株式会社日経リサーチ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:三宅誠一)は20万人規模の生活者の行動や価値観に関するデータを収録したデータベースを構築しています。このほど、今年6月に実施した銀行に関する更新調査のデータを盛り込み、新たに生活実態データベース「データ・ア・ラ・モード」としてサービスを展開することになりました。今回は最新のデータを基に、金融商品のリスクや利用意向に関して、都市と地方で意識の差があるか検証してみました。
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8月22日付の日本経済新聞の記事によると、個人の証券投資残高が10年ぶりに過去最高を更新したそうです。ただし、今回は「新たに買い増した」ことよりも、「手持ちの株式・投信の価格上昇」による面が大きいとのことで、依然として個人資産の「貯蓄から投資へ」の流れは鈍いと書いてありました。
では、個人資産の「貯蓄から投資へ」の流れが鈍いのはなぜなのか。今後、流れが加速する可能性はあるのか。生活者の金融商品に関する意識について、都市圏と地方を比較しながら、探ってみました。
(1) 地方居住者の方が投資に対してやや手堅い考え方
まず、金融商品のリスク受容性に違いがあるか見てみましょう。図1は3大都市圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県、愛知県・岐阜県・三重県、大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県)とそれ以外の地域(以下、「地方」と略)の居住者の、金融商品に対する考え方を分析した結果です。地方居住者の方が「収益性はどんなに低くても、元本割れリスクが絶対に無い商品」を利用したいという比率が2ポイント高くなっています。
図1 金融リスク商品の受容性 ~利用したい金融商品のタイプ~
世帯金融資産の残高が5,000万円以上の居住者に絞って比較してみると(図2)、世帯金融資産残高が多い人たちなので、「元本割れリスクが絶対に無い商品」の利用意向自体は図1の結果より低くなっていますが、やはり地方居住者の方が利用意向は高くなっています。金融資産残高が多くても、地方居住者の方が、投資に対してやや手堅い考え方であるようです。
図2 金融リスク商品の受容性 ~利用したい金融商品のタイプ~【世帯金融資産5000万円以上の方】
(2) 金融資産残高が多い層では、地方居住者の方が投信の利用意向が高い
次に個別の金融商品の利用意向を見てみましょう(図3)。リスクの受容性同様、各金融商品の利用意向は、地方居住者の方が低くなっています。ただ、投資信託に関しては差はわずかです。
図3 金融商品の利用意向
金融資産残高5000万円以上の居住者に絞って比較した結果が図4です。投資信託については、地方居住者の方が高くなっています。また、3大都市圏では国内株式の利用意向が投資信託の約2倍あるのに対し、地方では1.5倍程度にまで差が縮まっています。地方では投資信託の利用意向が高く、国内株式と比べても健闘している、という結果は、3大都市圏以外に本拠を置く、地方銀行や信用金庫などの地域金融機関にとって、「新たな買い増し」を促すひとつの光明となり得るのではないでしょうか。
図4 金融商品の利用意向【世帯金融資産5000万円以上の方】
(3) 「元本割れリスクが絶対に無い商品」を利用したい…投信利用意向者にも1割弱存在
最後に、投資信託の利用意向者に絞ってリスク受容性を見てみましょう(図5)。様々なリスクがある投資信託の利用意向者ですから、図1の結果に比べ、「元本割れリスクが絶対に無い商品」の利用意向は低くなっているものの、1割弱は存在しています。
ただ、この1割弱の方が、そもそも投資信託という金融商品のリスクを理解せずに、投資信託を利用したいと考えているのか、或いは、「元本割れリスクが絶対に無い商品」を利用したいが、現実には投資信託は許容しているのか、この調査結果だけでは判断できません。ですから、金融機関はすべての顧客に投資信託なら投資信託という金融商品の特徴やリスクをわかりやすく丁寧に説明し、最適な商品を提案する、といった「フィデューシャリー・デューティー」を徹底していくことが求められています。一方、生活者の側も金融機関を盲信せずに、自ら金融商品への理解を深めようとする姿勢が必要ではないでしょうか。
生活者が金融機関に何を求めているかについては、ぜひ当社の金融総合定点調査「金融RADAR」の2017年版特別調査の結果をご覧ください。
図5 金融リスク商品の受容性 ~利用したい金融商品のタイプ~【投資信託利用意向者】
■生活実態データベース「データ・ア・ラ・モード」のデータサンプルのダウンロード
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生活実態調査データベース(データ・ア・ラ・モード)
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