今年4月、新国立競技場の建設現場でマレーシアの木材会社シンヤン社が供給した熱帯材合板が使われていることがわかった。 シンヤン社はこれまでマレーシアのサラワクで、手つかずの熱帯林の組織ぐるみの破壊、違法伐採、人権侵害に関与してきたと指摘されている企業である。
これに応えて、世界中の47のNGOが、今年9月11日に国際オリンピック委員会(IOC)と東京大会当局に書簡を送り、熱帯材及びその他の高リスクな供給源からの木材の使用の終了、使用される熱帯材の出所と量の開示、木材サプライチェーンの完全な追跡可能性と第三者検証、より強い木材調達ルール、他のすべての森林リスク商品に対する確固としたな調達要件の採用を要求した。
10月19日、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、日本スポーツ振興センター、東京都オリンピック・パラリンピック準備局が東京でNGOとの会合を持った。大会当局は、熱帯材を主原料とする型枠用合板の一部に対する明白な例外規定など、組織委員会の木材調達コードの弱点がいくつもあるにもかかわらず、この欠陥のあるコードの改訂を拒否し、コードの要件に準拠しているとして熱帯材使用を擁護した。
当局はさらに、サプライヤーは自らが供給した木材の出所を把握していることは求められておらず、コードは一方で国産材の使用を優先させる方針を打ち出しているものの、コンクリート型枠用合板の場合には持続可能な森林に由来する国産材の使用を優先させる必要はない、と認識していることが明らかになった。東京大会当局は、熱帯材使用についてより透明性を確保することを約束し、関連施設建設現場で使用される型枠合板について量および正当なデューデリジェンス(確認)プロセスを開示することに合意した。
「東京大会の決定は、責任ある形で製造された国産型枠合板が利用可能であるにもかかわらず、それを優先していないことは非常に残念だ。このことで、責任あるビジネスを行おうとしている日本企業に間違ったメッセージを送っている。」と、熱帯林行動ネットワークの原田公は語った。
日本は、熱帯材合板の世界第1位の輸入国で、その原料の多くはマレーシアとインドネシアの熱帯林から来ている。 日本の木材調達は合法性や持続可能性を確保できないことで、広く批判されてきた。東京大会に向けて、日本は、その調達基準をヨーロッパや米国のレベルに引き上げるチャンスがあったが、日本の従来のビジネス慣行を妨げないように妥協することを選んだ。」とマーケット・フォー・チェンジ(豪)のペグ・パットは述べた。
最近の研究は、熱帯林の劣化に警鐘を鳴らしており、その多くは破壊的な伐採によって引き起こされている。 アジア、南米、アフリカの熱帯林はこれまで温室効果ガスの吸収に重要な役割を果たしてきたが、その劣化が続いていることから、熱帯林が炭素排出の吸収源から排出源に転じていることが報告されている。 熱帯の森林の減少と劣化は、地球温暖化ガス排出量の約5分の1を占めている。
東京大会当局は苦情処理メカニズム(通報受付窓口)の構築を進めつつあるが、10月19日の会合で、その最終決定前に公の協議プロセスを行う意図はないと明らかにした。シンヤン社のサラワクでの伐採行為は先住民族の生活を脅かしており、東京大会での苦情処理の仕組みの欠如は、地域社会が救済を求める道筋を奪ってしまった。
ブルーノマンサー基金(スイス)のアニーナ・アエベリは、「大会施設の建設が始まってから1年近く経つにもかかわらず、苦情申し立てのメカニズムがなく、関連ステークホルダーとの協議にも消極的ということは非常に心配だ。」と述べている。
NGOは、日本が真に持続可能なオリンピック・パラリンピックを開催するには、紙パルプ、パーム油、ゴムなどの他の全ての森林リスク商品へのしっかりとした調達要件が必要であると主張している。
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