サービスの拡充・更新が続く「PAYCIERGE」
国内のキャッシュレス決済市場が急成長する中、TISが2013年から提供するデジタル決済プラットフォーム「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」を利用したサービスが続々と登場している。PAYCIERGEは、カード業界向けのSI事業を得意とするTISが、長年にわたって蓄積してきた豊富なノウハウと高度な技術力を活用し、キャッシュレス決済の普及を目指して作り上げたリテール決済ソリューションの総合ブランド。ブランド立ち上げから丸7年が経過した今日までの間にキャッシュレス決済を中心とするサービスの拡充・更新が続けられてきた。
現在はデビッドカード、プリペイドカード、クレジットカードの発行に必要な環境をトータルに提供する「プロセッシングサービス」、二次元バーコード決済に対応した「加盟店向けQR決済ゲートウェイサービス」、オリジナルのモバイルウォレットの導入をサポートする「デジタルウォレットサービス」などを提供。2019年には、PAYCIERGEプラットフォームを活用した新しいサービスとして、交通機関や商業施設などのチケットのシームレスな事前購入・利用を実現する「MaaSプラットフォームサービス」について八重山諸島及び沖縄での実証実験を実施。2020年には人事給与システムとデジタルマネーを接続するデジタルマネー給与払いプラットフォーム「Money Quick」の提供も開始予定だ。手軽にデジタル決済が始められるという利便性が高く評価され、例えばPAYCIERGEが提供する「加盟店向けカード決済パッケージ」は、小売店、飲食店など1万5,000店舗以上に導入実績がある。
「PAYCIERGE」の運用業務が抱えていた課題

TIS サービス事業統括本部 ペイメントサービスユニット ペイメントプラットフォームサービス部 エキスパート 関 雄太氏
そんなPAYCIERGEビジネスを展開するTISでは、2018年度から決済プラットフォームの運用高度化を目指した取り組みを進めてきた。
「運用高度化の主たる目的は、ご利用頂くお客様へ安心安全なご利用と共に、我々運用管理を担当する保守要員の業務負荷軽減と働き方改革の実現にあります。PAYCIERGEのサービス全体の稼働状況を可視化し、万一夜間や休日に障害が発生した場合でも、従来の監視アラートレベルに加え、リモートにおいてでも、システムと業務への影響範囲を素早く把握して即座に初動対応できることを目指しました」(TIS サービス事業統括本部 ペイメントサービスユニット ペイメントプラットフォームサービス部 エキスパート 関 雄太氏)
関氏によると、PAYCIERGEのプラットフォームは複雑なシステム構成になっており、障害発生時にはアプリやミドルウェアの専門家が調査・分析を行わなければならず、状況把握に時間を要するという課題があったという。夜間や休日には、発生した障害の詳細情報や業務影響を確認するため出社駆け付けによるSE保守が必須であった。その際、幸いにも誤報であるなどのケースもあるが、システムを保守運用する現場では常に緊張感を持って運用しなければいけない状況である。決済システムは、24時間365日が当たり前の世界であるゆえ、保守要員の業務負荷が高く、生産性低下やモチベーション低下にも繋がる課題となっていた。
運用高度化を目指し「Elastic Stack」を採用
こうした課題を解決するには、各サービスの多種多様なログデータを集約して可視化し、稼働状況を誰もがすぐに把握できるようにして運用レベルの向上を図る必要があった。そこで目を付けたのが、オープンソースベースのデータ収集・分析ツール「Elastic Stack」だった。
「PAYCIERGEのプラットフォームは、オープンソースや様々なベンダー製品の組み合わせによって構成されています。また、オープン系のシステムだけでなく基幹系を含めたマルチプラットフォームに対応する必要があります。そうしたログデータを集約して可視化するツールとして注目したのが、Elastic Stackでした」(関氏)

TIS サービス事業統括本部 ペイメントサービスユニット ペイメントプラットフォームサービス部 主査 岩永晃一氏
Elastic Stackは、マルチテナント対応検索エンジンの「Elasticsearch」、データ視覚化ダッシュボードの「Kibana」、データシッパー(転送ツール)の「Beats」、データ収集パイプラインの「Logstash」からなる製品群。PAYCIERGEでは、サービスを利用する個社環境のログデータをセキュアな領域に用意した共通環境に転送・集約し、サービス稼働状況を可視化するところに使われている。保守要員は所定の許可された環境を利用して可視化された内容を確認できるという仕組みだ。
「Elastic Stackは、多くの種類のスキーマやデータ型に対応するなど適用範囲が広く、高度な分析をリアルタイムに処理できるという特長があります。また、専門的な知識がなくてもノンコーディングで設定できる容易さを備え、専門家でなくても稼働状況を把握できるので、保守要員の属人化を排除することも可能です。これらの優位性からElastic Stackを採用しました」(TIS サービス事業統括本部 ペイメントサービスユニット ペイメントプラットフォームサービス部 主査 岩永晃一氏)

図:Elastic Stackによるサービス稼働状況の可視化