原子炉で発生した反電子ニュートリノを地表において観測することに成功 -- 北里大学

北里大学

From: Digital PR Platform

2019-12-10 14:05




北里大学 理学部 物理学科 量子物理学講座の研究グループ(川崎健夫教授・今野智之助教)は、開発した小型・可搬型測定器を用いて、稼働中の原子炉で発生した反電子ニュートリノ(注1)を地表において観測することに成功しました。
この研究成果は、2019年12月5~7日に中国・広州で行われた「第15回・反電子ニュートリノの応用科学に関する国際会議」において、今野助教によって発表されました。




【研究成果のポイント】
◆当該グループでは、原子炉で発生する素粒子「反電子ニュートリノ」を地表において観測できる、小型・可搬型測定器を開発してきました〔図1〕。
◆関西電力大飯発電所において、稼働中の原子炉付近(約45m)に測定器を設置して測定を行い、原子炉内で発生した反電子ニュートリノのエネルギースペクトルを観測することに成功しました〔図2〕。
◆この測定技術により、稼働中の原子炉内部の情報を外部から得ることができます。今後は、さらに測定器の性能向上を進め、短時間かつ少ない背景事象での測定を目指します。

【研究内容と成果】
 稼働中の原子炉内では、大量の反電子ニュートリノが発生しています。これは「原子炉ニュートリノ」と呼ばれ、ニュートリノ振動の研究などの素粒子物理学の研究に用いられてきました。過去の原子炉ニュートリノの測定は、大型(10-1000トン)の測定器を、環境放射線や宇宙線の影響の少ない、大深度地下施設に設置することにより行われてきました。

 当該研究グループでは、プラスチックシンチレータを用いた小型(1トン程度)の測定器を開発し、地表において原子炉ニュートリノを観測するための研究に取り組んできました。2019年5月から8月にかけて、開発した原子炉ニュートリノ検出器(PANDA)を、関西電力大飯発電所4号機付近(炉心から約45メートル)に設置して測定を行いました〔図3〕。
 得られた測定データを用いて、原子炉の稼働期間と停止期間の信号数の差から、原子炉ニュートリノのエネルギースペクトルを有意に測定することに成功しました(統計有意度4.5以上)。原子炉ニュートリノの地表での小型測定器による観測は世界でも例が少なく、国内では初めての結果となります。

 この結果は、2019年12月5-7日に中山大学(中国・広州)で行われた第15回・反電子ニュートリノ応用科学に関する国際会議(Applied Antineutrino Physics 2019) において、今野助教が発表しました。日本物理学会(2020年3月・名古屋大学)等においても発表予定です。近日中に学術雑誌に論文を投稿する予定です。

 今後は、検出効率の向上や背景事象の除去性能を高めることにより、さらに小型・短期間で測定可能な検出器の開発を目指します。地表での原子炉ニュートリノの測定技術は、原子炉の不申告稼働に対する査察や、新型原子炉の開発に用いられる技術につながります。また、新しい素粒子物理学実験のアイデアを実現するための、基礎技術になり得ると考えています。

【用語解説】
注1:反電子ニュートリノ:素粒子の1つである「ニュートリノ」の1つの種類である。自然界に大量に存在しているが、物質との反応確率の低さのため、観測は極めて困難である。原子炉の内部で起こる核分裂反応では、多数の反電子ニュートリノが発生しており、「原子炉ニュートリノ」と呼ばれることがある。

【発表題目】
 Measurement of reactor neutrinos using plastic scintillator array on the ground
 〔発表者〕 Tomoyuki Konno (Kitasato University)
 〔URL〕  (リンク »)

 本研究は、北里大学 理学部 物理学科 量子物理学講座の研究グループ(川崎健夫教授・今野智之助教および大学院生)が中心となって進めてきたもので、関西電力大飯発電所および福井大学・東北大学・都立産業技術高等専門学校・東京大学の研究者の協力を得ています。

 本研究成果は、以下の研究助成を受けて得られました。

・日本学術振興会 科学研究費補助金2019-2021年「背景事象の飛躍的削減による地表でのMeVニュートリノ測定」(基盤研究C:19K03891) 川崎健夫(代表者)

【問い合わせ先】
≪研究に関すること≫
 北里大学理学部物理学科
 教授 川崎 健夫 (カワサキ タケオ)
 TEL: 042-778-8861
 E-mail: kawasaki@kitasato-u.ac.jp

≪報道に関すること≫
 学校法人北里研究所
 総務部広報課
 TEL: 03-5791-6422
 E-mail: kohoh@kitasato-u.ac.jp

【リリース発信元】 大学プレスセンター (リンク »)
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