■背景
従来のコンピュータの性能向上に陰りが見える中、量子コンピュータへの期待が高まっています。昨年、米国グーグル社が、開発中の量子コンピュータを用いて量子超越性を示したと発表するなど注目が集まっています。国内でも、企業や研究機関、大学等により研究開発が進められているところです。
このような中、ISO/IEC JTC 1ではAdvisory Group 4 on Quantum Computingにて調査研究を進めてきましたが、2020年6月に開催されたISO/IEC JTC 1総会において、量子コンピューティングに関する新しい作業グループ(JTC 1/WG 14)の設置が決議されました。
WG 14のリーダー(Convenor)は中国国家標準化管理委員会(SAC)のHong Yang氏で、前身のAG 4でもリーダーを務めてきました。最初に開発する規格は、量子コンピューティングに関連する用語規格になりますが、今後、アーキテクチャ、アルゴリズム、ユースケースなど、活動の範囲を広げる計画が検討されています。
情報規格調査会では、ISO/IEC JTC 1/WG 14に日本として対応していく活動を推進するために「WG 14小委員会」を新たに設置することとしました。
■活動概要
量子コンピュータのビジネス化が進められていますが、まだまだ研究段階の事柄が多く、標準化によって様々な事項を固めていくことは時期尚早な面もあります。研究開発や実用化による社会発展への影響を把握しつつ、適切な標準化を進めることが肝要と考えられます。
また、海外では取り組み例が少なくても、日本で取り組まれている技術や方式もあります。国際標準として、公平に規格へ反映されることも重要です。
国内外での技術開発の状況を把握しつつ、情報技術の観点、および日本の産業競争力を強化する観点から国際標準として求められる内容を検討し、意見を国際の場にインプットしていきます。具体的には、およそ2か月に1回程度の委員会を開催し、以下の活動を行います。
新しい作業項目、規格案等のレビューと日本としての意見発信
ISO/IEC JTC 1/WG 14へのコメント提出と会議参加
当該分野での新しい規格項目の洗い出しとISO/IEC JTC 1への提案活動
日本電信電話株式会社 物性科学基礎研究所より本庄利守氏を本小委員会の主査に迎え、委員会活動をリードして頂きます。
■用語の説明
◆ISO/IEC JTC 1
国際標準化機構 (ISO) と国際電気標準会議 (IEC) が合同で設立した技術委員会であり、情報技術 (IT) 分野の国際標準化を行うための組織として1987年に設立されました。
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◆情報処理学会 情報規格調査会(ITSCJ:Information Technology Standards Commission of Japan)
日本産業標準調査会(JISC)から国内審議団体を引き受けて、ISO/IEC JTC 1における情報技術に関する国際規格の審議を行うとともに、情報技術に関する標準化に寄与することを目的として情報処理学会に設置されている組織です。
◆WG(作業グループ)
国際規格を策定する作業グループであり、今回の量子コンピューティングはISO/IEC JTC 1の直下に設置されました。JTC 1直下に設置された作業グループとしては他に、WG 11スマートシティ、WG 12 3Dプリンティングとスキャニング、WG 13トラストワージネスがあります。
<プレスリリースについての問い合わせ先>
一般社団法人 情報処理学会 情報規格調査会
住 所: 〒105-0011 東京都港区芝公園 3-5-8 機械振興会館 308-3
メール: standards@itscj.ipsj.or.jp
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お問い合わせにつきましては発表元企業までお願いいたします。