レポート:トヨタ自動車の細川氏、電通国際情報サービスの福山氏が登壇。IoTプラットフォーム市場で存在感を発揮するPTCのイベントをレポート!

リアルとバーチャルを融合したクルマづくりを進める
トヨタ自動車

 ユーザー講演には、トヨタ自動車 エンジニアリングIT部長の細川 昌宏氏が登壇。「エンジニアリングチェーンにおけるIoT活用の取り組み」と題して、同社のエンジニアリングIT部門がIoTをはじめとする新しい技術に対し、どう取り組んでいるかを解説した。

細川 昌宏氏
トヨタ自動車
エンジニアリングIT部長
細川 昌宏氏

 トヨタにおけるITの活用領域は、経営から自動車の品質管理、車内IT、安全管理、テレマティクス、顧客サービスなど、あらゆる領域に及んでいる。ITがクルマの研究開発から生産販売までをサポートしている状況だ。そのなかで、エンジニアリングITが担うのは、車両開発や生産技術(生技)系の業務改革支援、システム企画開発だ。

 同社にはこのほかのIT関連部署として、ITマネジメント部、コーポレートIT部、エンジニアリング情報管理部、情報セキュリティ推進室、IT革新推進室がある。システム数は828に及びこのうち約500システムがエンジニアリングIT関連だ。細川氏は、IT革新推進室の室長も兼務しており、クルマ開発の根幹と将来のITを担っている。

 細川氏はまず、エンジニアリングITを取り巻く環境について「システム運用やオフィスIT,セキュリティなどの従来の延長線上にある活動にくわえ、自動運転や工場IoE、デジタルマーケ、ビッグデータ、AIといった将来に向けた活動の両方に取り組みが重要になってきました」と指摘。なかでもエンジニアリングITとしては、従来の「メカ中心のクルマ開発」から、「ソフト(モデル・制御)を用いたクルマ開発」「リアルとバーチャルを融合したクルマづくり」が求められると話した。

 メカ中心のクルマ開発として取り組んでいるのが、新しいPDM(プロダクトデータ管理)の活用を通じた業務改革だ。設計から生技、工場、実験などでデジタルデータを共有し、人材育成と生産性向上を図っている。具体的には、1台分の車両情報を車種、仕様、部品構成、形状、製造プロセス、設備などを共有する基盤を構築。設計・生技で協業し、サプライヤーが直接情報に接続できるようにしている。

 「全社情報高度化に向けて品番.comというサービスを提供しています。サイロ化による情報の連携不足を解消するとともに、情報を整流化し、全社の働き方を変革して付加価値業務にシフトできるようにしています」(細川氏)

トヨタ生産方式に沿ったデータ収集・分析・問題解決

 また、将来に向けたソフト(モデル・制御)を用いたクルマ開発としては、データ解析・シミュレーションにより、車両開発全体の業務を支え、高度化する「高度制御支援(制御・システム・エンジニアリング)」がある。モデルベース開発を取り入れ、企画から車両全体のシミュレーション、メカ・制御連携のシミュレーション、実車の走行データなどからビッグデータ解析を行っていく。

 「将来的には、メカ・ソフト・実車・ヒトが連携し、クルマの知能化、クルマの価値アップにITが寄与していくことを想定しています。ソフトウェアをチューニングすることで、お客様ひとりひとりの嗜好に合わせた"個性"を個々の車に持たせることもできると考えています」(細川氏)

 例えば、同じ車種でも、燃費優先型、難路走破性能アップ型、安全性優先型などをセッティングし、いつでも変更するなどして、もっと楽しめるクルマに進化していくといったことだ。こうした世界に向けて、技術部はさらにコンピューティングリソースを消費するようになり、自動運転に向けた技術開発を支える環境整備も加速している状況だという。

 将来に向けてのもう1つの活動としては、リアルとバーチャルを融合したクルマづくりがある。デジタルデータとリアルデータ、デジタルファクトリとリアルファクトリを融合して、生産技術革新を支援していくという取り組みだ。

 講演では、新車開発における生産のなかでも、機械加工と組付けの工程において、どのようにしてリアルとバーチャルの融合を行っているかを「工場IoT」の事例として紹介した。エンジン部品加工設備では、稼働率の向上を図るために、工具設定や加工精度、設備切削負荷などの情報を分析、CADデータ上で現象を再現させて、故障の原因特定につなげている。

 IoTやビッグデータ分析では、しばしばデータをとにかく溜め込んで、いつでも分析できるようにするといったことが行われる。これに対し、トヨタ生産方式に沿ったデータ収集・分析・問題解決では「必要なモノを、必要なときに、必要なだけ」行う。

 「機械学習は魔法の箱ではなく、問題解決の手法の1つです。大事なのはPDCAサイクルをまわすことです。現場を巻き込みながら、トヨタ生産方式の心を持ったトヨタらしいIoTを進めています。ムダをなくし、安心して活用できる環境・プロセスを構築するには、つなぐためのプラットフォーム、必要な因子を見極める知見や手法が大切です」(細川氏)

 最後に「もっといい工場づくりのために、業界が協力して標準的な枠組みや仕組みを作っていきたい」と訴え、講演を締めくくった。

電通国際情報サービスが、IoTやAIの事例を紹介

 続いて、ビジネスパートナー講演として、電通国際情報サービス(ISID)の取締役副社長執行役員 福山 章弘氏が登壇。「Connected な未来を!〜Connected Industriesに向けたIoT/リアルデータの活用〜」と題して、IoTやAIなどのテクノロジーの動向やISIDの取り組みを紹介した。

福山 章弘氏
電通国際情報サービス(ISID)
取締役副社長執行役員
福山 章弘氏

 福山氏はまず、2017年3月に日独が採択したハノーバー宣言や経産省が公表した「新産業構造ビジョン」に触れながら、「AI、IoT、ロボットなどの共通基盤技術に、運転制御や生産管理などの産業のコア技術、データを組み合わせることで革新的な製品やサービスを生み出す取り組みが加速しています」と現在の動向を紹介した。

 そうしたなかで、ISIDが力を入れて取り組んでいるものの1つがIoT/リアルデータの活用だ。なかでも「故障予知保全」では、米国の産学連携プログラム「IMS Center」やシンシナティ大学のジェイ・リー教授らと連携しながら取り組みを進めており、これまでに、小松製作所や新日鉄住金への適用事例がある。

 また、AIについては、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)と取り組んでいる大規模データ解析サービスの事例を紹介した。従来のAIはなぜその答えを導いたか「理由」を説明できない。ソニーCSLと進める「CALC」という分析では、理由を説明することで、多変数の関係性をように理解したり、企業の意思決定を支援したりできるというものだ。

 このほか、福山氏は、サイバーセキリュティや農業IoT、ブロックチェーンを活用したトレーサビリティなどの取り組みを紹介。「PTCとともに、ビジネストランスフォーメーションを支援するICTサービスを提供していきます」と意気込みを語った。

 IoTに代表されるように、ものづくりとことづくり、リアルとデジタルの融合が加速している。そんななか開催されたPTC Forumは、今後、企業がどういった方向に進めばいいのかのヒントを与えるものとなった。

インフォメーション
提供:PTCジャパン株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2018年4月30日
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