航空機から受け継いだ安全性と
ドライブの愉しさを追求するSUBARU
SUBARUは日本を代表する重工業企業であり、独創的な思想・技術を取り入れたモノづくりで世界的にも知名度・評価が高く、人気の車種ブランドで多くの国内外の自動車ファンを魅了するメーカーである。同社は1917年に設立された飛行機研究所を前身に持ち、後に中島飛行機として航空機エンジン等の開発・製造に携わった。
航空機で最も重視される安全性・堅牢性を追求するモノづくりは、自動車開発に着手した当初から現代まで連綿と受け継がれている。実際、ラリーや耐久レースなどスピードと安全性・堅牢性の両立が強く求められるモータースポーツにおいて、SUBARUマシンの活躍に熱狂してきたファンも多いだろう。もちろん同社は、一般向けにも安心と愉しさを兼ね備えた自動車の提供に注力している。
「SUBARUの運転支援システム『アイサイト』は、追突事故・歩行者事故の発生率を大幅に減少させる技術として進化を続けています。またモバイルアプリの『SUBAROAD』は、目的地に到達することのみを目指すカーナビの常識を覆し、景観がすばらしい遠回りの道を選んだり、位置情報と連動した音声やBGMを流したりと、ドライブを楽しむためのツールとして人気を博しています」と、SUBARU 情報システム部 荒木孝充氏は述べる。自動車メーカーが、自ら“新しいドライブ体験”を創ろうとしているのだ。
株式会社SUBARU
IT戦略本部 情報システム部 Webガバナンスグループ 主査
荒木孝充氏
Webサイトのガバナンス強化
クラウドを活用した統合・標準化へ
こうしたSUBARUの技術や魅力を伝えるためのチャネルとして、中核となるのはWebサイトだ。SUBARU本社のほか、多種多様な関係会社、販売会社などがWebサイトを持ち、さまざまな情報発信とユーザー接点の場として活用している。
ところが、ここに大きな課題があった。Web サイトの活用が進むにつれて、各社による独自の構築や運用が拡がっていき、各々の最適化を転用可能にするなど、ブランド全体としての統制が必要となった。Webガバナンスの強化が急務と捉えたSUBARUは、グループ会社のスバル・インテリジェント・サービスと共同でWebサイト運営事務局を立ち上げた。
情報を収集したところ、イントラネットを含む200以上のWebサイトに加えて、SNSアカウントやモバイルアプリなど統制すべき対象が多岐にわたることが判明した。
荒木氏らは情報を収集して、各社の現状やニーズを整理し、ルールの整備から進めていった。ガバナンス強化プロジェクトを進めていく中で、共通課題として挙がったのがセキュリティだ。
「各社は制作会社などの支援を受けて構築・運用を行っていますが、すべてがSUBARUのセキュリティ基準を完全に満たしているわけではありませんでした。Webページの見栄えがよくとも、Webサーバーの管理が不十分で安全性に欠けるということもありました。とはいえ、各社の予算や人的リソースには限りがあり、個々にノウハウや人材を確保して改善していくことは困難です。事務局からノウハウや知識を提供するとともに、Webプラットフォームを統合して標準化を図り、将来的にはブランド面での統一を目指すべきだと考えました」(荒木氏)
デジタルマーケティングは、今もWebサイトやSNS、モバイルアプリなど多彩で、将来的な予測が難しい領域だ。共通プラットフォームを構築するにあたって荒木氏は、「考えるべきことが少ないインフラ」が望ましいと考えた。柔軟性と拡張性に富み、堅牢性にも優れる。運用負荷が小さく、将来的な変更・改善も実施しやすい ―― クラウドサービスを選ぶのは必然だった。
そしてSUBARUは、知見・ノウハウが蓄積されており、社内外の情報も豊富なAmazon Web Servicesを選定した。AWS上にCMSを含む統合プラットフォームを構築、まずはSUBARU本社のWebサイトのほか国内の関係会社・販売会社の100サイトを対象に移転作業を進めている。