[ジュネーブ・スイス、2016年5月28日]重篤な感染症であるマイセトーマ(Mycetoma:菌腫)がWHOの「顧みられない熱帯病(NTDs)」の公式リストに追加されたことにより、WHO加盟各国はこれまで全く顧みられてこなかった疾患であるマイセトーマに苦しむ患者さんのために国家としてグローバルな立場で責任を果たす重要な第一歩を記しました。
「マイセトーマのWHO NTDsリストへの追加は、この疾患が最も必要とする政治的配慮をもたらし、資金提供者がマイセトーマに対する援助を申し出る上でその体制が整いました。グローバルなプログラムが起き上がることにより、疫学、リスク因子、治療の戦略、早期発見について、より明確に定義することができます」と、DNDi(Drugs for Neglected Diseases initiative顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ)のメディカル・ディレクターであるナタリー・ストラブウォルガフト(Nathalie Strub-Wourgaft)博士は述べています。
マイセトーマは、破壊的で進行の遅いバクテリアないしは真菌に感染する疾患、すなわち皮膚組織の慢性感染症で、治療を施さないと最終的に切断手術となります。子供や若い成人がとりわけ危険にさらされています。現存の抗真菌薬や手術による治療が可能なのは、この真菌性菌腫(ユーマイセトーマ:eumycetoma)を持つ患者さん全体の35%に過ぎません。この疾患は土壌ないしは動物の糞から感染します。とげなどが皮膚に刺さることにより体全体に真菌が侵入すると考えられています。
「マイセトーマの患者さんは、顧みられない患者さんの中にあって最も顧みられていません。貧しく、偏見にさらされ、ほとんどの患者さんが遠隔地や農村部に住んでいます。WHO NTDsリストへの追加は、患者さんの窮状を、世に知らしめるものです。マイセトーマが国際的に認知されるまでに、私たちは多大な努力を費やしてきました。治療が困難なこの疾患に私たちだけでは到底立ち向かえません。患者さんを本当に助ける唯一の方法は、グローバルなヘルス コミュニティーからの支援を得ることです」と、アーメド・ファハル(Ahmed Fahal) 医師―ハルツーム大学(スーダン)の外科の教授でありマイセトーマ・リサーチ・センターの(Mycetoma Research Centre-MRC)のディレクターは述べています。
今日にいたるまで真菌性菌腫の患者さんはほとんど注目されることがなかったので、患者さんのニーズにこたえる研究開発が事実上行われてきませんでした。
まもなくDNDiは、日本の製薬企業のエーザイ株式会社ならびにMRCと共に、真菌性菌腫に新たな治療法の可能性をもたらす抗真菌剤ホスラブコナゾール(fosrsavuconazole)の臨床試験を開始します。
DNDiとMRCは、マイセトーマのWHO NTDsリスト追加の実現に向けた多くのかたがたの尽力に感謝します。
「MRCにおける献身的なスタッフや私たちを訪ねてきてくれた幾千人もの患者さんに成り代わって、私たちと共にマイセトーマのWHO NTDsリスト追加の実現に向けて声を大にして活動いただいた皆さま方に心から感謝します。スーダンや同様の疾患で苦しむ他の国々の顧みられない患者さんを救済するために、これこそがまさに、政治・宗教・地域を越えて世界中の人々が力を合わせて実現させた一つの前例と言えます。私たちは『マイセトーマ撲滅運動』の始まりを目の当たりにしました。引き続きやるべき本来の仕事に注力したいと思います」と、アーメド・ファハル博士は述べています。
とげなどが皮膚に刺さるほんの些細なちくりとしたことから発症する、体を蝕む致命的な感染症マイセトーマについて、疾患、患者さんの生活、MRCのスタッフと彼らの活動を知るサイト:DNDi microsite (英語)をごらんください。
以上
【Drugs for Neglected Diseases initiative, DNDi :顧みられない病気の新薬開発イニシアティブについて】
1990年代後半、発展途上国の現場で医療活動に従事していた国境なき医師団のチームは、顧みられない病気に苦しむ患者を治療できないことに苛立ちを募らせていました。患者の治療に使用する医薬品の効果がなかったり、強い副作用があったり、あるいは製造中止になって使用ができないなどの問題があったためです。そこで、国境なき医師団は、1999年に受賞したノーベル平和賞の賞金の一部を、患者のニーズを重視して、顧みられない病気に対する治療薬の研究開発(R&D)に取り組むための革新的な組織の設立に充てることに決定し、スイス・ジュネーブに本部を置く非営利財団として2003年7月に正式に発足しました。DNDiはヨーロッパを中心とした多くの政府機関および私設財団から資金援助を受けて活動しています。2013年度からは日本政府も参画する公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)による資金援助も受けています。また、WHOの熱帯病医学特別研究訓練プログラム(WHO-TDR)が常任オブザーバーとして参加しています。www.dndi.org/
【DNDi Japanについて】
DNDi Japanは、2003年に日本の活動を開始し、2009年に特定非営利活動法人として東京都の認証を受けました。顧みられない熱帯病(NTDs)に苦しむ途上国の人々を援助するために日本の窓口として、DNDi本部のプロジェクトを支援し日本国内外の協力先と協働して、NTDsの治療薬開発、それに関連する能力開発、ならびに啓発活動など、発展途上国の人々の保健医療、福利厚生に貢献することを目的とした活動を行っています。www.dndijapan.org/
お問合せ:広報担当 松本眞理(mmatsumoto@dndi.org/ TEL03-4550-1195)
お問い合わせにつきましては発表元企業までお願いいたします。