認知症患者の非認知症状の治療に焦点を当てた新たな研究

Alzheimer's Association International Conference

From: 共同通信PRワイヤー

2018-07-25 09:20

認知症患者の非認知症状の治療に焦点を当てた新たな研究

AsiaNet 74490 (1283)

【シカゴ2018年7月24日PR Newswire=共同通信JBN】シカゴのAlzheimer's Association International Conference (AAIC) 2018(2018年アルツハイマー病協会国際会議)で発表された新たな研究は、アルツハイマー型認知症を患っている人々が経験する非認知症状に対する薬物および非薬物治療の最近の成功と継続中の課題に焦点を当てている。

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この病気に関連する記憶や思考症状は最もよく知られているが、興奮、不安、無気力、うつ、徘徊(はいかい)、幻覚、不眠症、失禁、脱抑制といった認知症の行動・心理的症状(BPSD)は、しばしば介護の最大の課題であり、介護付き生活や介護施設への入所の主な要因となっている。こうした症状を治療せずに放置すると、衰弱を加速し、生活の質を低下させる可能性がある。

米国食品医薬品局(FDA)は、現時点ではアルツハイマー型認知症患者のこれらの症状に対する薬物治療を承認していない。現在使用されている全ての薬物治療は、他の症状向けに認可され、アルツハイマー病の「承認適応症外」となっている人向けに処方されているものである。

Alzheimer's Association(アルツハイマー病協会)のチーフサイエンスオフィサーであるマリア・カリーヨ博士は「アルツハイマー病やその他の認知症を患っている人々の、認識、治療が十分行われていないこうした症状は、しばしば共生が非常に困難で、治療も大変だ。アルツハイマー病の『口に出しにくい物語』の1つは、こうした症状が定期的に起こり、アルツハイマー病患者、家族、介護者の生活にとてつもない影響を与えていることだ」と語った。

カリーヨ博士は「アルツハイマー病やその他の認知症の記憶、思考症状の治療、予防を前に進めていく中で、行動やその他の非認知症状の治療戦略にも焦点を当てることが非常に重要だ」と付言した。

Alzheimer's Associationは、認知症関連行動の治療のための薬理学的治療の第一の代替手段として、心理社会的治療介入などの非薬理学的アプローチを推奨している。こうした療法にはバリデーション療法、回想、およびその他の個別の心理社会的治療介入が含まれる。

例えば
*その人が何かに腹を立てているように見えることを確認する。
*動揺の原因となっているように見えるものから、その人を離す。
*定期的な身体活動に参加し、興奮性、攻撃的行動を潜在的に減少させる。
*痛み、便秘、または別の身体的問題の存在を判断する。

認知症関連行動が非薬理学的アプローチに反応しなかった場合、特にその認知症患者や介護者らに身体的または感情的な害をもたらしている場合は、向精神薬(抗精神病薬、抗うつ薬、抗けいれん薬など)を検討する必要があるかもしれない。しかし、それらは細心の注意を払って使用しなければならず、適切な使用中止時期を決めるため、定期的に評価されなければならない。FDAは、認知症の高齢者の認知症関連行動治療のための抗精神病薬使用は、死亡率の増加と関連があることをつかんでいる。

合成カンナビノイド治療の無作為化・二重盲検臨床試験で、アルツハイマー病患者の興奮に改善がみられたことは、合成カンナビノイドであるナビロンがアルツハイマー病患者の興奮の治療に効果的である可能性を示唆している。Sunnybrook Health Sciences Centre(サニーブルック・ヘルス・サイエンス・センター)のシニアサイエンティストでトロント大学の精神医学・薬理学・毒物学教授であるクリスタ・L・ランクトット博士は「感情的な発言や行動、一般的な精神的苦痛、情動不安、ペーシングなどの興奮は、アルツハイマー病の進行にかかわる最も一般的な行動変化の1つであり、介護者のストレスの大きな原因となる可能性がある」と指摘した。

ランクトット博士とその同僚は、臨床的に著しい興奮症状のある、中等度から重度のアルツハイマー型認知症の成人に対するナビロンの潜在的利益を調査した。14週間の試験期間中、39人の参加者(男性77%、平均年齢87)に6週間、カプセルタイプのナビロン(平均治療用量=1.6 +/- 0.5mg)を投与、続いて6週間、偽薬を投与した。各治療期間は1週間、間をあけて設定した。研究者らは、興奮を測定することに加え、全体的な行動症状、記憶、身体的変化および安全性を評価した。判明したのは以下の事実である。

*Cohen-Mansfield Agitation Inventoryによる測定では、偽薬と比較してナビロンを服用している患者では、興奮が有意に改善した(p = 0.003)。
*ナビロンはまた、Neuropsychiatric Inventoryによる測定で、偽薬と比較して全体的な行動症状を有意に改善した(p = 0.004)。

研究者は今回の研究で認知および栄養における小さなメリットも観察した。今回の研究で多くの人がプラシーボ(16%)に比べナビロン(45%)で鎮痛状態を経験した。

ランクトット博士は「アルツハイマー病のアジテーションのために現在処方されている治療が誰にも効果がなかったし、例え効果があってもその効果は小さく、死亡のリスクを高めるなど、有害な副作用のリスクを高める。その結果、より安全な薬物治療の選択肢が急務である。これらの研究成果は、ナビロンがアジテーションの効果的治療である可能性を示唆している。しかしながら、鎮痛状態のリスクを注意深く監視する必要がある。治験の規模拡大をすれば、ナビロンがアルツハイマー病のアジテーション治療にいかに効果的かつ安全であるというわれわれの研究結果を追認することが可能になる」と語った。

注:マリフアナはアルツハイマー病やその他の認知症の治療ないしは管理のために食品医薬品局(FDA)に認可されていない。医療目的でのマリフアナ使用の普及に伴い、アルツハイマー病ないしはその他の認知症患者にマリフアナ使用の多くが知られていないことに注目することは重要である。

マリフアナは基本的にアルツハイマー病では試験されていない薬品である。現時点でアルツハイマー病認知症の治療あるいは関連の問題にマリフアナの使用を裏付ける堅固かつ一貫した治験データはない。Alzheimer's Associationは、この分野における研究がさらに必要であると確信している。

▽照明がアルツハイマー病患者の睡眠、気分、行動を向上させる可能性がある
アルツハイマー病およびその他の認知症患者の多くは睡眠パターン、不眠症、日中の眠気の変化を経験する。ニューヨーク州トロイにあるレンセター工科大学Lighting Research Center所長であるマリアンナ・G・フィゲイロ博士とその同僚は、調整された照明システムが高齢者福祉施設の人の睡眠、気分、行動を改善するために役立つかどうかを試験した。

フィゲイロ博士は「明暗のパターンは、人間が現在時刻を知る手掛かりであり、介護施設で暮らす人が経験する一定のほのかな明かりは、ホームの住居者に頻繁に見つかる睡眠パターン障害の根本原因である可能性がある」と語った。

この仮説を試験するため、介護施設居住者が起きている時間の大半を過ごし、起床時間から午後6時までとどまっていた場所で4週間以上にわたり照明インターベンションが実施された。これまでに居住している43人(女性31人、男性12人)が短期研究に参加し、37人(女性25人、男性12人)が長期研究を完了した。参加者はニューヨーク・キャピタルディストリクト、バーモント州ベニングトン、インディアナ州サウスベンドにある10カ所の介護施設から募集された。

研究参加者は4週間(短期研究)と6カ月(長期研究、4週間の洗い出しの空白を設けた後の連続4週間)にわたり高度と低度のサーカディアン・スティミュラスを与えた照明時間の変更を経験した。Lighting Research Centerが開発したサーカディアン・スティミュラス(CS)測定基準は、1時間の照射でメラトニン・ホルモン(サーカディアン・システムの定着したマーカー)の体内分泌を極端に抑制する能力によって測定し、サーカディアン・システムを刺激する光源の有効性を明らかにする。

両研究機関は、参加者が大半の時間を過ごす場所によって、特別に設計されたLED照明テーブルないしは個室照明を使用してインターベンションを提供した。個人の露出計が使用され、参加者の目が受ける露光量を測定した。睡眠障害、気分、アジテーションも共通質問書を使って評価された。

照明インターベンションによって、研究者は高いサーカディアン・スティミュラスを経験した研究参加者が睡眠障害、気分の落ち込み、アジテーションの大幅な減退を示した。短期研究で観察されたプラス効果は長期研究でも改善し続けた。

▽抗精神病薬を超えて:睡眠障害のZ薬の有効性と害を探求
認知症患者の多くは睡眠障害がある。これは生活の質(QoL)に影響を与え、認知症患者の介護者のQoLにも影響を与える。ゾルピデム、ゾビクロン、ザレプロンなどの非ベンゾジアゼピン系「Z薬」は、高齢者の不眠症治療のために一般的に処方されるが、転倒、骨折などの問題を引き起こし、混乱を高める可能性があると考えられている。認知症を抱える人は極めて傷つきやすく、Z薬が特に害があるかどうかは不明である。

英国ノーウィッチにあるイースト・アングリア大学Norwich Medical Schoolのクリス・フォックス教授(MD)と同僚は、UK Clinical Practice Research Datalinkおよび3件の認知症患者臨床研究の既存データを分析した。教授らはこれらの薬品の恩恵と害を評価するために、Z薬を新たに処方された認知症患者2952人のデータと処方されなかった1651人のデータを最大2年間にわたり比較した。

教授らはZ薬の使用があらゆる種類の骨折リスクを40%高めることに関連し、高容量投与ではリスクを高めていることを発見した。またZ薬の使用は特に股関節骨折のリスクを高めることに関連していた。研究は転落、感染、発作などその他の影響へのリスクを高めることは突き止めなかった。

フォックス教授は「認知症患者の骨折は運動機能の喪失、依存度の高まり、認知症の悪化を含め、計り知れない影響がある。われわれは認知症患者の睡眠障害やその他の非認知症状のために現在処方されている薬品に取って代わるより良い代替を必要としている。可能な限り、適切な非薬物の代替が考慮されるべきであり、Z薬が処方されるならば、患者は転落の発生を軽減ないしは防止するケアを受けるべきである」と語った。

▽Alzheimer’s Association International Conference(R)(AAIC(R))(アルツハイマー病協会国際会議)について
Alzheimer’s Association International Conference(AAIC)はアルツハイマー病とその他の認知症に専念する世界中の研究者の世界最大の集まりである。Alzheimer's Associationの研究プログラムの一環として、AAICは認知症に関する新しい知識を生み出し、活気ある平等な研究コミュニティーを育成することを促進する役割を果たしている。

AAIC 2018ホームページ:alz.org/aaic
AAIC 2018ニュースルーム:alz.org/aaic/press

▽Alzheimer's Association(R)(アルツハイマー病協会)について
Alzheimer’s Associationは、アルツハイマー病のケア、支援、研究において世界をリードするボランティア健康組織である。協会の使命は研究を前進させてアルツハイマー病を撲滅し、全ての患者へのケアと支援を提供、強化し、脳の健康の推進を通じて認知症のリスクを軽減することである。協会のビジョンはアルツハイマー病のない世界である。詳しい情報はalz.orもしくは電話800-272-3900まで。

*Krista Lanctot, PhD, et al. Nabilone Improves Agitation in Patients with Moderate-to-Severe Alzheimer's Disease: Preliminary Results of a Placebo-Controlled, Double-Blind, Cross-over Trial. Funders: Alzheimer's Drug Discovery Foundation; Alzheimer Society of Canada Research Program (Grant 15-17).

*Mariana Figueiro, PhD, et al. Tailored Lighting Intervention to Improve Sleep, Mood and Behavior in Alzheimer's Disease Patients. Funder: U.S. National Institute on Aging.

*Chris Fox, MD, et al. Beyond Anti-Psychotics: Exploring Efficacy and Harms of Z-Drugs for Sleep Disturbance on the Progression of Key Dementia Outcomes. Funder: UK National Institute of Health Research.

ソース:Alzheimer's Association International Conference

▽問い合わせ先
Alzheimer's Association AAIC Press Office
+1-312-949-8710
aaicmedia@alz.org

Niles Frantz
Alzheimer's Association
+1-312-335-5777
niles.frantz@alz.org


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