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ヒトラクトフェリンが脊髄損傷の神経再生阻害因子を中和 ~脊髄損傷の治療薬開発に新たな光~ -- 東京工科大学

東京工科大学

From: Digital PR Platform

2020-11-10 20:05




東京工科大学(東京都八王子市、学長:大山恭弘)大学院バイオニクス専攻の中村真男助教(注1)と佐藤淳教授らの研究グループは、ヒトラクトフェリン(hLF)が、脊髄損傷での神経再生阻害の主因となるコンドロイチン硫酸E(CS-E)に対して強力な中和活性を示すことを発見しました。難治性疾患である脊髄損傷に対する新たな治療薬の開発につながる成果として期待されます。




LF製剤の開発に特化したベンチャー企業である(株)S&Kバイオファーマ(神奈川県川崎市、代表 加賀谷伸治)(注2)では、CS-Eを分子標的とする脊髄損傷治療薬の開発に着手しています。
(特許出願済:グリコサミノグリカン阻害剤および促進剤 PCT/JP2019/025118)
本研究成果は、10月29日に国際科学雑誌「Biochemical and Biophysical Research Communications」オンライン版に掲載(注3)されました。


【背景】
グリコサミノグリカン(GAG)は、細胞表面に存在するヘパリン(HP)やヘパラン硫酸(HS)、コンドロイチン硫酸(CS)などの糖鎖であり、成長因子や病原性タンパク質等と相互作用して機能を発現します。近年、HSと同じGAGに属するCS-Eが、脊髄損傷時の強力な再生阻害因子であることが報告されています(図1)。脊髄損傷動物モデルにおいて、CS-Eの再生阻害作用を抑制すると、損傷による神経障害が著しく改善されることから、CS-Eの再生阻害活性を"中和"できる分子は、脊髄損傷治療薬として大きな可能性を有していると言えます。
本研究で注目するラクトフェリンは、母乳、涙、唾液などに豊富に含まれ、抗炎症、抗菌、抗腫瘍および神経保護効果をもつタンパク質です。ヒトラクトフェリン(hLF)は、HSと結合してヒト乳がん細胞増殖の調節、パーキンソン病モデルにおける損傷したドーパミンニューロンに対する神経保護および重症急性呼吸器症候群コロナウイルスの侵入を阻止することが報告されています。これらを踏まえ、本研究ではhLFとCSとの結合特性とin vitro(注4)脊髄損傷モデルを用いたCS-Eの神経再生阻害作用に対するhLFの効果(軸索伸長の阻害抑制)を検証しました。

【成果】
GAGの一種であるCS-EがhLFと直接的に結合することを発見しました(図2)。hLFは、培養ニワトリ脊髄後根神経節(DRG)細胞において、CS-Eによる神経軸索の伸長阻害を完全に抑制することを見出しました(図3)。hLF自体は、軸索の伸長促進作用を示さないことから、この抑制効果は、CS-Eによる神経再生阻害活性への中和作用であると考えられます。

【社会的・学術的なポイント】
WHO(世界保健機関)によると、世界で年間約25〜50万人の脊髄損傷患者が報告されています(注5)。高齢化社会が進む日本においても増加が懸念される難治性疾患のひとつですが、現在有効な治療薬は存在しません。本研究では、hLFが、CS-Eによる軸索伸長阻害に対して強い中和活性を示すことを発見しました。CS-Eは、がんの浸潤・転移にも深く関わることが報告されており、今後、本研究の成果を創薬シーズとする脊髄損傷治療薬や抗腫瘍薬の開発が期待されます。

(注1) 研究当時、現公益財団法人佐々木研究所 研究員
(注2) S&Kバイオファーマ 公式ウェブサイトURL
(リンク »)
(注3) 論文名「Masao Nakamura, Takumi Matsuzaki, Ami Iimori, and Atsushi Sato,Harnessing the chondroitin sulfate-binding characteristics of human lactoferrin to neutralize neurite outgrowth inhibition.,Biochemical and Biophysical Research Communications」
掲載URL
(リンク »)
(注4) in vitro(イン ビトロ)は「試験管内で」という意味で、生物学の実験において体内と同様の環境を人工的に作り、薬物の反応を検出する試験のこと
(注5) 参照元:WHOホームページ
(リンク »)

■東京工科大学応用生物学部 佐藤淳(生物創薬)研究室
遺伝子組換え、生化学、細胞培養技術を基盤とした生物創薬に関する研究を行っている。
工学的な発想で、創薬という「モノ作り」を推進している。
[主な研究テーマ]
1. 自然免疫で機能する多機能性タンパク質であるラクトフェリンの機能解析(特に抗腫瘍作用)
2. 体内安定性を高めたラクトフェリンのバイオ医薬品としての開発
3. 疾患に関連する糖鎖を標的とするバイオ医薬品の開発
4. ファージディスプレイ法を用いた新規機能ペプチドの創製
[研究室ウェブサイトURL]
(リンク »)

【本件のお問い合わせ先】
東京工科大学 応用生物学部 佐藤淳教授
Tel 042-637-2197(研究室直通)
E-mail atsato(at)stf.teu.ac.jp
※(at)は@に置き換えてください

【リリース発信元】 大学プレスセンター (リンク »)
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