データ分析の前提となる「5W2H」とは?
では、冒頭に挙げた小売店の売上データから数字のメカニズムを見いだすにはどうすればいいのだろうか。辻氏は、「5W2H」で分析するとさまざまなことが見えてくると語る。
5W2Hとは、「Who(誰が)」「When(いつ)」「Where(どこで)」「What(何を)」「Why(なぜ)」「How(どうやって)」「How much(どれだけ)」という項目のこと。具体的には、売上の落ちた小売店の顧客はどのような年齢層でどんな職業なのか、いつ頃どの店舗に来店して何を購入しているのか、売上が落ちたのはいつからなのか、全国的な傾向なのかそれとも特定の地域だけの現象なのか、といった内容だ。
「因果関係にたどり着くまでには立証すべきステップが数多く存在する。さまざまな切り口で検証しつつ、本当の因果関係を探り出さなくてはならない」(辻氏)
実は、企業が扱っている生データは機械が自動的にはき出しており、管理するためのデータではあるものの分析には使いにくいケースがほとんどだという。それは「5W2Hという軸で整理されていないためだ」と辻氏は説明。分析するには、分析目的に合わせてデータを整えた分析データマートが必要になるのだという。

「データの加工には非常に手間がかかるが、単に生データを分析するだけではいくら因果関係を解明しようとしても結果にはたどり着かない。単なるデータを情報に加工ができるかどうかが分析プロジェクトの鍵となり、加工できないままだと帳票を見るだけで終わってしまう。帳票レベルで見えるのは相関関係だけで、因果関係まで至らず真の原因がつかめないことが多い」と辻氏はアドバイスする。
対策立案から評価まで
こうして売上が下がったという現状を把握し、5W2Hで無事その要因が解析できれば、次は対策を立案する段階に入る。
例えば、対策としてターゲットを絞りキャンペーンを打つことにしたとしよう。ここでは、データマイニングやクラスタリングが必要となる。ターゲット層の洗い出しや、そのターゲットにアピールする方法を探るためだ。費用対効果も考え、チラシがいいのかメールがいいのかを検討する必要もある。もちろん、メールキャンペーンをしたくても、メール登録の会員数が少なくては意味がない。さまざまな仮説を立てて効果のある方法を探り出し、キャンペーンを実施するのだ。
対策立案の段階ではすべてが仮説に過ぎない。つまり、キャンペーンの効果が測定できるような計画でなくては意味がないのだ。特定の商品の購入履歴がある人とない人ではキャンペーンの反応が違うはずだという仮説を立てたのであれば、その商品の購入履歴とキャンペーンに反応した人物が特定できるよう、POSデータから検証できるようにしておく必要がある。仮説が正しかったかどうか判別できなくては、施策を打っても次に生かせないので注意が必要だ。
ここまでのポイント
- 5W2Hを軸にデータを集約し、因果関係にたどり着け
- 単なる生データの分析では、相関関係どまり
- さまざまな仮説から効果ある方法を探り出す
- 仮説が正しかったのか、検証できる仕組みを