株式会社タカラトミー
特定非営利法人東京学芸大こども未来研究所
リカちゃん「ごっこ遊びラボ」通信 最終調査報告
「リカちゃん」人形による「ごっこ遊び」の3つの仮説検証結果が明らかに!
「リカちゃん」をはじめとした人形による「ごっこ遊び」が
協調性や社会性の獲得、将来像の獲得などに寄与!
株式会社タカラトミー(本社:東京都葛飾区、代表取締役社長:富山 幹太郎)と、特定非営利法人東京学芸大こども未来研究所(所在地:東京都小金井市、理事長:松田恵示)は、2012年3月より共同研究プロジェクト「リカちゃん ごっこ遊びラボ」を発足し、「リカちゃん」人形による「ごっこ遊び」の子どもの発達への影響や効果の調査・研究を行っています。
前回レポートでは、定性調査(女児のごっこ遊びへの参与調査、母親インタビュー調査)の結果をご報告致しましたが、本レポートでは、小学校高学年・中学生女子への振り返り調査(定量調査)結果をご報告します。定性調査と同様に、リカちゃん人形によるごっこ遊びが子どもの様々な能力獲得に寄与していることが改めて明らかになりました。
<調査結果のポイント>
今回の調査では、定性調査同様、子どもの発達段階における下記3つの能力に「リカちゃん」人形を使ったごっこ遊びが効果をもらたすことが検証されました。
■3つの仮説検証結果
(1)自己認識、他者認識能力の獲得
・「リカちゃんのママ」等、複数の人形を所有している子の方が、自己をしっかり認識すると同時に、他者の視点を獲得している。自分とは違う立場の役割遊びを通じて、自分のことも周りのことも見えるようになりやすい。
(2)他者との関係性構築能力・社会性の獲得
・「リカちゃん」を所有して深く遊んだ子の方が協調性が高い。「リカちゃん」を身近に持つことが他者との関係性構築につながっている。
・「リカちゃん」1体だけでなく、家族などのリカちゃん関連人形を複数体所有して違う役割を演じて遊ぶことが「社会性」の獲得に寄与している。
・ 「リカちゃん」に代表される「人形でのごっこ遊び」は多様な種類を経験し、多くの役割遊びをすることがリーダーシップなど、実際の生活上の役割意識の獲得につながりやすい。
(3)なりたい自分像・将来像の獲得
・「リカちゃん」で遊んだ経験のある子は、そうでない子より将来像やなりたい自分像を明確に持ちやすい。
*詳細結果は、特徴的な傾向から紹介しております。
■調査研究結果を振り返って
東京学芸大学:芸術・スポーツ科学系教授 松田 恵示(リカちゃん ごっこ遊びラボ 所長)
【「ごっこ遊び」の効果に対する仮説】
本プロジェクトでは、こどもの成長過程での「リカちゃん」人形による「ごっこ遊び」の効果を、
(1)自己認識・他者認識能力の獲得
(2)他者との関係性構築能力・社会性の獲得
(3)なりたい自分像・将来像の獲得
とする仮説の検証を目指して調査を進めてきた。
【調査から明らかになったこと】
・リカちゃんで遊んだ経験は、中学生よりも小学生に成長への影響が多く見られる。
・リカちゃんで遊んだ経験のある子どもは、理想像や将来への肯定観を獲得しやすい。
・経験の有無からだけでは、「自我・他我認識」「社会性」の獲得に、リカちゃん遊びが影響を与えているとは言えない。
しかし、遊び方を広げた経験を持てば、「自我・他我認識」「社会性」を獲得しやすい。
・リカちゃんを含めた、多様な人形遊び経験を持つ子どもは、「自我・他我認識」「社会性」「理想像」を獲得しやすい。
・「リカちゃんを持っていた」ことは、ただ遊んだ経験がある以上に、対他意識の獲得に繋がりやすい。
・リカちゃん人形で遊ぶことは、人形に自分を同一化して演じることを通じて、自己を客観視する態度を獲得する傾向にある。
などが明らかになった。
定量調査からは、(3)については検証されたといえる結果を得ており、(1)、(2)については部分的に、そして、複数の人形や多種類の人形で遊ぶなど、遊び方がより契機となって効果が現れるであろうことが明らかになったと言える。
【「ごっこ遊び」に潜在する特性の考察】
ごっこ遊びにみられる「演じる」という遊びは、本来、社会生活においてはそれなしに人間関係を構築できない重要な行為である。人形遊びを通して自発的に子どもたちが「演じる」ことに触れ、創意工夫をこらし、夢中になって楽しむことが、こうした「演じる」という人間関係や、そこから生じる「確かな自分」というものを主体的に形成していくことに繋がる。このような子どもの「遊び」を十分に楽しめる環境を整えることは、一方で社会全体が支えるべき大きな課題となっているといってもよい。
松田 恵示(まつだ けいじ)
東京学芸大学芸術・スポーツ科学系教授。 NPO東京学芸大こども未来研究所理事長。
日本スポーツ社会学会理事・事務局長、日本体育科教育学会常任理事、日本体育・スポーツ政策学会理事。
日本子ども社会学会研究交流委員・編集委員。文部科学省生涯学習調査官、一般社会法人教育支援人材認証協会理事等を歴任。
主な著作は、「おもちゃと遊びのリアル―「おもちゃ王国」の現象学」(世界思想社)、「交叉する身体と遊び―あいまいさの文化社会学」(世界思想社)、「スポーツ文化と教育―人間とスポーツの新たな関わりを求めて」(学校図書出版社)、「『からだ』の社会学」(池井望・菊幸一編・世界思想社)「『たのしみを解剖する』-アミューズメントの基礎理論-」(村上和夫、長田佳久、河東田博編、現代書館)等多数 。
■定量調査による検証結果【詳細】
調査の結果、中学生より小学生の方が有意に差の見られる項目が多かったため、小学生の結果を中心に見ていきます。
仮説の検証ー 仮説(3)<なりたい自分像、将来像の獲得>
まず、3つの仮説のうち、もっとも顕著な傾向が見られた「リカちゃん人形による遊びを通じて『なりたい自分像、将来像を獲得する』」という仮説について検証していきます。
結果1. 「リカちゃん」で遊んだ経験のある子は、そうでない子より自分の将来像やなりたい自分像を明確にしやすい。
「リカちゃん」遊びを経験した子は経験していない子に比べ、「自分の将来は明るいと思う」割合が高く、「χ二乗検定」(独立性検定)による有意差があります。「リカちゃん」を使って自分の理想を演じるごっこ遊びが、生活の中に「夢」をもたらし、明るい将来像の獲得に繋がっていることを示唆する結果です。
また、リカちゃんで遊んだ経験があるほど、「理想の人がいる」割合が高く、また有意差もあり、現実と理想の往復によって遊ばれるリカちゃん人形は、「あこがれ」や「未来」を感覚として育み、「なりたい自分像・将来像の獲得」につながるのだと考えられます。
グラフ1:自分の将来は明るいか
グラフ2:「あんな人になりたい」と思える理想の人はいるか
※PDFのリリース資料参照
仮説の検証 仮説(1)<自己認識・他者認識能力の獲得>
次に、「リカちゃん人形による遊びを通じて『自己認識、他者認識能力を獲得する』」という仮説について検証していきます。
結果2. 「リカちゃんのママ」等を所有している子の方が、自分とは違う立場の役割遊びを通じ、自分のことも周りのことも良く見える子になりやすい。
「リカちゃんのママ」を所有している子は、そうでない子と比べ「自分の考えをはっきり相手に伝えることができる」傾向があります。
それと同時に、「自分の気持ちと違っていても、友達や他の人が求めるキャラを演じることがある」という傾向も、ママを所有している子の方が高いです。 リカちゃんのママでの役割遊びを通じて、子どもたちが「他者の視点」を獲得し、自己を客観視する能力を身に付け、客観視した「自分」を対峙させたり協力することができるようになっていることが分かります。その結果、自分のことも周りのことも良く見える子になりやすいと考えられます。
グラフ3:自分の考えをはっきり相手に伝えることができる
グラフ4:自分の気持ちと違っていても、友達や他の人が求めるキャラを演じることがある
※PDFのリリース資料参照
結果3. 「リカちゃん」遊びで身につける客観性が、自己評価の厳しさにもつながっている。
一方で、リカちゃん遊びが自分に対する厳しさにもつながることが分かりました。
有意な差ではありませんが、リカちゃん人形を持っている子は、持っていない子と比べて自分の性格にどちらかというと不満を持つ傾向にあります。これは、定性調査からも理解されるように、人形に自己を同一化して遊ぶことを通して、自分に対しても同様に客観視する態度が育まれているために、自分に対して「厳しい」評価になるからではないかと考えられます。
グラフ5:自分の性格への満足度
※PDFのリリース資料参照
仮説の検証ー 仮説(2)<他者との関係性構築能力・社会性の獲得>
次に、「リカちゃん人形による遊びを通じて『他者との関係性構築能力や、社会性を獲得する』」という仮説について検証致しました。
結果4. 「リカちゃん」を所有し、より深く遊んでいる子の方が協調性を発揮しやすい。
「リカちゃん」を身近に持つことが、他者との関係性構築につながっている。
「リカちゃん」で遊んだかどうかだけでは有意な差が出ませんでしたが、リカちゃん人形を所有しているかで比べると、所有している子の方がそうでない子に比べ、「周りの意見に合わせることができる」傾向が強いようです。リカちゃん人形を「所有」し、身近におき、深く遊ぶことが、協調性獲得に寄与していることが分かります。
グラフ6:自分の意見よりも、周りに意見を合わせることがある
※PDFのリリース資料参照
結果5. 「リカちゃん」1体だけでなく、家族などの関連人形を複数体所有して遊ぶことが、「社会性」の獲得に寄与している。また、所有する人形によって獲得する能力は様々。
なお、「リカちゃん」関連人形の所有状況と、理想像の有無や性格の傾向について見たところ、リカちゃん以外のほかの人形を用いて複数体で遊ぶ=立場の異なった役割を担うことが、様々な能力や「社会性」の獲得につながっていることが分かります。
例えばママを持つ子は前述の「自他認識」以外にも「人を引っ張る役割」などリーダーシップを獲得しやすい傾向にあります。
他にも、「ボーイフレンド」を所有する子は「考えをはっきり相手に伝えることが出来る」「友達に誘われても自分のしたいことをする」傾向が強く、自主性が強いなど、所有する人形によって、獲得する能力にも違いがあり、大変興味深い結果となっています。
仮説の検証 仮説(2)<他者との関係性構築能力・社会性の獲得>
結果6. 「リカちゃん」に代表される「人形でのごっこ遊び」は、多様な経験をすることがリーダーシップ等、実際の生活上の役割意識の獲得につながりやすい。
ごっこ遊びラボでは、リカちゃんを代表例としてごっこ遊びの効果を検証していますが、視点を広げて「人形でのごっこ遊び」全般について検証すると、多様な種類の人形ブランドで遊んだ経験がある方が「社会性」を獲得し易いことも分かりました。
「リーダーなど人を引っ張っていく役割になることが多い」という回答が、人形遊びをしない子よりも、1種類の人形で遊ぶ子の方が高く、2種類以上の人形で遊ぶ子ではさらに高くなっています。
様々な人形による「ごっこ遊び」が、役割演技の多様さと「他者の視点」の豊富さを体験し、それが子どもの発達に少なからず影響を与えていることが分かりました。
グラフ7:リーダーなど人を引っ張っていく役割になることが多い
※PDFのリリース資料参照
参考:リカちゃん遊びの実態
定性調査により、下記のリカちゃん遊びの実態と行動特性が明らかになっています。
1.6割が「リカちゃん」遊び経験あり。「リカちゃん」はおもちゃ界を代表する人形玩具
・ 調査対象者の約6割(56.2%)が「リカちゃん」人形で遊んだ経験がある。
グラフ8:「リカちゃん」人形での遊び経験
※PDFのリリース資料参照
2.「リカちゃん」は少女の成長の過程に寄り添う
・ 「リカちゃん」遊びは3、4歳から始め、長くて10歳以上まで遊んでいる子も。少女の成長過程に寄り添う玩具であることが分ります。
グラフ9:リカちゃん遊びを始めた時期
グラフ10:リカちゃん遊びをやめた時期
※PDFのリリース資料参照
3.「リカちゃん」遊びは母親から子に伝わる。
・ 「リカちゃん」遊びを教わるのは、「母親」(31.7%)がトップで、母から子に脈々と「リカちゃん」人形遊びが伝わっていることが分かります。
グラフ11:リカちゃん遊びを教わった人
※PDFのリリース資料参照
■調査実施概要
【定量調査】
リカちゃんを含む「人形遊び経験」が、自我や他我認識の形成、社会性の育成にいかなる影響を与えているのかについて、先行して行われた定性調査の結果に基づく仮説検証を通して検討する。
・調査手法:学校での配布による自記入式アンケート(学校単位に配布・回収)
・調査対象者: 東京・兵庫・福岡在住の小学生女子・中学生女子 計628名
・調査期間:平成24年2 月~平成24 年9 月
【定性調査】
ニュースレターVOL2.を参照
(リンク »)
■プロジェクトメンバー
東京学芸大学:
芸術・スポーツ科学系教授 松田 恵示(リカちゃん ごっこ遊びラボ 所長)
芸術・スポーツ科学系准教授 鈴木 聡
総合教育科学系准教授 杉森 伸吉 他
九州共立大学:
スポーツ学部スポーツ学科准教授 松田 広
東京学芸大こども未来研究所:
副理事長 金子嘉宏
チーフマネージャー 坂本史生
マネージャー 高橋真生
アシスタント 田中将太
株式会社タカラトミー:リカちゃんグループ
■特定非営利活動法人 東京学芸大こども未来研究所 について
平成21年設立。日本の教員養成の基幹大学である東京学芸大学とおもちゃのテーマパークを運営する株式会社おもちゃ王国が協働、大学が持つ「知」を、社会に発信していくことを目的として設立。子どもを取り巻く「ひと(人材育成)」「モノ・コト(開発・調査)」、「コミュニケーション(伝達支援)」を軸に事業を展開。東京学芸大学内に実践研究の場として「こどモードハウス」をつくり、遊び、玩具、地域教育に関する研究開発、調査を行っている。
■「リカちゃん」について
1967年に誕生した着せ替え人形「リカちゃん」は、身長22cmで、ドレスやハウスなどを使って「ごっこ遊び」や「おしゃれ遊び」を楽しむことができます。発売当初から年齢や家族、友達などのプロフィール設定がされているのが特徴で、常に時代ごとの流行を取り入れながら親子二世代三世代にわたって愛され続けています。
「リカちゃん基本理念」として「子どもたちが成長する上で大切な“想像力”」「家族や友達とのコミュニケーション力や会話力」「やさしさ・人をいたわり愛する心」などを育んでいけるような商品づくりを目指しています。
年少から小学3年生女児の「リカちゃん」認知率は79.9%、また、その母親世代になると97.9%となり、ほぼすべての人が「リカちゃん」を知っていると回答しました。(2011年11月・タカラトミー調べ)
【リカちゃん公式サイト】 (リンク »)
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