障害者スポーツ推進のカギは「差別禁止法」「組織間の連携」    「諸外国における障害者のスポーツ環境に関する調査」(イギリス・カナダ・オーストラリア)

公益財団法人 笹川スポーツ財団 2017年11月13日

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「スポーツ・フォー・エブリワン」を推進する公益財団法人笹川スポーツ財団(所在地:東京都港区 理事長:渡邉一利 以下:SSF)では、「諸外国における障害者のスポーツ環境に関する調査」を実施しました。

今回の調査対象はイギリス、カナダ、オーストラリアの3ヵ国で、いずれの国もパラリンピック開催経験国であり、パラリンピックを契機として障害者スポーツの普及を一層推し進めてきました。2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を3年後に控えている日本にとって、海外の成功事例や日本の現在地を知るうえで重要な調査となります。2015年に実施した調査に続き、今回さらに2016年度に実施した調査内容を合わせてまとめました。以下に主な調査結果について報告いたします。

※なお、レポートの全文は、SSFウェブサイトでご覧いただけます。
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▲イギリス ナショナル・パラリンピック・デー(水泳)

【主な調査結果】

3ヵ国における障害者のスポーツへの参加を支える取り組みとして、主に2つの共通点がありました。

1.パラリンピック開催前に「差別禁止法」を制定
パラリンピック開催に先立ち、いずれの国も障害者差別禁止法など各種政策がすでにあり、障害者がスポーツをするうえでの土壌が整っていた。   
  →詳細:報告書p.10、37、62「図表1-4、1-23、1-38」

2.医療機関/当事者団体/障害者スポーツ団体の3者連携
障害者がスポーツを始めるためには、地域におけるスポーツの機会に関する情報を得ることが重要になる。医療機関(病院・リハビリテーションセンター)、当事者団体、そして障害者スポーツ団体が連携することによって、スポーツに関する情報提供・共有を行うことができていた。     
  →詳細:報告書p.26-27、49-52、74-76「図表1-32、33」


■研究担当者コメント

 本調査の結果から、3ヵ国共通して、障害者に対する差別を禁止する法律の制定が、障害者の地域におけるスポーツ施設やスポーツクラブの利用を促進させ、パラリンピックの開催及びその後の障害者のスポーツ環境整備の一助となったと言える。東京パラリンピック開催を控えた今、「障害者差別解消法(2016年4月施行)」をはじめ、我が国の障害者に関する法律の整備が地域に住む障害者のスポーツ参加に与える影響は図り知れない。そして、パラリンピック開催を契機に、諸外国でも競技スポーツと生涯スポーツに加えて、リハビリテーションスポーツの重要性がこれまで以上に問われることになるだろう。
 東京パラリンピック以降を見据え、「連携」の観点から、中途障害者のスポーツへの導入に重要な役割を担う医療機関、当事者団体、障害者スポーツ団体の関係をより強固なものにしていき、各組織が保有する人材・施設・情報などのリソースを共有することで、障害者のスポーツ参加促進に向けて最大限の効果を生み出すことができるだろう。
【笹川スポーツ財団 スポーツ政策研究所 研究員 上 梓(かみ あずさ)】


【調査概要】

調査名: 諸外国における障害者のスポーツ環境に関する調査
調査対象:イギリス、カナダ、オーストラリア
調査内容:主な調査項目
     ・地域における障害者スポーツの実施体制
     ・学校における障害児・者の体育・スポーツ活動への参加
     ・病院、リハビリテーションセンターとの連携した障害者スポーツの振興
     ・大学を拠点とした障害者スポーツの振興
調査期間:イギリス:現地調査 2015年7月23日~28日、スカイプ調査 2016年6月16日、23日
     カナダ:現地調査 2015年9月10日~15日、スカイプ調査 2016年5月18日
     オーストラリア:現地調査 2015年10月6日~12日、スカイプ調査 2016年5月19日
研究主体:公益財団法人 笹川スポーツ財団


【主な調査結果 概要】

1.パラリンピック開催前に「差別禁止法」を制定

<イギリス>

1995年 「障害者差別禁止法」制定(2004年改定)
2005年  ロンドンオリンピック・パラリンピック招致
2010年 「平等法」制定。差別禁止の範囲を拡大
2012年  ロンドンオリンピック・パラリンピック開催

1990年以降、障害者のスポーツ参加を促す様々な施策が導入され、地域での障害者の受け入れ態勢は1995年の「障害者差別禁止法(Disability Discrimination Act)」制定以降に加速した。DDAは障害者の地域におけるスポーツ施設やスポーツクラブの利用を促進させるなど、イギリスの障害者スポーツに多大な影響をもたらした。DDAから15年後の2010年、DDAを引き継ぐ形で「平等法(Equality Act)」が制定され、障害者に対する差別以外に、年齢・性別・宗教・人種・性的志向などを理由とした差別も禁止した。(詳細は、報告書p8~10)

<カナダ>

1985年 「カナダ人権法」制定。障害者差別を禁止
2002年 「スポーツ政策2002」制定(2012年改定)障害者のスポーツ参加について明記
2003年  バンクーバーオリンピック・パラリンピック招致
2006年 「障害者のためのスポーツ政策」制定
2010年  バンクーバーオリンピック・パラリンピック開催

文化や地理など多様な背景が影響し、性別、先住民族、移民・難民などマイノリティの平等政策を実施してきた歴史があり、1985年に制定した「カナダ人権法」では、障害者に対する差別を禁止している。2003年には2010年バンクーバーオリンピック・パラリンピックの招致に成功、2006年には「障害者のためのスポーツ政策」を制定し、障害者特有のスポーツ参加における障壁を取り除き、障害者スポーツの発展に向けた方策を提示した。2015年11月以降、障害当事者が「スポーツ・障害者大臣」に就任し、複数の省庁が連携して新たな法律「障害を持つカナダ人法(Canadians with Disabilities Act)」の制定などを推し進めている。(詳細は、報告書p34~37)

<オーストラリア>

1974年 「障害者支援法」制定
1992年 「障害者差別禁止法」制定
1993年  シドニーオリンピック・パラリンピック招致
2000年  シドニーオリンピック・パラリンピック開催

1974年に「障害者支援法」が制定され、障害者にレクリエーション、セラピー、リハビリテーションを提供する施設・組織に対する支援が拡充された。1992年制定の「障害者差別禁止法(Disability Discrimination Act)」は、運動・スポーツを含めた社会活動における障害者に対する差別を取り除き、地域での障害者の受入れに大きな影響をもたらした。また、2000年シドニーパラリンピックのレガシーとも言われている「全国障害者保険制度(NDIS)」(2013年制定)は、先天性の重度障害者のスポーツ・レクリエーション活動への参加を促進した。(詳細は、報告書p60~64)

2.医療機関/当事者団体/障害者スポーツ団体の3者連携

地域での自立した生活を促すため、入院期間が短くなっている現状は日本も含め世界共通である。今回調査した3ヵ国では、障害者の自立を支援するため、障害者スポーツ団体の事務所を病院・リハビリテーションセンターや当事者団体と同建物内、もしくは隣接させることで、人材・施設・情報を共有できる環境を整えている。

<カナダの例>
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▲リッチモンド・オリンピック・オーバル

ブリティッシュコロンビア州(BC州)の脊髄損傷者の多くが通院する「GFストロングリハビリテーションセンター(GFストロング)」では、BC州車椅子スポーツ協会と連携して週に1回体験会を開催し、患者と家族が一緒にレクリエーションプログラムに参加することを推奨している。
BC州車椅子スポーツ協会は、「GFストロング」の体育館等を利用し、個々の患者の興味や障害の程度に応じて、参加に適した競技種目の提案相談を実施している。
BC州車椅子スポーツ協会の事務所を、BC州脊髄損傷者協会(当事者団体)と同建物内に置くことで、利用者に関する情報共有がオンタイムで可能である。

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<オーストラリアの例>

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ニューサウスウェールズ州(NSW州)にあるリハビリテーションセンター「ロイヤルリハブ」では、地域住民が日常的に施設内のテニスコート、卓球台等を予約して利用している。
「ロイヤルリハブ」は、障害のない人も一緒に参加できるスポーツプログラムを提供し、障害のあるなしに関わらず、国内で人気の高いスポーツを積極的にプログラムに導入している。
NSW州車椅子スポーツ協会の事務所は「ロイヤルリハブ」に隣接し、入院外来患者とNSW州車椅子スポーツ協会の会員が「ロイヤルリハブ」の施設を無料で利用できる。


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