OKI、世界初、毎秒40ギガビットの光位相同期型コヒーレント光通信技術を開発

JCN株式会社

2010-08-23 10:00

Tokyo, Aug 23, 2010 - (JCN Newswire) - OKI(TSE:6703)は、次世代の光通信の高速化技術として有望視されつつも実用化が困難といわれてきた、コヒーレント光通信向け光位相同期技術の開発に成功しました。
Tokyo, Aug 23, 2010 - (JCN Newswire) - OKI(TSE:6703)は、次世代の光通信の高速化技術として有望視されつつも実用化が困難といわれてきた、コヒーレント光通信(注1)向け光位相同期技術(注2)の開発に成功しました。本技術を採用して試作した毎秒40ギガビットの受信機にて、世界で初めて2値位相変調信号(注3)の安定したコヒーレント受信を実現しています。本技術では、光信号を電気信号に変換する必要がないため、近年注目されているデジタルコヒーレント受信方式と比較して、受信機の消費電力を約1/10に削減できるほか、ネットワークの遅延も減少します。


現状のネットワーク容量増加傾向に基づくと、2025年にはネットワーク機器の消費電力が現状13倍に達すると予測されており(注4)、ネットワーク機器の消費電力効率を大幅に向上させるための技術開発が、将来のIT社会の発展と環境保全との両立のために急務となっています。本技術は、このネットワークのグリーン化に貢献します。なお、本技術開発の一部は、独立行政法人情報通信研究機構からの委託研究「λユーティリティ技術の研究開発」によるものです。


一般に、位相変調方式に基づくコヒーレント光通信方式は、現在広く用いられている強度変調方式(注5)に比較して帯域の有効利用が可能であるため、2020年頃に必要となることが予想される毎秒100テラビット級光ネットワーク(1秒間にブルーレイディスク500枚分相当のデータ送受信を可能にする)への適用が有望視されています。光位相同期技術は、光信号搬送波(注6)を高精度で再生可能な技術であり、コヒーレント光信号の有力なデータ復調手段の一つとされています。


コヒーレント光通信方式は、1980年代から精力的に研究が実施されており、光搬送波の位相にデータを重畳した光位相変調信号を用いています。このため、受信側において検波が可能な強度変調信号に変換するデータ復調技術が必要となります。近年では、デジタル電気信号処理技術により復調処理を可能にするデジタルコヒーレント受信方式が脚光を浴びていますが、消費電力の削減、リアルタイム処理を行うための技術開発など、解決すべき課題も残されています。


それに対し、光位相同期技術は、フィードバック制御に基づいた光信号処理技術であり、省電力かつリアルタイム性に優れた復調技術です。したがって、リアルタイム性が強く要求される遠隔医療アプリケーションや超大容量動画など様々なデータ通信が混在し、爆発的に消費電力が増加する次世代ネットワークへの導入に関して有望であると考えられています。しかしながら、光信号の搬送波周波数が高く(FM放送波の約2百万倍)、周波数不安定性が大きい(1秒あたりで高精度高周波発振器の10倍~1,000倍)ため、実用化が難しいとされてきました。


今回OKIは、これまで、実用化の阻害要因となっていた光位相変調信号及び局部発振光の周波数不安定性を克服する手段として、光注入モード同期半導体レーザ(注7)を局部発振器(注8)として用いました。光注入モード同期半導体レーザは、外部より入力した光信号と同一の周波数を有する光信号を出力する特性があります。これを応用することにより、光位相変調信号と局部発振器の搬送波周波数を常に一致させることが可能になり、周波数変動に影響されない堅牢な復調処理を実現しました。さらに、非線形システム理論に基づく新たな設計手法を導入することにより、各構成電気デバイスの性能を十分に活かしきることが可能となり、電気デバイス選択の自由度が広がりました。


今回の研究で試作した毎秒40ギガビットの光位相同期型コヒーレントホモダイン受信機(注9)は、今後さらに高速となる光信号への適用が可能です。今後は装置の集積回路化などにより小型化を促進し、現在商用化に向けて開発が進んでいる毎秒100ギガビット級の伝送速度を持つ規格への適用を念頭に置き、2015年を目処に実用化を目指します。さらに、本光位相同期技術は、光の位相状態を高精度に検出することも可能であるため、通信のみならず、光センシングやイメージング分野への適用にも有望だと考えています。


(注1)コヒーレント光通信
光の波としての性質を利用して光の周波数や位相に送信すべきデータを重畳して伝送する方式。
(注2)光位相同期技術
コヒーレント信号の検出を可能にする要素技術。約200THzに及ぶ2つの光搬送波の位相を高精度に一致させるフィードバック制御技術。これまで、実用化が難しいとされていた。
(注3)位相変調信号
“0”、“1”のデジタルデータを信号のON/OFFで表現する強度変調ではなく、“0”、“1”に対応する位相シフト(例えば、0°、180°)を搬送波に施すことによりデータを重畳する変調方式。
(注4)ネットワーク機器の消費電力予測
経済産業省の「グリーンITイニシアティブ」による予測。
(注5)強度変調信号
“0”、“1”のデジタルデータを信号のON/OFFで表現する変調方式。
(注6)搬送波
データ信号を運ぶための波(媒体)。
(注7)光注入モード同期半導体レーザ
モード同期半導体レーザは、連続光ではなく光パルスを出力する半導体レーザの一種。モード同期半導体レーザに、外部から別のレーザ光を入力すると、発振周波数等の入力光搬送波の特性をコピーした光パルスを出力する。
(注8)局部発振器
ある信号を生成する発振回路或いは光源であり、その信号を使って混合器で入力信号の周波数を変換する。
(注9)ホモダイン受信機
局部発振器と入力信号の周波数の差となるビートが生成され、このビートからデータを検出することが可能となる。これをヘテロダイン受信と呼ぶ。ホモダイン受信では、局部発振器と入力信号の周波数が同一であるため、ビートが直流成分となる。


概要: 沖電気工業株式会社
OKIは米国でグラハム・ベルが電話機を発明したわずか5年後の1881年に創業した、日本で最初に電話機を製造した情報通信機器メーカーです。先見性と勇気をもって果敢に挑戦・行動するという、創業以来の「進取の精神」を連綿と受け継ぎ、ブランドスローガン「Open up your dreams」のもと事業展開しています。現在、「金融システム」「通信システム」「情報システム」「プリンタ」「電子部品・モジュール他」の5つの分野において、OKIグループは社会の発展に寄与する最先端技術の商品・サービスをお客様にお届けし、世界の人々の快適で豊かな生活の実現に貢献しています。詳細はこちらからご覧ください。 (リンク »)


本件に関する報道機関からのお問い合わせ先
OKI広報部 田中
電話: 03-5403-1247
e-mail: press@oki.com


本件に関するお客様からのお問い合わせ先
研究開発センタ コアテクノロジーラボラトリ
電話: 048-431-5489
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