そのクラウドはともに成長できるパートナーですか? - ベンダ選定の前に覚えておきたい5つのカンどころ - (page 2)
クラウドベンダ選択の5つのポイント
ではここであらためて、クラウドベンダ選択のポイントを5つほど挙げていきたい。
その1 AWS
パブリッククラウドのIaaSベンダを選択するにあたり、今の時代、AWSを外して考えるのはよほどのレアケースである。AWSでできること/できないことを踏まえ、他のベンダのサービス内容を比較していく作業を重ねていけば、本来のニーズを掘り下げていくことにもつながる。
AWSは米国に本社を置く会社だが、ベンダ選定の際には海外/国産という視点はそれほど重要ではない。海外ベンダには海外ベンダの良さがあり、国産ベンダには国産ベンダの良さがある。たとえばセンシティブな基幹データや、法令遵守の面から国内に置いておくべきデータは国産ベンダに、テスト環境の構築やアクセス頻度の低いデータはコストメリットの高い海外ベンダに任せる、などの使い分けも悪くない。そしてAWSはそうした検討の最初のたたき台にするにはきわめて優秀な存在だといえる。
その2 クラウドベンダの出自
ご存知のとおり、AWSはAmazonという世界最大のeコマース企業が親会社であり、そのビジネスの効率を高めるためにクラウドを生み出した。このように、クラウドを提供するベンダがもともとはどんな事業を原点にしているかをチェックすることで、そのベンダがどんなサービスに強みをもっているかを理解しやすくなる。例えばニフティクラウドの場合、オリジナルは回線事業者であるため、ニフティクラウドのユーザは同一の回線を利用できる。高速で信頼性の高いネットワークを最初から担保されているとも言えるだろう。クラウドベンダの強みと自社のビジネスのニーズが合致すれば、そのクラウドベンダ選びはかなり成功に近い。
その3 データセンターの場所
セキュリティ上、クラウドベンダはデータセンターの住所を公開していないケースがほとんどだが、どこの国にあるかはチェックすべきである。日本にデータセンターがある場合、電気通信事業法第4条第1項で通信の秘密について「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は、侵してはならない。」という法律があり、この義務は通信事業者のみならず、一般個人もこの法令を遵守する義務がある。そして日本でのビジネスがメインであり、ある程度のパフォーマンス確保が譲れない条件であるなら、レイテンシ低減や法令遵守という側面から国内にそれなりのキャパシティを備えたデータセンターをもつベンダを選んだほうがメリットは大きい。
その4 パートナーの存在
当たり前だが、どんなITプロジェクトにもリスクが伴う。もっといえば、クラウド導入において、失敗がゼロということはありえない。どんなに綿密な検討を重ね、周到に準備をして臨んでも、予想外のトラブルは必ず起こる。ここで重要なのは失敗をゼロにしようとすることではなく、失敗が起こってもリカバーできる状況を整えておくことだ。そのためにはやはり、信頼できるパートナーの存在が不可欠である。
ひとくちにパートナーといってもさまざまだが、ここではクラウドベンダ自身が信頼できるパートナーになりうるか、そしてベンダから正式にサーティファイされた認定パートナーをどれだけ確保できるかを検討課題に考えてほしい。パートナーも1社に限定する必要はない。むしろ相談できるパートナーは数多くいたほうが心強いはずだ。パートナーの存在は、クラウド導入だけでなく今後の運用においても重要なポイントとなる。