Cohen氏の主張は正しい。根拠となるデータもなしに、クラウドコンピューティングを通してよりグリーンな世界を創造できるなどと、どうして主張できようか。実際のところ、クラウドがコンピューティング消費の増大を促していることを示す重要な証拠も存在する。コンピューティング消費の増大は、クラウドによる使用効率の向上で節約されたエネルギーの多く、あるいはすべてを帳消しにしてしまうかもしれない。
Canonicalのソフトウェアサービス担当マネージャーであるSimon Wardley氏は以前、自身のブログでこの問題を取り上げている。
一般的で明確に定義されたIT活動が、製品から、オンラインサービスとして提供される標準コンポーネントへとシフトすると、革新が劇的に拡大するはずだ。
標準化は常にこうした可能性を生み出す。
クラウドコンピューティングの存在理由は、標準コンポーネントをサービスとして提供することだ(純粋なボリュームオペレーションである)。当然ながら、問題となるのは、これらの標準コンポーネントをより多く消費するようになることだ。それは、消費があまりにも簡単(言い換えると、1つの問題を解決する中でまた別の問題が浮上するという状態が続くことが少なくなる)であり、これらのコンポーネントの上に刺激的な新サービスを構築する(巨人の肩の上に立つ)のが容易になるためだ。
より効率的な仮想リソースを提供できるようになるかもしれないが、最終的にはるかに多くのリソースを消費してしまうことになるだろう。
したがって、今日のクラウドコンピューティングの「グリーンさ」は、ある意味で「シュレーディンガーの猫」のようなものだ。つまり、誰かが実際に観察(あるいは計測)しない限り、クラウドコンピューティングが本当に環境に優しいのかどうか知る由はない。
CloudAveのコメンテーターKrishnan Subramanian氏もこの矛盾を認識しているが、同氏が紹介するフィンランド発の記事は、クラウドコンピューティングを通して環境を助けられる別の方法があるとの期待を示している。ヘルシンキ市はデータセンターの廃熱を利用して、住宅を暖めているようだ。これは、熱交換プロセスの両側で価値のある完璧な方法だ。
筆者が真実だと考えていることが1つある。それは、大半のクラウドデータセンターでハードウェアコンポーネントの効率性が向上し、これらのコンポーネントの使用率が増加すると、ほぼ間違いなく、消費されるエネルギー単位あたりのわれわれの作業量が、これまでより増加するということだ。しかし、クラウドコンピューティングが何らかの形で地球に及ぼす全体的な影響についての証拠が出てくるまでには、もう少し時間がかかると思う。
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この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。