体験したから見えてくる── OpenStackの検証・選定 「ここがポイント」

実運用を意識したPoCを展開

 フリービットが2候補に対するPoCを始動させたのは2015年9月のこと。検証のために本番環境で使うのと同じハードウェア(サーバ、ストレージ)を調達、そのハードウェア環境上で導入候補の「機能性」と「運用性」、「耐障害性」を検証した。

 これら3つのカテゴリーにおけるチェック項目は合計で286項目に及ぶ。「ただし、全項目のチェックを網羅的に行うことにそれほど重きを置きませんでした。それよりも、実運用時にどれだけ手間をかけずに済むか、我々がやりたいことをどれだけカバーできるかの検証に力を注ぎました」と、井口氏は語り、次のように説明を加える。

 「286のチェック項目の中には、絶対に満たしてほしいコア要件と、そうではない非コア要件があります。例えば、ログローテーション機能などは、製品でサポートされていなくても我々で簡単に作り込むことが可能で、非コア要件となります。逆に、当社のサービスネットワークを構築するうえで不可欠な機能はコア要件となります。こうしたコアと非コアの要件を区別して評価点に変化をつけ、総合ポイントを割り出していきました」

 では、導入候補2製品の検証結果はどうだったのか──。井口氏によれば、機能性には大差はなかったものの、「耐障害性に関して差が見られた」という。

 例えば、井口氏らは、3重化したコントローラノードが1台ダウンした場合と、2台ダウンした場合、さらにすべてがダウンした場合を想定し、2候補の動きを検証した。結果、RHOSPではサーバノードの再起動によって自動的に元の3重コントローラの状態を回復させたが、もう一方の候補は手動で元の構成に戻す必要があったという。

 「実際の運用では、運用スタッフの少ない夜間に障害が起きる可能性があります。そう考えれば、自動的に元の状態を回復させる機能があるに越したことはなく、その点でRHOSPのほうが優れていると言えたのです」

“非互換”問題にも対応

 フリービットが、PoC検証に使用したサーバ環境は、「ディレクターサーバ」1台、「コントローラノード」3台、「コンピュートノード」2台の計6台のサーバから成り、RHOSP選定後、このPoC環境をそのまま本番環境として利用している。

 「PoC用に6台のサーバを導入するというのは"リスキー"、あるいは"贅沢すぎる"と思われるかもしれません。ただ、OpenStackは数十台・数百台規模のノードをオーケストレーションするための仕組みです。その動作を検証しようとすれば最低でも6台のサーバがどうしても必要になります。また我々はOpenStackでインフラを革新する覚悟を決めていました。ですから、この程度の金銭的なリスクを背負うのは当然と考えていましたし、我々が用意したPoC環境で動かないディストリビューションは、たとえ機能的に優れていたとしても採用しない方針を固めていたのです」(井口氏)。

 前述したとおり、フリービットでは机上選択の段階で、利用するハードウェアとOpenStackディストリビューションとの互換性はひととおり確認していたが、RHOSPのPoC検証の段階で"非互換"の問題に直面したという。具体的には、PoC環境のストレージで幾つかの機能が動作しなかったのである。

 「本番環境を想定したPoC環境を利用することによって、このような問題に対して検証段階から対応を行うことができます。今回のケースでは、ストレージベンダーとレッドハットに問題解決の協力を要請し対応を頂きました」と、井口氏は振り返る。

 レッドハットとストレージベンダーの技術支援によって、非互換問題は解決されたものの、「この経験を通じて、OpenStackのディストリビューションを使う際には、ハードウェアとの互換性を慎重に確認する必要があると強く感じました。ストレージベンダーが迅速にRHOSPの認定を取得してくれたこともあり、現在は全ての機能が問題なく動作しています」と井口氏は語り、こう付け加える。

 「OpenStackの進化のスピードが速く、ハードウェアがそれに追随するには多少の時間がかかります。ですから、OpenStackの最新ディストリビューションを用いたり、ディストリビューションのバージョンアップを行ったりすると、我々のようにハードウェアとの非互換の問題に悩まされることがあるのです」

認定ハードウェアの豊富さが生きる

 こうしたリスクを回避するには、ディストリビューターのOpenStack互換認定を受けているハードウェアを選択するのが最も安全な方法だ。

 「希望する3rdパーティ製品がOpenStackの特定バージョンとの組合せで正常動作するかどうかは、OpenStackでよくある悩みの1つなので、レッドハッドではネットワーク製品やストレージ製品等に対してテストスイートを用意し認定を行っています。その意味でも、認定ハードウェアや認定ソフトウェアの種類・数の多さは、OpenStackディストリビューションの大きな差別化ポイントと言えます。レッドハットのRHOSPは、OpenStackディストリビューションの中で最も認定ハードウェア/ソフトウェアが豊富な製品です。そのため、お客様は、さまざまなベンダーの製品を組み合わせて利用することができるのです」と、レッドハットのテクニカル・セールス本部 シニアソリューションアーキテクト OpenStackチームリードの内藤聡氏は言う。

 この言葉を受けたかたちで、同じくレッドハットのエンタープライズ営業統括本部 第3営業本部 セールスマネージャー、亀田和大氏はこう続ける。

 「レッドハッドはLinux時代から各種認定を行ってきました。ですから、OpenStackに関する互換認定の作業においても、ベンダー各社との協業も既に実績がある上で広く協力を得られていますし、たとえ互換性の問題が発生しても、各ベンダーとともに問題解決に当たる能力が十分に備わっています。この辺りは、レッドハットならではの強みと考えています」

 さらに、レッドハットではRHSOP検証用の環境を用意しており、その設備を借りることで、より少ない投資でOpenStackのPoC検証を行うこともできる。

 「これによってお客様は、PoC環境そのものではなく、OpenStack技術者の育成など、人への投資により多くの資金を投じることが可能になると考えています」(内藤氏)。

実運用でつかんだ教訓

提供:レッドハット株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2017年3月31日
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