウが活かされることで、サポートに問い合わせたことのないユーザーにも「Microsoft Azure を選んで良かった」と感じてもらえるようにしたいと言う。
宇田氏は、サポートサービスは顧客に技術的な情報を正式に提供できる最後の砦のようなものだと言う。クラウドは内部の仕組みがブラックボックスに思われがちなので、今後もより一層サポートからの情報のアウトプットには重きを置きたいと。そのために、自分が担当する製品やサービスについては、技術的に知り尽くすようにしていきたいとのことだ。
最後に加藤氏は、サポートのサービスを通じマイクロソフトのファンをより増やしたいと。「問い合わせをした人、あるいは直接会って対応した人にマイクロソフトはすごいと感じて欲しい。そうするのがサポートの仕事だと思います」と言う。
