日本の製造業は品質という武器を持つ
競争が激化する世界の中で、日本の製造業は苦しい局面を迎えている。日本の製造業は、円高・労働規制・環境規制強化・貿易規制・電力不足などの国内環境の悪化が足かせとなり、成長を妨げていたのは否めない。
しかしながら、超円高が是正され、国内の景気が改善の方向に向かいつつある現在、厳しい条件にさらされてきた製造業にもチャンスが生じており、ここで新たな投資を行って競争力を高め、「攻め」に転じようとする企業が増えつつある。
そうした企業が特に注目するのは、"ビッグデータ解析によってマーケティング力とグローバル戦略力を鍛える"という動きである。WebアクセスログやSNSでのユーザー嗜好を分析し、商品企画へ結びつけようとする。しかし、これだけで国際競争力を付けられるわけではない。
特に製造業がグローバルコンペティションを勝ち抜くために強化すべき競争力としては、「新製品開発に必要な競争力」と「製造現場で作り出す競争力」の二つがあげられる。
前者の「新製品開発に必要な競争力」とは、革新的な商品企画力や商品競争力、開発プロセスの効率化などの新製品機能の向上や新サービスの付加価値の創造を実現するための競争力をさす。後者の「製造現場で作り出す競争力」とは、高品質や短納期、コスト削減、サービスの改善など日本のものづくりで基本であり、重視すべき現場の改善力をさす。この中でも特に「品質」という点は、日本製品が海外で好まれる大きな要因の1つであることに注目したい。他に類を見ない品質を提供することが、国際的に強い競争力を生み出すはずではないだろうか。
工程データの収集・分析を改め製造品質を高める
製品の品質というものは、次の4つに分類することができる。
- 要求品質:ユーザーが要求する品質
- 設計品質:設計段階で規定された品質
- 製造品質:実際に製造されたものの品質
- 使用品質:実際に使用された時に発揮される品質

製品の品質を4つに分類した図
コールセンターのスクリプト、そしてSNS上で発信されるつぶやきやクチコミ情報には、ユーザーからのクレーム・要望などの膨大な消費者の声(VOC: Voice of Customer)が埋もれている。それらのデータ"非構造化データ"からニーズに関する価値ある情報を効率的且つ効果的に抽出できれば、競合他社に先んじて売れる製品を市場に投入することができる。
さらにBOM(Bill of Materials)情報や製造・出荷情報と合わせて全体検索を高速に実行できれば、製品の故障やクレームが発生した場合にも迅速な対応が可能となり、顧客満足度を高めつつ保証に関連するコストを最小化できるようになる。また、自動車や情報家電などに車載機や各種センサーを取り付け、実際にユーザーが使用している製品の稼働情報を収集し、製品の不具合の発生要因を突き止めることに活用したり、プロアクティブなサービスをユーザーに提供して、アフターサービスの充実や顧客満足度の向上につなげている企業もある。
しかしここで、新たな品質向上データが見直されてきている。それが、製造品質を高めるための情報「工程データ」である。とは言え、製造業においてこれまで工程でデータ収集をしてこなかったかというと、そういうわけではない。問題は、データを適切に収集し、有効活用できていなかったということにある。
品質向上のために工程データを集めようと思っても、システム性能の限界から、工場内の製造/搬送装置/ロボットや空調設備から常時発生する膨大なプロセスデータをリアルタイムに収集・処理することが困難であった。実際の製造現場では、「10分間隔で集める」「特定のデータ項目は集めない」などの時間やデータ項目に関する"間引き"や、生のデータを統計処理して「平均値」や「標準偏差」などの代表値化を行ってデータ処理しているケースがほとんどである。
対して、代表値化されていない生のデータをリアルタイムに監視できるようになれば、異常検知をさらに早め、異常発生の予兆すら検知できるようになると同時に、データを長期間保持することが可能となれば、より高精度な分析や統計解析が可能となり、問題が発覚した場合の早期解決が図れるようになる。
つまり、品質に関するデータを局所的にしか把握できず、分析しても問題の本質を見極められない現状から抜け出し、生産工程で生じるデータを漏れなく収集し、短期間で分析結果を出力して品質向上に結び付ける強力な情報活用基盤が必要である。
複雑かつ膨大な工程データを
高速かつ統合的に分析できる情報活用基盤
オラクルは、生産や販売・サポートまでを含む、多種多様なビックデータを活用する、Oracle Engineered Systemsによる次世代の情報活用基盤を提供している。
多様なビッグデータを効果的に蓄積・管理する「Oracle Big Data Appliance」をはじめ、メールやSNSを含む多様な形式の非構造化データと各種業務システムに格納されている構造化データから効率的に有意義なデータを探索する「Oracle Endeca Information Discovery」、異機種間のリアルタイムなデータ連携を行う「Oracle GoldenGate」、データの統計解析やデータ・マイニングを高速で行う「Oracle Advanced Analytics」といった構成要素があるが、前述したような品質管理における課題を解決するプラットフォームとして特に紹介したいのが、高速な分析基盤を実現する「Oracle Exadata」と「Oracle Exalytics」である。
「Oracle Exadata」と「Oracle Exalytics」は、同社の持つさまざまなハードウェア/ソフトウェアを最適な形で一体化した垂直統合型のOracle Engineered Systemsである。個々の要素の高性能化だけでなく、全体的な処理性能の向上を目指して、ハードウェア/ソフトウェアの双方から、従来のシステムのボトルネックになるディスクI/Oなどを徹底的に排除した高速な情報活用基盤だ。

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製造プロセスで重要な課題の1つとして"歩留まりの改善"があげられる。歩留まりを改善するためには、不良の原因となる工程や装置を早い段階で突き止めることが必要だ。そこで、工程データを詳細に分析し、統計処理によって不良を検知・予測する仕組みが重要となる。この精度を向上させるためには、各工程ごとにマシン/プロセスデータ、検査データを収集し、網羅的かつ精細な分析を行わなければならない。
しかし、工程が複雑になればなるほど、各システムから収集されるデータは膨大になり、分析にも長時間かかることになる。従来のシステムでは、あまりにデータが多すぎて、一定間隔で間引いたり、平均化されたものを保存したりして、正確な問題点や課題にたどり着くことができないというケースも多かった。
また、製造業のグローバル化にともない、新興国など海外を含めた複数拠点に工場を展開し、現地の生産拠点ごとに生産管理システムなどが導入された結果、グローバル全体の工場の稼働状況や工程内仕掛在庫などの把握が困難になっているケースがある。さらに、販売した製品の不具合がどの生産工場のどの工程で発生しているのかといった原因分析などのトレサビリティも重要視されている。
このような課題を解決する方法の1つとして、複数拠点のリアルタイムなデータの収集とデータの長期保存があげられる。特に、トレサビリティを実現するためには、長期間にわたって膨大なデータを取得し、高速に分析する情報活用基盤が必要となる。
実際、工場の生産設備から集めた工程データを分析することで製造品質を高めたり、あるいは散在する製造拠点の生産データを集約・可視化することで、グローバル需要変動に即した生産計画やトレサビリティを実現している2つのグローバル製造業の取り組みを、ご紹介しているホワイトペーパ「パラダイムシフトの渦中にある日本の製造業--ICTを駆使しビッグデータ を活用!これが逆襲のシナリオだ 」を公開している。ぜひ一度目を通してみることをお勧めする。