自動化への第一歩は「何から自動化するのか」
――日本企業は新しい技術に対して漠然とセキュリティ上の不安を感じる傾向にあります。ネットワーク仮想化に対してはどうでしょうか?
能登 NSXがセキュリティで問題視されることは聞かないですね。お客様は「NSXはセキュリティを高めるもの」という観点で考えていると思います。
奈良 レイヤ4までのパケットフィルタリングに割り切っているので不安はない、ということでしょう。とはいえ「製品の本質について理解が進んでいるか」という点ではまだ道半ばです。われわれももっとアピールする必要があります。
阿部 そうですね。導入によるメリットの認知拡大はまだまだ。それはネットワーク仮想化もそうですし、自動化についてもそうです。
能登 「ネットワーク仮想化は運用が大変そう」という印象を持っているお客様が多いですね。
奈良 自動化に関してはもっと意識のハードルが高い。自動化を検討し始めると、「あれもこれも自動化したい」という状態になり、それらが完成するまでに必要な労力を想像してしまい、「それならば今の運用のままでいい」という話になっているのではないでしょうか。結局、自動化について具体的にイメージできていないお客様が多いです。むしろ何か一つでも、特定の作業について「これを自動化したい」という強いモチベーションがあれば進みやすいように思います。
阿部 システムをパターン化(テンプレート化)できていないことも自動化普及の足かせになっているのではないでしょうか?
能登 それもありますが、アプリケーションやサーバーの担当と打ち合わせを重ねて、「どういう要件でネットワークを設定するのか」などの決定が大変です。自動化以前に標準化が必要ですし、われわれには「標準化を進めるプロセスを支援する」役割も求められていると思います。
阿部 情報システム部門は、ハードウェアの保守契約切れなどでさまざまなシステムインフラの更改作業に追われ、残業時間も増えます。それらの業務を自動化することで、他の仕事ができるのではないかというのは経営層の視点ですね。企業全体として見たときに働き方改革の視点でも自動化を進めることは有効です。
奈良 システムの更改も手順が決められていて、冗長で無駄が多かったりします。Linuxの場合、インストールするパッケージはこれ、IPアドレスはこれ、アップデートをかけてパッチを当てて、ということをやっていますが、ツールを使ってクローニングすれば自分は手を動かさなくても20〜30分でその環境を作れます。その結果、自由な時間が増えて、担当者が定時で帰れるようになったり、新しい仕事やプライベートに時間を割けるようになったり。働き方改革につながりますね。