「コンテナ×OpenStack」で エンタープライズITに圧倒的な俊敏性を

コンテナ技術はエンタープライズITの中核に

 ヘルマン氏の説明からもわかるとおり、コンテナはアプリケーションとその稼働環境を一体化させたもので、論理的にはオンプレミスの物理ITインフラや仮想化環境、パブリッククラウドなど、どのようなプラットフォーム上でも動作させることが可能だ。「そのため、コンテナは、マルチクラウドの環境やハイブリッドの環境上で分散アプリケーションの環境をかたち作るテクノロジーとして非常に有効であり、これからのエンタープライズITの中核を担う技術と見なせるのです」(ヘルマン氏)。

 もっとも、マルチクラウドやハイブリッドの環境にコンテナを展開し、運用していくには、コンテナとその動作環境を一括して管理する仕組み──つまりは、コンテナのオーケストレーションを実現する仕組みが必要になる。そうしたオーケストレーションの仕組みを備えた分散アプリケーション(クラウドアプリケーション)管理のフレームワークとして、レッドハットは「Red Hat OpenShift Container Platform」を提供している(図3参照)。

図3:OpenShiftのイメージ図3:OpenShiftのイメージ
※クリックすると拡大画像が見られます

 同プラットフォームは、「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」と、オープンソースのコンテナオーケストレーション基盤「Kubernetes」、さらには、「Docker」コンテナなどをベースにした仕組みだ。このうちKubernetesは、グーグルが開発したコンテナクラスタの管理基盤で、クラスタ管理の仕組みのほか、ソフトウェアの動作に必要な機能をまとめ上げるアプリケーションコンポーザや、アプリケーションデプロイのスケジューリング/ワークフロー管理、コンテナの(ステータスの)モニタリング、さらには、コンテナとネットワーク/ストレージ/コンピューティングの各リソースを接続する仕組みなどを包含している。

 グーグルでは数十億にも及ぶコンテナの管理にこの基盤を利用しており、レッドハットは、オープンソースのKubernetesプロジェクトで主導的な立場にあるとヘルマン氏は説明を加える。また、OpenShiftには、アプリケーション開発を支援する環境が統合化されているのに加えて、アプリケーションのソースコードが変更された際に自動的にリビルド/リデプロイを実行するデプロイオートメーションの機能も備わっている。さらに、OpenShiftを使えば、コンテナにセキュリティパッチ(脆弱性問題を解決する修正プログラム)を適用するプロセスも効率化されるという。

トヨタの生産方式をエンタープライズITの世界へ

 レッドハットでは、このOpenShiftとOpenStackとを組み合わせて利用することを推奨しており、両者を統合化したプラットフォームを「Red Hat Cloud Suite」として提供している。その根底にある考え方は、OpenStackを「Software Defined(ソフトウェア定義)のインフラファブリック」として用い、その上でコンテナを走らせるというものだ。


※クリックすると拡大画像が見られます
  • Heat:OpenStackのオーケストレーションサービスで、複数のVMインスタンスから成る環境を自動的に構築する仕組み。レッドハットのHeatテンプレートを用いることで、コンテナのプロビジョニングが効率化・自動化される
  • Neutron:OpenShiftが管理するコンテナのクラスタノードにフローティングIPを提供、負荷を分散させる
  • Cinder:コンテナのマスター、ノード、およびレジストリ用のストレージサービスを提供
  • Designate、Octavia、Manila:将来的に統合化を予定

 「コンテナを物理的なITインフラ上で直接動作させることは可能ですが、それでは、コンテナに対するITリソースの提供とその運用に多くの手間がかかります。ですから、OpenStackというITリソースを抽象化する仮想化レイアの上でコンテナを運用するのが、最も効率的で理にかなったソリューションと言えるのです」(ヘルマン氏)。

 もちろん、OpenShiftとOpenStackの採用は、ITプラットフォームのアーキテクチャのドラスティックな変更を意味し、それは開発と運用のプロセス、そしてIT組織の変化を求めるものでもあると、ヘルマン氏は指摘する。

 「OpenShiftとOpenStackの採用は、ITプラットフォームのあり方を再定義するのに等しい変革です。この変化によって、IT部門は、OpenShiftを使って分散アプリケーションの運用管理を行うチームと、OpenStackを使いながら物理インフラや仮想化基盤などの運用管理を担っていくチーム、そして開発チームの3つに分かれ、それぞれが自律性と責任を持ちながら協調してミッションをこなしていかなければなりません」

図4:OpenShiftとOpenStackによるITプラットフォームの再定義図4:OpenShiftとOpenStackによるITプラットフォームの再定義
※クリックすると拡大画像が見られます

 言うまでもなく、これは決して小さな変化ではない。ただし、この変革により、コンテナ採用による標準化と自動化の恩恵がすべてのチームに等しくもたらされ、それがIT、さらにはビジネスの俊敏性向上へとつながっていくと、ヘルマン氏は説き、こう話を締めくくる。

 「コンテナの採用は、トヨタのジャストインタイムの生産方式をエンタープライズITの世界に持ち込むのと同じことと言えます。実際、コンテナによってITプラットフォームの標準化と自動化、そしてモジュール化が進み、その環境の中で、開発と運用の各プロセスの担当者が一体となって動くことで、"生産"における待ち時間が極小化され、すべての無駄が一掃されていきます。各チームが責任を持って協調して動くというのは日本の組織が得意とする領域です。その意味でも、コンテナの採用は、ITとビジネスの圧倒的な俊敏性によって競争優位を確保したいと考える日本企業にとって、きわめて有効な手法と見なせるのです」

インフォメーション
提供:レッドハット株式会社
[PR]企画・制作 朝日インタラクティブ株式会社 営業部  掲載内容有効期限:2017年5月9日
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]